Shin:イメージの臨場感を高める方法を一通り教えたけど、どうだった?
ゆう:イメージはわかったんだけど、それをどうやって演技にしていくの?
Shin:僕たちの会話は、アドリブで進行するよね。でも、演技の場合はセリフが決まっている。だから、セリフをアドリブのようにしゃべる必要があるよね。
ゆう:そうだね、最初から言うことが決まっているから。
Shin:そうすると、その言葉が生まれる前の感情を作る必要がある。たとえば、「幸せだなぁ」と脚本に書いてあったら、幸せな感情と感覚が先にあって、それが自然に言葉になるようにセリフを言わないといけない。
ゆう:先に感情を作るのかぁ。
Shin:その感情や感覚を作るのに、イメージの臨場感が必要なんだよね。逆に言えば、臨場感さえ高ければ、セリフのことはほとんど考えなくてもいいんだよ。こう言おうとか、ああ言おうとか考えると、素人の演技になってしまう。
ゆう:歌の場合は?
Shin:歌も同じだよ。歌は、一人芝居だからね。
ゆう:でも、セリフの掛け合いはないよね。
Shin:演技の場合は相手がいるから、その難しさはあるよね。あらかじめ相手のセリフがわかっているのに、まるで初めて聞いたかのように反応しないといけない。
ゆう:わかっているのに、わかっていないようにしないといけないのかぁ。
Shin:でも、歌でも同じ歌を何度も歌っていると、変に慣れてしまうんだよね。そういう慣れた歌って切迫感がないので、僕は好きじゃないけどね。
ゆう:慣れた演歌歌手みたいな?
Shin:美空ひばりさんみたいな一流の歌手は、何回歌っても、涙を流しながら歌うんだよね。その時、初めてその歌を歌うような感じなんだよ。そういう意識のコントロールが大切だと思う。
続く