繰り返す風邪は、本当に風邪なのか?

数年前から、ストレスのせいなのか、頻繁に風邪をひくようになりました。

元々、生まれつき体が弱くて、子供の頃からよく風邪をひいていました。

子供の頃は、風邪をひくと、完全に治るまで一ヶ月くらいかかりました。

今思えば、病院で処方された風邪薬を毎日飲むことで、風邪の症状を抑えていたからでしょう。

症状を抑えると、本来の免疫力の働きが弱くなりますから、風邪の治りが遅くなるのです。


風邪をひくというのは、必ずしも悪いことではありません。

天才的な整体師だった野口晴哉さんは、『風邪の効用』という著書で、風邪をひいたら体の弾力が戻ると言っています。

 


風邪というのは、体の歪みを治すために生じるので、整体をするのと同じ効果があるということです。

そのため、風邪は避けるのではなくて、上手に経過することが大切だそうです。

反対に、風邪をひくこともなく元気はつらつな人が、ある日、急に倒れたり、ガンになったりすることが多いそうです。

いわば風邪というのは、借金の小額返済を続けているようなものなのでしょう。

風邪で少額ずつ返済をしていなければ、ある時、借金を一気に返すような大病になるのかもしれません。


私は風邪をひきやすい体質なので、歌手活動をしていた頃は、絶食をしていました。

絶対に風邪をひくわけにはいきませんから、数日前から食事を食べないようにして、風邪を予防していました。

不思議なことに、絶食をすると風邪をひかなくなるのです。

もちろんこれは、私が若い頃から絶食を繰り返して慣れていたからだと思いますので、慣れていない人がいきなり絶食をすると逆に免疫力が下がるかもしれません。

慣れていれば、消化に使うエネルギーを免疫系に使うことができるため、風邪をひかなくなるのです。


近年の私は、数日で治る風邪を繰り返していました。

市販の風邪薬を飲まないから数日で治るのかもしれませんが(漢方薬は飲むことがあります)、寝込む日もあって大変でした。

ありとあらゆる風邪予防法を試してみましたが、劇的な効果はありませんでした。

ところが、ある重要な情報を知ったのです。

風邪の原因は、上咽頭の炎症?

それは、昭和40年代に、東京医科歯科大学の名誉教授だった堀口申作医師が開発したある治療法についてです。

堀口医師は、風邪の原因を探っていく中で、喉の奥のある場所の炎症が、風邪の原因になっていることを突き止めます。

その場所は、喉の奥から上に向かって、鼻の奥とつながっているところにある、アデノイドという免疫に関わるポイントです。

その場所を「上咽頭(じょういんとう)」と言います。

 


風邪をひくときには、必ず上咽頭が炎症を起こして、そこから炎症が下に広がって、風邪が悪化するということを発見したのです。

この上咽頭という場所は、扁桃腺と同じ機能を持っていて、リンパ球がたくさんあります。

鼻から入ってきたウイルスや細菌を、この上咽頭のアデノイドで捕まえて殺菌をするという機能があります。

ただ、免疫力が低下すると、この上咽頭での炎症が強くなって、それが広がって風邪になるのです。


堀口医師は、この上咽頭の炎症を治療することができれば、風邪が治るのではないかと思い治療を始めます。

様々な試行錯誤をした結果、塩化亜鉛という、粘膜を収れんさせる薬品をこの部位に塗ることで、炎症が治療できることを発見します。

そして、この治療法をBスポット療法(Bとは鼻咽腔のこと)と名付け、全国に普及させたのです。


この治療法は、当時、画期的な治療法として全国に広まり、保険診療でできるようになりました。

耳鼻科では塩化亜鉛を塗るのですが、内科ではルゴール(ヨードチンキ)を塗ることが多かったようです。

私が子供の頃も、内科で、風邪の患者の喉の奥にルゴールを塗る治療をしていたのを覚えています。

 

消えていったBスポット療法が復活

しかし、このBスポット療法ですが、塩化亜鉛を上咽頭に塗ると、炎症を起こしていた場合、かなり痛いそうです。

それで患者が嫌がるということと、長期の通院も要するということで、患者側が嫌がりました。

また、Bスポット療法によって、頭痛や首コリや肩コリといった症状が劇的に改善する例が多かったのですが、そのような不定愁訴だけではなく、アレルギーから腎臓病まで様々な病気が改善してしまったせいで、逆に、胡散臭い治療ではないかと思われるようになりました。

その結果、Bスポット療法は、時代とともに消えていったのです。

ところが、この消えたBスポット療法が、実は非常に優れた治療法であることが近年の医学的な知見によってわかるようになりました。

そして、腎臓病の専門医である堀田修医師が、Bスポット療法による腎臓病の治療の始めたのです。

 


上咽頭の炎症(上咽頭炎)は、風邪、頭痛、首コリ、肩コリ、鼻炎、耳鳴りといった上咽頭近くの病気だけではなく、慢性疲労症候群、腎臓病、湿疹などの全身の病気にも関係しているそうです。

これらの病気が、上咽頭炎の治療によって改善することが多いそうです。

さらには、子宮頸がんワクチンの副作用によって起こった症状も、上咽頭炎の治療によって改善したそうです。

つまり、人体の免疫系のアンバランスが、上咽頭炎の治療によって改善するということなのでしょう。

ありとあらゆる病気と関係している上咽頭炎

この上咽頭炎のことを知って、私は自分の風邪が、上咽頭炎なのではないかと思うようになりました。

というのも、風邪をひきそうになると、必ず後頭部が痛くなり、首コリや頭痛や倦怠感が生じていたからです。

上咽頭炎を慢性的に引き起こしていたから、風邪症状が繰り返し生じていたのではないかと思ったのです。

そこで、この上咽頭炎の治療法であるBスポット療法について調べることにしました。

まず、Bスポット療法をしている病院というのは、耳鼻科だということでした。

そして、昔は多くの耳鼻科がおこなっていた治療ですが、現在では、ごく限られた耳鼻科しかBスポット療法はしていないということでした。

また、耳鼻科の医師によってやり方が違っていて、統一された方法論がきちんと確立されていないようでした。

重要なのは、塩化亜鉛という薬品を使うということです。

ルゴールの場合は、一時的な殺菌の作用はありますが、粘膜の炎症そのものを治療するような効果はないそうです。

また、上咽頭に塩化亜鉛を塗るときに、その場所を擦過(こする)する必要があるということです。

これは、炎症部分の血液やリンパ液などの循環を促すということで、東洋医学的に言えば、瘀血(汚れた血液)を排出させるということでしょう。

ところが、従来のBスポット療法では、塩化亜鉛を塗るだけで、上咽頭をこする処理をしない場合があり、その場合、治療効果が下がるということです。

そのため、こするということを重視した方法として、Bスポット療法という名前ではなく、EAT(上咽頭擦過治療)という新しい名前を使っているようです。


このようなことから、私は、この治療をきちんとしてくれる耳鼻科医を探したほうがいいと思いました。

上咽頭炎の治療の難しさ

この治療法について調べていると、劇的に効果があったという人が多いのですが、あまり効果がなかったという人もいました。

そういう人たちに共通していたのは、通院の頻度と、治療の質でした。

通院の頻度は、週に一回の人が多かったのですが、その場合、良くなってもまたすぐに悪くなるということを繰り返して、なかなか改善しないということでした。

ところが、週に二回や三回といった頻度だと、改善した人の割合が多かったです。

つまり、出来るだけ頻繁にこの治療をすることができれば、それだけ改善が早いということのようです。

それから、治療の質についてですが、医師によって、炎症部分に塩化亜鉛を満遍なく塗ることができなかったり、しっかり擦過しなかったりして、炎症が残ってしまうということでした。

それで、残った炎症部分から、また炎症が広がってしまうことになり、なかなか改善しないようでした。

上咽頭は見えない場所にあるので、医師も、塗り残してしまうことがあるようです。

その解決策として、ファイバースコープで映像を見ながら、炎症部分に塩化亜鉛を塗るという治療法をしている医師がいて、この場合は、塗り残しがなくなるそうです。

このようなことから、上咽頭炎の治療に通っても、改善しない場合があることを知りました。

そこで私は、この治療を自分ですることはできないだろうか、と思ったのです。

セルフで上咽頭炎の治療はできないのか?

ネットを調べてみると、Bスポット療法を自分でしているという人たちがいました。

自分でBスポット療法をすることを、セルフBスポットと呼んでいるようです。

その方法は、二つあります。

一つは、鼻から細くて長い綿棒を入れて、上咽頭に届かせる方法。

もう一つは、喉から太い綿棒などを入れて、上咽頭に届かせる方法。

これらは、耳鼻科でしていることを自分でするということです。

ただ、問題は、塩化亜鉛という薬品を入手するのが難しいという点です。

塩化亜鉛は、薬局などで身分証明書を提示して購入するしかないということでした。

または、海外から個人輸入をするということです(違法な行為ではありません)。

いずれにせよ、入手が困難ですから、塩化亜鉛の代わりになるものを使っている人が多かったです。

ただ、何を塗るのかということ以前に、そもそも上咽頭に綿棒などを届かせることができなければ意味がありません。

鼻や喉の奥ですから、慎重にしなければ危険です。

私の場合は、地方に住んでいるため耳鼻科に通うのも難しく、また自分で試行錯誤することが好きなので、危険のない範囲で、セルフBスポットにチャレンジしてみたいと思いました。

これから書くことは、あくまでも私の体験であって、同じことを勧めているわけではないですから、誤解のないようにお願いします。

この治療法に興味を持たれた方は、耳鼻科での治療をお勧めします。

鼻から入れる技法にチャレンジ

まず私は、上咽頭に綿棒を届かせることができるのかを試してみようと思いました。

そこで、普通の綿棒に馬油を塗って、鼻から綿棒を入れてみました。

普通の綿棒は短いですから、上咽頭に届かせることは無理だと思ったのですが、そもそも綿棒を鼻の奥に入れることができるのかどうかを試してみたかったのです。

馬油を塗ったのは、油を塗っていないと、とても鼻の奥に入りそうになかったからです。

少しずつ綿棒を入れてみましたが、私はアレルギー性鼻炎があるので、綿棒を入れると痛いです。

痛いので、危険がないように、少しずつ入れてみたのですが、かなり難しいということがわかりました。

でも、練習すれば、できるようになるかもしれません。


この時にふと、鼻から細いひもを入れて口から出すというヨガの技法があることを思い出したのです。

そこでこのヨガの技法について調べてみたら、「スートラ・ネティ」という技法であることがわかりました。

専用のひもを鼻から入れて、口から出して、それをゴシゴシと動かして浄化をするそうです。

このスートラ・ネティは、現代ではラバーやカテーテルを使って行う人が多いようです。

カテーテルであれば、綿棒のように軸が固くありませんから、鼻の奥まで入れることができるのではないかと思いました。

慎重に入れれば、鼻を傷つけることもなさそうです。

そこで、このスートラネティを試してみようと思ったのです。

スートラ・ネティを試してみたが……

スートラ・ネティ用のラバーを購入しました。
 
油をつけるとラバーが劣化するので、水をつけました。
 
きっとカテーテル用の潤滑剤があればよかったのでしょうが、ラバーに水をつけてスートラネティをしている人が多かったので、私もそうしてみました。
 
ところが、水だけだとスムーズに入らないのです。
 
少しずつ入れましたが、鼻の途中で入らなくなりました。
 
左右とも試しましたが、途中で引っかかって入らないので、無理はしないようにしました。
 
でも、スートラネティをしている人たちの動画を見ると、簡単にしているので、きっと練習すればできるのでしょう。
 
そこで、数日後に、再びチャレンジしてみました。
 
それでも、やはり途中で引っかかって、入らなくなります。
 
私の場合は、アレルギー性鼻炎のせいで、鼻が普段から腫れているのかもしれません。
 
無理をするのは危険なので、この日もこれでやめておきました。
 
それからまた数日後に、もう一度チャレンジしてみました。
 
この時も、前回と同じ場所で引っかかったのですが、そこから本当にゆっくりと少しずつ入れていくと、ラバーが奥に入って行きました。
 
その後は、それほど痛みもなく、どんどん奥に入っていき、ついに喉の奥にまで到達したのです。
 
本来のスートラネティは、そこからラバーを口に持っていって、ラバーの両端を持って、ゴシゴシと動かすようです。
 
私は、とてもそんなことはできませんから、とりあえず喉の奥にラバーが見えた段階で、スートラネティはできたと判断して、ラバーを鼻からゆっくり抜きました。
 
両鼻とも同じことをして、とりあえずスートラネティができるようになったことで満足しました。
 
でも、かなり鼻の粘膜に負担がかかる感じがしたので、とりあえずスートラネティは、これでやめようと思いました。
 
私の場合、上咽頭炎は、鼻からアプローチするよりも、口からアプローチしたほうがいいのではないかと思いました。
 
つづく