ショパンエチュードop10-3 「別れの曲」、最難所といわれる、46~53小節。

 

この8小節があるために、中間部のチャレンジに躊躇される方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この8小節は、2小節ごとに分けられ、さらに最初の6小節では例外なく、譜尾がつながった4つの音で、1つの減七の和音を奏でています。

 

減七の和音は楽譜上では構成音によって、見かけの度数が変わるのでこの6小節を譜面として難しく見せていますが、実際に鍵盤上で音を拾ってみると、左右それぞれの手が弾く同じ2音の間隔は

 

・常に半音9つ分の鍵

 

を弾いており、譜尾のつながった前の音から後の音へ手を動かす方向に

 

・常に半音6つ分先の鍵

 

を弾きます。

 

いずれも例外はありません。

 

各2小節は、右手の山部分に注目します。

 

山の一番高い音を3つ目まで拾うと、

 

46小節目~シ、ラ、ラ

48小節目~ラ、ソ#、ソ#

50小節目~ソ#、ソ#、ファ#

 

と、曲の主調:ホ長調の属音からの順次下降の音が鳴っていることに気付きます。

 

また、各減七の和音間の移動は前半偶数小節が短3度下降、後半奇数小節が半音下降という規則性にも気付くことが出来ます。

 

短3度は言うまでもなく、減七の和音を構成する音の間隔なので、

 

最初の6小節は2小節ごとに、減七の和音と半音下降の組み合わせを、属音からの順次下降を軸に構成されています。

 

そして最後の2小節、52~53小節は、51小節からの減七の和音間の半音下降の流れを汲みつつ、部分的な半音の変化を経て曲の属七の和音を導いています。

 

ここで改めて、46小節の最初の音、直前の華やかな下降フレーズの最後の音を見ると、曲の属和音です。

 

つまり、「別れの曲」の最難所と言われるこの8小節は、

 

冒頭に鳴らした属和音を、減七の和音を属音からの順次下降を軸にしながら半音下降させ、最後にその流れを部分的な半音の変化で属七の和音へと導いている

 

というシンプルな構造になっています。 

 

「別れの曲」の美しさは呈示部、再現部の旋律だけではなかったのです!

 

 

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