ヘンルーダ

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【サフラン、セージ、ルー、ミルラ、タイム】

 

 

「キャンブリック・シャツ」という

言葉が使われているヴァージョンが。

 

その頃、

もうひとつあったそうです。

 

 

それは、1807年7月に

『the Scots Magazine』の

P.527~P.528に掲載された、

 

こんな歌です。

 

 

[He:]

 

As I gaed up to yonder hill,

(Saffron, sage, rue, myrrh,and thyme,)

I met my mistress her name it was Nell,

" And lass gin ye be a true lover o' mine.

 

"Ye'll mak' to me a camric sark,

"(Saffron, sage, rue, myrrh,and thyme,)

"Without either seam or needlewark,

"And that an' ye be a true lover o' mine.

 

"Ye'll wash it out at yonder well,

"(Saffron, sage, rue, myrrh,and thyme,)

"Whar water ne'er ran, nor rain ne'er fall,

"And that an' ye be a true lover o' mine.

 

 

[She:]

 

"Now, Sir, since you speir't me questions three,

(Saffron, sage, rue, myrrh, and thyme,)

"I hope you will answer as mony for me,

"And that an' ye be a true lover o' mine.

 

"Ye'll plough to me an acre o' land.

"(Saffron, sage, rue, myrrh, and thyme,)

"Atwixt the sea beet, and the sea sand,

"And that an' ye be a true lover o' mine.

 

"Ye'll till it a' wi' yon cocklehorn,

"(Saffron, sage, rue, myrrh, and thyme,)

"And sow it all o'er wi' a handfu' o' corn,

"And that an' ye be a true lover o' mine.

 

"Ye'll cut it a' down wi' a dacker o' leather,

"(Saffron, sage, rue, myrrh, and thyme,)

"And lead it a' in on a peacock's feather,

"And that an' ye be a true lover o' mine.

 

"Ye'll thrash it a' wi' a cobbler's awl,

"(Saffron, sage, rue, myrrh, and thyme,)

"And put it a' up in a mouse's hole,

"And that an' ye be a true lover o' mine.

 

"And, Sir, when ye hae' done your work,

"(Saffron, sage, rue, myrrh, and thyme,)

"Come to me and get your camric sark

"And syne ye shall be a true lover o' mine."

 

 

これを雑誌に投稿したのは、

「Ignotus」と名乗る人物で。

 

この人は。

 

「幼いころから繰り返しこの歌を、

自分の祖父から聞かされたという

人から教えてもらった」

 

・・・と言っていたそうです。

 

 

そして。

 

「大いなる古代のものであると、

正当に主張できるかもしれない」

 

・・・とも真顔

 

 

「キャンブリック・シャツ」

という言葉が含まれる時点で、

 

「古代」ではないのでは?

 

・・・とも思うのですがにやり

 

 

この歌詞では、

 

「camric sark」

 

・・・と、綴りが少し

違うようです。

 

これもまた、

訛りなのでしょうか。

 

それともこの頃はまだ、

田舎のほうには正式な

発音や綴りが、

 

到達していなかったの

でしょうか。

 

 

そう言えば。

 

シェトランド諸島の

マーガレットおばさんも。

 

「camric sark」

 

・・・と歌っていましたね。

 

 

「Ignotus版」の歌詞では、

女性の仕事のひとつであった、

 

「洗ったシャツを乾かす」

 

・・・という部分が

なくなっていたりもします。

 

 

*******

 

 

そして面白いのは。

 

その女性に、

 

「Nell」

 

・・・という名前が

つけられていることです驚き

 

 

スコットランド系の

『妖精の騎士』のバラッドでは。

 

あの若い娘に

名前はありませんでした。

 

 

なのでもしかすると。

 

このヴァージョンは。

 

「名前初登場」

 

・・・になるのかもしれません。

 

 

ただ、なんとなく、

「Nell」という名前は。

 

As I gaed up to yonder hill,

 

・・・の「hill」に対して

韻を踏ませようとした結果。

 

あとから無理矢理

こじつけたような感じも

しなくもないのですが真顔

 

 

この歌も、

 

「男女の対話」

 

・・・になっていますが、

 

そこには、

その男女が「丘」で出会った

という描写がチラッと

含まれていて。

 

 

なんとなく。

 

丘の上に座って

角笛を吹いていた妖精の騎士を

彷彿とさせられますおやすみ

 

 

*******

 

 

更に面白いのは、

ハーブのリフレインです。

 

Saffron, sage, rue, myrrh, and thyme

 

・・・と。

 

たくさん並んでいますショック

 

 

なんだか。

 

並べるだけ並べてみました!

 

・・・という感じが

してしまいましたにやり

 

 

「タイム」は、

The Humours of Love』や

THE CAMBRIC SHIRT.』にも

登場していました。

 

 

「セージ」もまた、

THE CAMBRIC SHIRT.』の

中にあり。

 

この二つのハーブは、

今後あちこちで見るように

なりました。

 

 

セージは一般的には、

「殺菌作用」があることで

有名です。

 

おまじない的には、

あの本によると。

 

 

 

 

「セージは、かしこい主婦が

家庭を切り盛りする庭でしか

繁殖しない」

 

・・・なんていう

迷信があったそうです。

 

 

あとは。

 

若い女性が、万聖節のイヴ

(10月31日のハロウィーンの日)の

真夜中に庭に降りていき、

 

12時の時計が鳴っている

そのときに、

 

枝を折らずに9枚のセージの葉を

摘むことができれば、

 

未来の夫の顔をみることが

できる。

 

でももし、

彼女が結婚しない運命だった時は、

 

棺桶のイメージが見える。

 

・・・なんていうのも

あったそうですおやすみ

 

 

「ルー」というのは、

「ヘンルーダ」のことですが。

 

これはどちらかというと、

「愛」に関するものと

いうよりかは。

 

「魔除け」のほうに

重点を置かれていた

ハーブだったようです。

 

魔女除け。とか。

 

 

そういう点では、

「ミルラ」も同じかも

しれません。

 

ミルラは、

大昔から神聖な儀式で

焚かれていましたし。

 

古代エジプトでは

ミイラづくりに使用されて

いたりもしました。

 

イエス・キリストが

生まれた時に、

 

三賢者が贈り物として

持ってきたもののひとつの、

 

「没薬」

 

あれがミルラです。

 

 

教会のミサでは今でも、

 

このミルラと

フランキンセンス(乳香)が

焚かれます。

 

 

なので。

 

当時からミルラは。

 

「神聖なもの」

 

・・・と見られていた

のでしょうね。

 

 

ちなみに

ミルラは。

 

ハーブではなくて、

「樹脂」です。

 

 

あとは、

「サフラン」ですが。

 

こちらの本に、

こんな話がありました。

 

 

 

 

 

中世の裕福な家庭の

レシピのおよそ3分の1には

サフランが使用されていたそうで。

 

そうやって

人々にとても好まれた割には、

とても高価なものだったようです。

 

 

あのヘンリー8世は

ことのほかサフラン料理を

好んでいて。

 

宮廷の女官たちが

サフランで髪を染めることを

禁じたのだとか真顔

 

 

そして、

「バンクスの本草書」によると

サフランは。

 

「人の腹の底にたまっている

ありとあらゆる憎悪を消し去り、

人を眠りに誘う」

 

・・・とのこと。

 

 

「Ignotus版」の中で、

なぜこれらのハーブが

並べられていたのかは。

 

これはもう。

 

自分であれこれ想像するしか

ありませんにやり

 

 

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The Humours of Love』は、

1780年頃。

 

THE CAMBRIC SHIRT.』は、

1783年(or 1784年)頃。

 

そしてこの

「Ignotus版」は1807年に、

 

それぞれ、

世に出ています。

 

 

リフレインはそれぞれ、

 

Sweet savory grows, rosemary and thyme

 

Parsley, sage, rosemary and thyme

 

Saffron, sage, rue, myrrh, and thyme

 

・・・と、少しずつ違いますが。

 

 

どれもみな、

ハーブのリフレインで。

 

スコットランドに伝わる、

 

「風が吹いてくる」系の

リフレインではなくなっています。

 

 

この3つの歌に共通するものは、

 

「ハーブが出てくるリフレイン」と、

「男女の間で交わされる会話」です。

 

そして、

 

「キャンブリック・シャツ」が

登場すること。

 

 

これらの歌が

それぞれ世に出た時期は

とても近いですが。

 

それは、

印刷されて世に発表された

日付ですので、

 

実際にはこれらの歌が

どれほど古くから

歌い継がれていたのか。

 

どの歌がより古いのか。

 

・・・というようなことは、

ハッキリと断定することは

できません。

 

 

もしかすると。

 

そこには、

歌の収集家や本の編纂者たちの

「改ざん」が入ったことも

あったのかもしれませんが。

 

 

そういうことも、

いつものように。

 

真相は闇の中。

 

・・・なのです真顔

 

 

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【スカボロー・フェア聴き比べ】

 

 

Leaves' Eyes

リーヴズ・アイズ(Leaves' Eyes)は、
ドイツ出身のゴシック/
シンフォニックメタル・バンド。

紅一点の女性ボーカリストを
擁するグループで、
北欧神話や中世ヴァイキングの
時代などをテーマとした
スタイルを展開している。

(ウィキより)


Leaves' Eyes 『Scarborough Fair』(2009)

 

 

 

Rachel Payne

カリフォルニアの
メゾ・ソプラノ歌手。


Reiko Füting

この人は、
ドイツの作曲家かな?うーん

「れいこさん」って。

日系の女性かと思ったら、
男性だったみたいでしたニコニコ


これも、シャープ版でした。

声楽のレッスンを思い出す
『スカボロー・フェア』

 

 

Rachel Payne & Reiko Füting 『Scarborough Fair』(2009)

 

 

 

Pat Surface with The Boundary Water Boys

 

 



パット・サーフィスを

中心とした、

 

アメリカのフォーク・グループ。

・・・かな?


Pat Surface · Boundary Water Boys
『Scarborough Fair』(2010)