2018年度行政書士試験を振り返る~記述編
公法択一編はこちら
私法択一編はこちら
最後は記述編です。
今年の記述の問題は、解答例をみる限り、基本的な内容を問うものでした。
ただ本試験の時間の中で、問題文を読み、事案を分析して、書くべきことを抽出できたかどうか?という観点から考えると、なかなかハードルの高い問題だったと言って良いでしょう。
実際ここまで見た記述の答案について、という限定付きですが、出来は思ったほどよくありません。
特に問題44は書けている人がほとんどいません。
一方問題45、46についてはきちんと書けていた人はいらっしゃいました。
36点という合格ラインに達するためには、問題45、46をどれだけ正確に書くことができたかどうかがポイントになると言えるでしょう。
以下問題ごとのポイントをみていきます。
☆問題44
事案からA県知事の「不作為」であることが読み取れたかどうかがポイントです。
ただきちんと読み取って「不作為型」の申請型義務づけ訴訟について書けた人は今のところお二人です。
「拒否処分型」だと勘違いして「取消訴訟と義務づけ訴訟の併合提起」とした方が多かったですね。
あと被告を「A県知事」としてしまった人も結構いらっしゃいました。
参照条文が大きなヒントになっていたのですが、そこに気がつかなかった方が多かったのかもしれません。
これだけ出来が悪かったのであれば、被告が書けていれば6点、訴訟類型が正確に書けていれば12点、義務づけ訴訟が書けていれば6点といった「キーワード採点方式」で採点する可能性は高いとみています。
☆問題45
催告の相手を「成年後見人C」としたかどうか、催告の内容として「追認」という言葉が書けたかどうか、結果として「追認拒絶の結果」「取消す旨の確答」などAB間の契約を解消する方向の結果が書けたかどうか、がポイントです。
☆問題46
民法20点アップ道場でも取り上げて、記述候補として条文の穴埋めも載せていた550条に関する問題です。
「書面によらない贈与」「まだ引き渡しをしていない(履行が終わっていない)」「撤回」がキーワードです。
「撤回」を「取消し」や「解除」と書いてしまうと現時点では減点になると思います。2020年からは「解除」に変わることを考えると、「解除」と書いた場合は評価してくれてもよいような思いはありますが、やっぱりだめでしょうね…。
3問の中で問題46が一番よくできていた印象です。合否を分ける1問といってよいと思います。
最後に採点基準についての現時点での私の予想を書いておきます。
昨年は択一の出来がよかったにもかかわらず、記述の採点でもさらに下駄を履かせるようなことをしてきました。
つまり採点基準は非常に緩やかだったわけです。
一方今年は昨年より択一の出来がよくありません。その分「記述次第」という方は多いと思います。
その記述ですが、問題44は出来が相当悪い印象が強い。合計で210点オーバーで受かってそうな人も昨日の個別相談で何人かいらっしゃいましたが、その人たちも問題44は書けていませんでした。
また問題45、46も決して出来がよいわけではありません。
以上をふまえると、採点基準はやはり緩やかになるのではないか。
具体的には、キーワードが書かれていればそこに点を与えていくという「キーワード採点方式」を採用するのかなと。
問題53が一部で議論になっているようですね。
そんなことにエネルギーを使いたくないので、私は参戦するつもりはありませんが(笑)。
むしろ問題53は正解がわかりやすくていいとさえ思っています。
これが倫理的にどうのこうのというなら、不法原因給付で愛人関係の話も出せなくなりそうですよね。
それより問題なのは問題56です。
私は肢4推しでいきますが、肢1も肢5もたしかに微妙ではあるのです。
得点源とすべき科目の問題で、こんなに答えが割れるような問題を出すなよな。
これは「問題が悪い」と言うべきではないか。
そちらの方が大問題です。