国連人権理事会・特別報告者・国連人権高等弁務官事務所ってなんだ? | 横溝慎一郎行政書士合格ブログ  

国連人権理事会・特別報告者・国連人権高等弁務官事務所ってなんだ?

28日に「横溝式逆転学習法」ガイダンスを行います。



直前講座の内容や、民法誤り選択肢道場と44点アップ道場民法の違いなど、あなたが知りたい疑問にお応えします。

昨日は講義の前に、2冊目の再校済み原稿を出版社の方に渡しました。

先週金曜に再校用原稿をもらって、実質、
中2日。土日の講義の開始前やら昼休みも駆使しつつ、何とか終わらせた次第です。
これで2冊とも「あと140日の過ごし方」のときにお披露目できそうかな。まだ先行き不透明ですが、きっとそうなると信じています。

今日は一般知識に関連するお話をしましょう。

テーマは、国連人権理事会です。

国連総会の補助機関に「人権理事会」というものがあります。世界人権宣言や国際人権規約(自由権規約と社会権規約があります)をはじめとする国際人権法が守られているかどうかをチェックし、必要な勧告を行う役割を果たしている組織です。

元々は「人権委員会」がその役割を果たしてきましたが、2006年に改組され、「人権理事会」になりました。47の理事国で構成されています。

この「人権理事会」の事務局の役割を果たすのが、「国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)」です。

また、「人権に関する特別報告者」も人権擁護に関する国連の機能を担うものです。

「人権に関する特別報告者」は、「人権理事会」に任命され、「人権理事会」と総会に報告義務を負い(これを「マンデート」といいます)、個別テーマまたは個々の国について、人権に関する助言を行う、独立した立場の人権の専門家のことをいいます。人権問題に関する様々なテーマごとに専門家が任命されており、報酬はありません。

国連広報センターのホームページによると「これらの専門家は個人からの苦情やNGOからの情報も含め、信頼にたるあらゆる情報を利用する。また、最高のレベルで政府に仲裁を求める『緊急行動手続き』を実施する。多くの調査は現地で行われる。当局と被害者の双方に会い、現場での証拠を集める。報告は公表され、それによって人権侵害が広く報じられ、かつ人権擁護に対する政府の責任が強調されることになる。」とされています。

この「人権に関する特別報告者」から現地政府への報告要求は、当然公式の回答要求という形をとります。

ここまでは一般知識ネタとして押さえておきましょう。

(はる姐さんの命日に合わせて、夫婦共通の友人がお花を贈ってくれました。この場を借りて改めて御礼申し上げます)

さて、18日にこの「人権に関する特別報告者」のひとりであり。プライバシーに関する専門家として任命されているジョセフ・ケナタッチ氏が、安倍首相宛てに「共謀罪法案に関する疑念への回答を求める」旨の書簡を送りました。


「2017年5月18日

内閣総理大臣 閣下

私は、人権理事会の決議28/16に基づき、プライバシーに関する権利の特別報告者としての私の権限の範囲において、このお手紙を送ります。」

冒頭のこの記載は、ジョセフ・ケナタッチ氏が個人的にこの書簡を送ったものではないことを表しています。実際、原文は英語表記ですが、レターヘッドは「人権理事会」と「国連人権高等弁務官事務所」と表記されたものが使用されています。


続けて、共謀罪法案が成立した場合、法律の広範な適用範囲によって、プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる懸念があることを指摘しています。


「提案された法案は、広範な適用がされる可能性があることから、現状で、また他の法律と組み合わせてプライバシーに関する権利およびその他の基本的な国民の自由の行使に影響を及ぼすという深刻な懸念が示されています。

とりわけ私は、何が「計画」や「準備行為」を構成するのかという点について曖昧な定義になっていること、および法案別表は明らかにテロリズムや組織犯罪とは無関係な過度に広範な犯罪を含んでいるために法が恣意的に適用される危険を懸念します。」


また現在の国会審議のあり方にも疑問を呈しています。

「更なる懸念は、法案を押し通すために早められているとされる立法過程が、人権に悪影響を及ぼす可能性がある点です。立法が急がれることで、この重要な問題についての広範な国民的議論を不当に制限することになります。」

上記の懸念事項を踏まえ、共謀罪法案には以下5つの問題点があることを指摘しています。


マンデートは、特にプライバシー関連の保護と救済につき、以下の5点に着目します。


1 
現時点の法案の分析によれば、新法に抵触する行為の存在を明らかにするためには監視を増強することになる中にあって、適切なプライバシー保護策を新たに導入する具体的条文や規定が新法やこれに付随する措置にはないと考えられます。


2 
公開されている情報の範囲では、監視に対する事前の令状主義を強化することも何ら予定されていないようです。


3 国家安全保障を目的として行われる監視活動の実施を事前に許可するための独立した第三者機関を法令に基づき設置することも想定されていないようです。このような重要なチェック機関を設立するかどうかは、監視活動を実施する個別の機関の裁量に委ねられることになると思われます。


4 更に、捜査当局や安全保障機関、諜報機関の活動の監督について懸念があります。すなわちこれらの機関の活動が適法であるか、または必要でも相当でもない手段によりプライバシーに関する権利を侵害する程度についての監督です。この懸念の中には、警察がGPS捜査や電子機器の使用の監視などの捜査のために監視の許可を求めてきた際の裁判所による監督と検証の質という問題が含まれます。


5 嫌疑のかかっている個人の情報を捜索するための令状を警察が求める広範な機会を与えることになることから、新法の適用はプライバシーに関する権利に悪影響を及ぼすことが特に懸念されます。入手した情報によると、日本の裁判所はこれまで極めて容易に令状を発付するようです。2015年に行われた通信傍受令状請求のほとんどが認められたようです(数字によれば、却下された令状請求はわずか3%以下に留まります。)」


そして「私は、提案されている法改正及びその潜在的な日本におけるプライバシーに関する権利への影響に関する情報の正確性について早まった判断をするつもりはありません。」とした上で、日本が1978年に批准した自由権規約(ICCPR)17条1項を遵守する義務があることも指摘しています。

ちなみに17条1項は、個人のプライバシーと通信に関する恣意的または違法な干渉から保護される権利を認め、誰もがそのような干渉から保護される権利を有することを規定するものです。

ここからが政府に対して回答を求めた内容です。

「人権理事会から与えられた権限のもと、私は担当事件の全てについて事実を解明する職責を有しております。つきましては、以下の諸点につき回答いただけますと幸いです。


1.上記の各主張の正確性に関して、追加情報および/または見解をお聞かせください。


2.「組織犯罪の処罰及び犯罪収入の管理に関する法律」の改正法案の審議状況について情報を提供して下さい。


3.国際人権法の規範および基準と法案との整合性に関して情報を提供してください。


4.法案の審議に関して公的な意見参加の機会について、市民社会の代表者が法案を検討し意見を述べる機会があるかどうかを含め、その詳細を提供してください。」

ごらんの通り、この書簡は「人権理事会から与えられたら権限に基づいて人権理事会に報告する必要があるため、さっさと回答せよ」と政府に対して求めるものです。しかもこの書簡自体、公表されており、政府の回答も公表するとしています。

ちなみに昨日官房長官が記者会見で、「ケナタッチ氏の個人的な書簡」だとして強く抗議するとかなんとか言ってたようですが、全くの的外れな発言です。

このことはすでに海外でも報じられてしまっているようですが、みっともないことこの上なしといったところでしょう。

憲法が国際協調主義を採用している(98条2項)ことから、日本はすでに批准している「国際人権規約」を遵守する義務があります。また国連加盟国として、国際人権法を遵守する義務があります。

政府の回答が待たれるとともに、その内容に注目です。



5月5日に実施した「民法難易度比較体験会」の動画がアップされました。

私は18分くらいから登場しています。

良かったらご覧ください。