行政事件訴訟法は「訴訟類型」をまず頭に叩き込もう その2
その1はこちら
さて、先ほどの記事に書いた問題の正誤はわかりましたか?
もう一度問題を示します。
「実質的当事者訴訟の対象となる行政活動については、他の法律に特別の定めがある場合を除いては、民事保全法に規定する仮処分をすることができない」(2011年問題18(5))
というものでしたね。
この問題で思い出さなければならないのは、行政事件訴訟法44条です。
「44条 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、民事保全法に規定する仮処分をすることができない。」
民事保全法に規定する仮処分は、いわゆる「仮の救済制度」です。
民事保全法1条は以下のように規定しています。
「民事訴訟の本案の権利の実現を保全するための仮差押え及び係争物に関する仮処分並びに民事訴訟の本案の権利関係につき仮の地位を定めるための仮処分(以下「民事保全」と総称する。)については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。」
行政事件訴訟法において、「仮の救済制度」というと、取消訴訟や無効等確認訴訟に関する「執行停止」と義務付け・差し止め訴訟に関する「仮の義務付け・仮の差し止め」があります。
ですから、これらの規定が適用できる場面で民事保全法をわざわざ持ち出す必要がないため、44条で「することができない」と定めているのです。
また、44条の適用範囲は「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」と限定されています。
ということは、それ以外のケースでは、民事保全法に規定する仮処分をすることが出来る余地があるということにもなるわけです。
「行政庁の処分その他公権力の行使」に関して不服を申し立てていく訴訟類型こそが「抗告訴訟」ですね。
それ以外の行政活動について不服を申し立てていく訴訟類型が「当事者訴訟」、とくに「実質的当事者訴訟」ということです。
つまり、「抗告訴訟」は44条の対象になりますが、「実質的当事者訴訟」は44条の対象ではないのです。
したがって、
「実質的当事者訴訟の対象となる行政活動については、他の法律に特別の定めがある場合を除いては、民事保全法に規定する仮処分をすることができない」(2011年問題18(5))
は、誤り、ということになりますね。
ちなみに44条は初めて聞かれたわけではありません。
「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、行政事件訴訟法の定める執行停止、仮の義務付けおよび仮の差し止めのほか、民事保全法に規定する仮処分を行うことができる」(2009年問題17(1))
で、取り上げられたことがあります。
これはもちろん誤りですね。
いずれにしても、「抗告訴訟」「当事者訴訟」がなぜ「主観訴訟」の中でふたつにぶんるいされているのか?が分かっていないと、今回取り上げた問題は判断がつきません。
こういった「大きな視点」での理解というものを可能にしてくれるのが、行政事件訴訟法における「訴訟類型」であるということを、改めて肝に銘じておきましょう。

さて、先ほどの記事に書いた問題の正誤はわかりましたか?
もう一度問題を示します。
「実質的当事者訴訟の対象となる行政活動については、他の法律に特別の定めがある場合を除いては、民事保全法に規定する仮処分をすることができない」(2011年問題18(5))
というものでしたね。
この問題で思い出さなければならないのは、行政事件訴訟法44条です。
「44条 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、民事保全法に規定する仮処分をすることができない。」
民事保全法に規定する仮処分は、いわゆる「仮の救済制度」です。
民事保全法1条は以下のように規定しています。
「民事訴訟の本案の権利の実現を保全するための仮差押え及び係争物に関する仮処分並びに民事訴訟の本案の権利関係につき仮の地位を定めるための仮処分(以下「民事保全」と総称する。)については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。」
行政事件訴訟法において、「仮の救済制度」というと、取消訴訟や無効等確認訴訟に関する「執行停止」と義務付け・差し止め訴訟に関する「仮の義務付け・仮の差し止め」があります。
ですから、これらの規定が適用できる場面で民事保全法をわざわざ持ち出す必要がないため、44条で「することができない」と定めているのです。
また、44条の適用範囲は「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」と限定されています。
ということは、それ以外のケースでは、民事保全法に規定する仮処分をすることが出来る余地があるということにもなるわけです。
「行政庁の処分その他公権力の行使」に関して不服を申し立てていく訴訟類型こそが「抗告訴訟」ですね。
それ以外の行政活動について不服を申し立てていく訴訟類型が「当事者訴訟」、とくに「実質的当事者訴訟」ということです。
つまり、「抗告訴訟」は44条の対象になりますが、「実質的当事者訴訟」は44条の対象ではないのです。
したがって、
「実質的当事者訴訟の対象となる行政活動については、他の法律に特別の定めがある場合を除いては、民事保全法に規定する仮処分をすることができない」(2011年問題18(5))
は、誤り、ということになりますね。
ちなみに44条は初めて聞かれたわけではありません。
「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、行政事件訴訟法の定める執行停止、仮の義務付けおよび仮の差し止めのほか、民事保全法に規定する仮処分を行うことができる」(2009年問題17(1))
で、取り上げられたことがあります。
これはもちろん誤りですね。
いずれにしても、「抗告訴訟」「当事者訴訟」がなぜ「主観訴訟」の中でふたつにぶんるいされているのか?が分かっていないと、今回取り上げた問題は判断がつきません。
こういった「大きな視点」での理解というものを可能にしてくれるのが、行政事件訴訟法における「訴訟類型」であるということを、改めて肝に銘じておきましょう。
