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miyutor observation diary

お役立ち情報、自分のことに関して、小説やポエムなど
色んなことを詰め込んだブログです

夢を見た。
いつだから分からないが、透き通るような薄い夢。


1人水の上に立つ私は綺麗で、何もかも許されていた。
この先に何が待っているのか想像を許してくれる大きい青空。
クリアブルーに塗られたそれは手が届きそうで、されどギリギリのところで届かない。
なんとも無邪気に笑ったものだ。

ーいつかお前に届く。
この小さな手が大きくなるんだ!

そんな淡い夢。
飽和していくように溶けだし、ついには足元も綻ばせる。
無邪気に笑っていた顔は忘れたように翳り、崩れた足場に目もくれず、従って落ちた。

流れ揺蕩う波紋に逆らう意思もなく、夢見た大空はいつの間にか、濃い弁柄色を写すようになった。


こんなはずでは…。
憂う心の色は何色なのか、流す涙の色さえ懐かしいクリアブルーだというのに。
血の色は?
目の色は?
吐く吐息の色、発する言葉の色、動かす度に伝う感情の色。
もはやそれすらもがみな等しく、深紅色なのかもしれない。




そんな夢。
だから私は今、見分ける力を持つために…。



足先に広がる波紋。
透明で、濁りもなくて、いつも素直でいてくれる。
足先に絡まって教えてくれるそれは、私が絡め取られても知らないと言ってくれた。
それがまた、心地いいのかもしれない。

鳥は自由に飛べる。
大空を我が物顔で羽ばたき、獲物を見つけた時は領土侵犯を許さないように撃退し喰らう。
時に枝を見つけ躰を休める。
羽についたホコリやゴミを啄み、整える。
また空を見上げ、どこに飛ぼうか模索するのだ。



籠の中の鳥は不自由だ。
狭いカゴの中に僅かながらのご飯や水。
自由に飛ぶことを許さない鉄の柱たち。
休むところは、天井に吊るされている1本の木の枝。
いつも隙間から除く空に願いをかけながら、命を燃やす。
小さな命、されど大きな命。
弄ばれて逝くその儚い身は何を想って何を思っているのか。



目の前にいるそれを手に乗っけて耽ける私は何をオモッテいるのか。
この鉄格子に囲われた部屋で私はどのように華咲くのか。

「見物だな」

小さく小鳥に呟いてみせる。
返事が返ってくるわけでなく何かを訴えるつぶらな瞳は、虚空を切るようにそっぽを向いた。

「冷たいやつだな。お前は、死ぬのは怖くないのか?」

またこちらを一瞥し、籠の中へ勝手に飛んでいく。
自分の居場所はここだと言うように。



では、私はどこに居場所を持つのだろうか。
殿方の腕の中。
個室に用意された布団の中。
身請けを買って出てくれる殿方。
または使えなくなり捨てられていく路地か。
…別にどこだっていい。
結局は、出られぬ箱の中なのだから。
小鳥は答えぬ。
代わりに、空を見上げ小首を傾げる。

アソコではないのか?

そう問いかけるように。
ピィッ!
と、一言。



なんとまあ、間抜けな声だこと。
薄い笑みを浮かべて笑いながら、籠の扉を閉めた。
それと同時に、襖が開く。



「客だよ、太夫。たく、物好きなやつが買っていくもんだ。早く準備しな!」



ここを取り締まる婆が顔を出す。
忌み嫌われてここ、遊郭に売られた私は、今日も春を売る。
私が寝るか相手が寝るか。
どのみち、気分が晴れることもない。
逃げるという選択肢は頭にない。
どこにも行く場所がないし、住む場所があるだけマシなのだから。
だから、住むことを見返りに春を売る。
ここはそんな街。
娼妓として、太夫として、今日も舞を披露し連れていく。
銀がどれくらいかかることやら、物好きなものだ。



今日も空を飛べずに、青から橙に変わる紙面のような虚空を見つめ、歩く。

明日は、飛べるだろうか。
私は、結局お飾りなのだ。
1番にはなれないし、なりたくない。



「ねえ、今日俺の家来るの?」


彼がそう私に聞く。
少し子犬っぽくて、撫でればそっぽ向くけど本当は嬉しいって言うのがわかる、そんなカワイイ系男子。

「んー、明日早いから行けないかも…ごめん!」

そう言えば少し悲しそうな顔をして。

「たぶん、週末は行けると思うんだけど…行ってもいい?」

…ほら、顔が嬉しそう。
そんなに私といるのが嬉しいの?
可愛い子。




でもそんな生活にも飽きた。
なぜ私があなたのご機嫌取りをしなきゃいけないの。
手懐けるまでが楽しかったのに、手懐けた瞬間興味をなくした。


最近こんな恋愛ばかり。
気がつけば誰よりも恋愛経験をしていた。
純粋な気持ちなんてどこぞの空。
考えるのは、あの子はこういうこと言われるのが好き、こうしてあげれば好き、こういう仕草が好きでしょ?
そんなことばかり…。





私は結局、愛される自分が好き。
相手の1番でいるのが好き。
だから、2番目なんて考えたくない。
だから私は、呪いをかけてあげる。



「私は飾り物なんて嫌なの。
使ってくれる消耗品になりたい。」

そう言うと大抵、

「消耗品にもさせないし、飾りでとどまらせない。
僕の(俺の)隙間を埋めてくれるピースだよ。」

これで、貴方は私のモノ。




大学に入って私はモテたわ。
誰よりも告白が多い女の子だったの。
だから私がこの学校で一番だと思っていた。
誰よりも可愛いし、誰よりも美しい。
素敵な女性なのって。


でも誰かが言ってた。










『あの子がいちばんかわいい』










…それは、告白される回数も少ないし、お淑やかで清楚で黒髪で世間にはじき飛ばされたようなド真面目ちゃん。
でも不思議と惹かれるものがある、そんな変わった子。











その時
私の価値がわかったの











誰も私のことが好きなんじゃなくて、告白しやすくてノリが良くて可愛くもなければブスでもない中途半端な存在で…たくさんある。




そう、あの子は高嶺の花なの。
私みたいにハードルが低くて、付き合いやすい。
そんな子じゃないの。




私は男性の、立派なお飾り物だったのよ。
それも、高級と謳ったツボのような。





悔しかった。
泣いた。
喚いた。
叫んだ。
呪った。
…憎んだわ、こんな私を。


勘違いで舞い上がる消耗品だって。
結局、男性のステータスの1部だった。














それからもう何もわからなくなって、ただ惰性を貪る日々を過ごした。
男を手玉に取って転がして遊んであげて寝て飽きたら捨てる。
抜け出したいのに抜け出せない薬物のような生活。







私に光がさしたのは、私でなくなりそうな時だったわ。





〜fin〜