雲は嫌いだ。
雨はもっと嫌いだ。
河を見えなくさせ、私をいつも困らせる。
けれど、いつものことだ。
また――。
河はいつも私を遮り、絆さえも遮ってしまう。
こんなものだと嘲笑うが、そうなったのはいつ頃からだろうか。
昔はもっと、次こそは、いいえ次こそは、この中を泳いでみようか!
なんて無鉄砲にも突っ込もうとしていたのに。
いつの間にか私は″大人″になってしまった。
早く大人になって、やりたいことをやるんだ、もう子供なんて言わせない!
そんなことを息巻いていたのに。
「こんなものか…」
一つの呟きを、大喰らいの河が飲み込む。
――そう、大人とは、諦めることが利口だと安全策を取る生き物なのだ。
やりたいことがあるはずなのに、識りたいことがあるはずなのに。
大人というのは、今回は運がなかった。
そんなことをしなくても打開策があるから、もっと楽な方法か諦めればいい。
だって、こんなこと誰もやってないのだから、私がやる必要がない。
そう、これもいつものことだ。
現に、あの人はやっていないもの。
そう言って正当化して、河岸をまた見やる。
けれど、なぜかとても、居たたまれない気持ちになった。
もしかしたら彼は、他の番いを…いや、彼に限ってそんなことは。
かぶりを振って諦めようとする。
そう、また来年。
俺は、諦めたくない。
いつも仲を引き裂こうと突っかかって来るが、俺の心は何人たりとも束になってかかってこようと、手折ることなどできやしない!
時には泳いで岸につくことを試みるが、途中から気を失い自身の岸辺へと戻される。
木に登って声をかけようとするも、幾何か木が離れているに加えて何百メートルもある河の向こう側になんて届きやしない。
男の心を折るには十分だったが、消えることのない力強い灯火は意志による思いで消せはしない。
誰もが諦めるであろう難関を、この男は冒険をするかのようにキラキラとするのだった。
もう少しで届くかもしれない!
ならば次はこうしてみるが、何かいい方法は?
よし、これがだめならばこうしてみよう!
そうして、何百通りあるものをすべて試そうと躍起になるのだ。
男の心は、針が進むことを忘れた時計のように若々しかった。
大人が決して持ちえないもの、されど望んで手を伸ばすものだ。
互いが決して知る由のない、空白の物語。
見届けるのは、次に晴れるよう希う2人の絆ではないだろうか。
作者は、早く晴れる日を拝みたいです。