漫画を語る・その41『神武』 | 夕焼けのむこうの国

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日々の生活で感じたことや、ふと思いついたことを、気ままに綴るブログです。

 

 

 

安彦良和の古代史漫画シリーズです。

安彦良和の作品は、すごく画に躍動感があって、戦いのシーンもすごく迫力があって面白いです。

ほとんど伝説でしかないようなこの時代の人物やエピソードを、もしかしたらこうだったんじゃないか…という風に独自の解釈でストーリーにするところはほんとに見事です。

 

ただ、今回の話はちょっとかわいそうな人が多かったな…という印象でした。

 

まず、主人公のツノミがちょっとかわいそう…。

どこへ行ってもよそ者扱いというか。

挙句に、敬愛していたイワレヒコの妻を結果的に横取りしたような形になっちゃって、イワレヒコとも仲違いせざるを得ない状況になっちゃって。

最終的には和解はするんですけどね。

なんかかわいそうだな~っていう…。

 

そのイワレヒコもかわいそう。

日向の国でアビラツヒメと結婚して、子どもも生まれて幸せに暮らしていたのに、政略結婚のために家族と引き裂かれて纒向に行かなければならなくなって。

しかも、何度も危ない目に遭って死にかけながらようやく纒向にたどり着いたのに、政略結婚してみたら妻のミトシをツノミに寝取られたような形になってしまうという…(*_*)

なんのためにここまで来たんだって思ったでしょうに…。

でも、最終的には広いココロでツノミを許して和解して、自分は纒向の地を治めることを天から与えられた仕事って思うに至るんだけど、その心持ちが崇高過ぎて立派過ぎて泣けてくる(涙)

よくそこまで悟れたなっていう。

イワレヒコは、ものすごく高潔で崇高な人として描かれてます。

 

あと、イワレヒコの妻のアビラツヒメもかわいそう。

ちょっと性格悪そうだけど…(^_^;)

一方的に夫のイワレヒコを奪われて。

そりゃあ納得できないでしょうね。

最後は幼い娘を残して自殺してしまうので、あまりにも不憫です。

イワレヒコも、もしその事実をしったら嘆き悲しむでしょうね。

この時代、一度妻子と別れたら、もう生きて会える保障なんて無かったでしょうからね。

連絡手段も無いし。

 

それから、ツッコミどころとしては、ツノミの父親のナムジ。

邪馬台国が自分の住む島に攻めてきたら、あっさりと(そのように見える)降伏して自分は入水して命を絶つとか。

ちょっとあんまりひどくない??って感じでした。

自分は死んじゃえばいいけど、残された妻と子どもはどうなるの?っていう。

残された方が大変な運命をしょわされて辛いんだからね!!

まだ応戦して力尽きて入水するっていうのならわかるけど、どうしてそんなにあっさり降伏しちゃったの?って思います。

そこはちょっと納得できませんでした。

 

ツノミも、イワレヒコから奪ってしまったとはいえ、ミトシと結ばれてささやかな家庭を持って、せっかくようやく幸せになれたのに、最後は死んで物語は終わります。

安彦良和の話は主人公が死んで終わるっていうのがすごく多いです。

安彦先生の美学なんでしょうか…??