がんにより渓太郎を亡くした私には、誰にも言えないままずっと、自分を規制してきたことがある。

 

 

―――「私は、がん患者さんに近づきすぎてはいけない」

 

 

 

懸命に治療をし、生きる希望を胸に闘病されている方にとって、我が子を亡くした私の存在はその希望に陰りを作ったり、前向きな気持ちの足を引っ張ったりするだろうと思っていたからだ。

 

がん患者さんの前に行くと、渓太郎の付き添い看護中にずっと思い続けた「お母さんは渓ちゃんの苦しみをわかってあげられていないよね…。本当にごめんね」という思いが蘇り、わずかに身をひそめる自分が確かにいた。

 

延命治療を強いてしまった私は、渓太郎に与えた苦しみをわかりたくて、「いつかは私も同じ病気に・・・」と願っていた時期も、結構長い。

 

 

しかし。

 

私の人生において、小児がん病棟で一緒に闘病していた子どもたちが自分の師であったように、がん患者さんは私にとってたくさんのことを教えてくれる師であり、同じ病気の方同士の交流をそっと傍らで拝見しているだけで勇気をいただいたり、計り知れないほどの温もりをいただいたりしてきたのだから、「近づきすぎてはいけない」と自分に言い聞かせるのは、とてもつらく切ないことでもあった。

 

 

 

―――そんなある日。

 

 

がんを患われた同年代の女性から「お話がしたい」とご連絡をいただき、それから数週間後にカフェで一緒にお茶をする約束を交わした。

 

 

当日、店員さんに案内された席に座った私は、まず初めにこんなことを伝えた。

 

 

「がん患者さんがどれほど大変な思いをされているのか、私はわかっていなくて…。息子は抗がん剤の苦しみや痛みやも経験しているけれど、私はなにも経験していないから…」

 

 

この言葉は、私が彼女に近づきすぎないようにするため規制線だった。

 

自分の無理解が本当に、本当に、本当に怖かった。

 

 

 

しかし、次の瞬間。

 

彼女の口から思わぬ返事が返ってきた。

 

 

「私は、自分の子どもががんになる方がよっぽど怖いし、苦しいです。がんを経験したから、本当にそう思う。そんなの、もう・・・全然想像もできない・・・」と言って、両耳を塞ぐように頭を抱えて、首を左右に振った。

 

 

(計り知れないほど大変な思いをされているはずなのに、私のことをそんなふうに思ってくれていたなんて・・・)

 

少し呆然とする私に、その方は続けてこう言った。

 

「美幸さんの経験を想像するとね。『がんになるのが自分で良かった』と思うほどですよ」と。

 

 

彼女の言葉は決して私をフォローするためではなく、深い苦しみや葛藤を経験されたからこそ持たれている視野の広さと想像力の深さから溢れたものだと感じたのだ。

 

 

 

実はこのできごとは、私の心に新たな温もりを注ぎ続けてくれるきっかけにもなった。

 

 

その後も私は、がん患者さんや子どもを亡くしたお母さん方とお話をする機会をたくさんいただいてきたのだけれど、その中で、「がん患者さんご本人」「がん患者ご家族」の関係は、「ご本人」が「家族」を想い、「ご家族」が「ご本人」を想う・・・というのは確かにそうなのだけれど、実はそれだけでない。

 

一方の立場から、もう一方の立場を想う気持ちは家族間をゆうに超え、老若男女、会ったことがあるとかないとか、どこに住んでいるとか・・・そう言った条件をすべて超えて、お互いがお互いを想い合っているの場面を幾度となく見せていただいてきた。

 

以前ブログで書いた、大阪で行われた私の講演会に終末期の患者さんが参加してくださったときもそう・・・。

 

 

 

 

その方が「私がいなくなっても、家族は幸せに生きてくれるんですね。中村さんの笑顔が見れて、安心しました」と言ってくれた時の微笑みの中には、きっと、家族に対する想いだけでなく、私に対する心配や労いも含まれていたのだろうことを感じるのだ。

 

 

なん万年も前から人の「いのち」は繋がり続けている。

 

こうして繋がり続けるためには、まずは心の繋がりが必要不可欠だったのだろうことを、がん患者さんが私に教えてくれる。

 

(お母さん、大切なことを教えてもらったね!ヨシヨシ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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