「ねえ、お母さん。
せっかく来たんだから、送らなきゃいいじゃん。
なんで送っちゃうの?」
火の灯った提灯を持ちながら
そう私に訊くムスコ。
(うん・・・。
送っても、どこにもいかないんだけどね・・・。)
と思いつつ私は、
「だってさ。
もしも、むこうの世界の方がいい場所だったらどうする?」
と答えると、
「あっ、そうか・・・。」
と言って、ムスコはまたお墓に向かって歩きだした。
そして、しばらくして
「それならしかたないね。
お兄ちゃん、帰してあげなきゃね。 お母さん。」
と言ったのを聞いたとき・・・
ムスコが本当に知りたかったのは
「なぜ、お兄ちゃんを送ってしまうのか」
ではないのだと気がついた。
ムスコが本当に知りたかったのは
「どうしたら、
お兄ちゃんを失った母のさみしさを埋められるのか・・・。」
なにげない言葉の中にも
計り知れないほど深い愛があるんだな・・・。
(話をしながら歩いていたら、提灯が燃えてしまいました 汗)