「なんでいなくなっちゃったの・・・」


「どうして私より先に死んじゃったの・・・」




意識がどんどんと遠のいて、


暗くて深い宇宙の中に引き込まれるような感覚に陥ったのは


渓太郎が亡くなって3、4日たった時からだった。





真っ暗な空間の中で何度問いかけても


その答えは聞こえるはずもなく


その代わりに


私の胸を突き刺すかのようにはっきり見えるのは


「渓太郎はもういない」


という事実。






私の目の前に映る


灰になった渓太郎が入れられた


小さな箱・・・





その事実を覆そうとするかのように


心の中に映る


渓太郎の笑顔




「もう一回でいいから、話したい・・・」



「抱っこがしたい・・・もう一回でいいから・・・。」






「きゃっきゃ」  と言うかわいい笑い声や


何度もつないだ小さな手


ふわふわの産毛もO脚の足も・・・


もうないとわかっているのに


必死になって求めたとき・・・




ふっとこぼれたいつもの言葉





「渓ちゃん、渓ちゃん、大好きよ。」




「渓ちゃん、渓ちゃん、かわいいね。」






渓太郎がいた頃と少しも変わらず残る私の感情





生まれる前と死んだあと・・・




どちらにも渓太郎はいないけど






生まれる前は知らなかった愛おしさが


いなくなったあとも永遠に残った





本当に大切なものは、いつだって目に見えない





渓太郎は私に残してくれたのだ。


肉体よりもずっとずっと大切なものを・・・。