「これ、お母さんの本?


押入れの中に入っていたけど・・・。」




部屋の片付けをしていた息子が

差し出した。




「(あ・・・この本・・・)

ありがとう。 そう、お母さんの・・・。 」





17年ぶりの再会。






渓太郎がなくなったとき、

私が必死に探した答え。





「人が死ぬって、どういう事なんだろう。」



「渓太郎は今、どこにいるんだろう。」



「また会えるのか。会えないのか。」






その答えが書いてある気がして

渓太郎を亡くした直後に買った本。





だけど





私はこの本を読んだ記憶がない。






(どうして読まなかったんだろう・・・)







そう思いながら、


少しだけ怖い気持ちをおさえて


本を開いた。









すると・・・







その理由がすぐにわかった。





その本の一番最初に書かれていた言葉。





『地球に生まれてきて、与えられた宿題をぜんぶすませたら、


もう、体をぬぎ捨てていいのよ。


からだはそこから蝶が飛び立つさなぎみたいに、


たましいをつつんでいる殻なの。


ときがきたら、からだを手ばなしてもいいわ。


そしたら、


痛さからも、怖さからや心配からも自由になるの。


神さまのお家に帰っていく、


とてもきれいな蝶のように自由に・・・



                  ーがんの子どもへの手紙から』 









いつの間にか


当時の自分に向かってつぶやいていた。







それ以上読む必要がなかったんだね。


ほっとしたね。


「渓太郎が自由になったのなら、


さみしくても乗り越えよう。」


そう思うことができたんだね。











もうひとりの私への愛おしさが



次から次へと溢れ出して



涙が止まらない。





すると


心の中に住む私がつぶやいた。





「もう寂しくないよ。」






その時わかった。



今でもがんばり続ける自分がいるのだと・・・。




本 

「人生は廻る輪のように」エリザベス・キューブラー・ロス(角川書店)より抜粋