私は、4~5年前になりますが、
乳癌の中でも少数派の、タチの悪い
HER2タイプ
(ホルモン陰性~私は非反応~、HER2陽性)
初診で局所進行のステージ3C
の乳癌を、
標準治療の集学的治療
(術前抗がん剤 アンスラ→タキサン+ハーセプチン
→手術 全摘+レベル2までの腋窩リンパ節郭清
→放射線照射 胸骨傍を含む胸壁+鎖骨上
→術後ハーセプチン、術前と合わせて1年)
で治療し、
私の乳癌に対してできる、
当時の最大限、最良と考えられていた治療
(その後も医学、医療、治療は進歩しています)
の恩恵にあずかったと感謝している
一乳癌罹患者として、
ピンクリボン月間にちなんで、
ブログを書いています。
先のいくつかの記事で、乳癌治療の歴史
▼ハルステッド理論→フィッシャー理論
↑こちらの記事もよろしければご覧ください。
(リンク貼っておきました)
手術でどんなに広く乳房領域を
切り取っても、再発転移率をそれほど
減らせなかったことから、
乳管(に出来るのが90%、他に小葉など)
から浸潤して、比較的早い、小さなうち
から、リンパ管や静脈に流れ(微小転移)
それが遠隔臓器で成長して遠隔転移
となる乳癌があることが分かってきて
手術は縮小し、微小転移撲滅目的の
放射線や全身療法である薬物療法を
組み合わせた集学的治療が行われる
現在の治療に変わってきたこと
▼ホルモン受容体とHER2タンパクの
発現有無で分類した
サブタイプ別の治療へ
↑こちらの記事もよろしければご覧ください。
(リンク貼っておきました)
転移しやすいタチの悪い乳癌かどうかは
癌の顔つき(グレードで表す)で予測でき
顔つきの悪い乳癌は
ホルモン陰性、HER2陽性の
可能性が高い。
以前は、
癌がどれだけ大きく成長しているか(T)、
リンパ節にどれだけ転移しているか(N)
遠隔臓器に転移しているか(M)
といった、癌の進行度合い
すなわち、ステージだけで
必要な治療、特に抗がん剤治療の要否
を判断していたようですが、
タチの悪さ、すなわち、転移するリスク
(転移する可能性)の高さを判断する指標
として、
また、治療が効く可能性を判断する
指標として、
ホルモン受容体とHER2タンパクの
発現有無という、
乳癌の生物学的特性を診て、
組み合わせで大きく4つのグループに
分けられますよね、
(それをサブタイプと呼んで)、
そのサブタイプとステージによって
どこまで治療をしなければならないかや
微小転移撲滅のために、どの薬物療法を
するか、を判断する
現在の治療に変わったこと
▼HER2陽性の治療の進歩
当然、タチの悪い因子である
HER2をターゲットにした治療の
研究・開発は進んできており、
今のところ
・1stライン ハーセプチン+パージェタ
・2ndライン カドサイラ
(ハーセプチンに殺細胞性抗がん剤を
くっつけた抗体薬物複合体ADC)
・3rdラインや脳転移のある場合
ラパチニブ+殺細胞性抗がん剤ゼローダ
(低分子チロシンキナーゼ阻害薬。小さいから
関門をくぐって脳まで届くと言われています。
またHER2だけじゃなくHER1も阻害。)
~3rdライン以降は、
ハーセプチン+パージェタ
+殺細胞性抗がん剤 の、
殺細胞性抗がん剤を変えていく治療を
されている方々も多くお見受けします。
3rdラインの治療選択と効果が臨床研究
(統計解析)されているようです。
開発中なのが
・抗体薬物複合体(ADC)のDS-8201など
※最近、薬事申請された
・作用の仕方が違う(CD16Aに作用)
抗HER2キメラ抗体margetuximab
・HER2だけじゃなく、HER1,4も阻害する
チロシンキナーゼ阻害薬 ネラチニブ 経口
・副作用が軽いんじゃないかといわれている
チロシンキナーゼ阻害薬tucatinib 経口
※サンアントニオ2019で2相試験の結果が
発表されるらしい
など
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▼新ターゲットの発見と治療開発
抗HER2薬の開発と並行して、
今までは、ホルモン受容体とHER2タンパク
の2つの因子しか、治療のターゲットがなく
タチの悪いと言われていたホルモン陰性
(HER2陰性) いわゆるトリネガですが、
他の因子と、それをターゲットにした
治療開発が急速に進んできています。
●遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HOBC)
BRCA1,2の遺伝子異常 に対する
リムパーザ(オラパリブ)
※トリネガだけじゃなく、
ホルモン陽性も対象。
●PD-L1に対する抗体薬物複合体
いわゆる、免疫チェックポイント阻害剤
・テセントリク(アテゾリズマブ)が
つい先日、PD-L1陽性の手術不能トリネガ
乳癌に適応が拡大されました。
※乳癌プラザ(江戸川病院)の田澤先生情報
によると、陽性率はトリネガの40%
らしいです。
術後補助療法(アジュバンド)も
第3相試験中で2021年申請予定とのこと。
HER2陽性の術前療法でも、抗HER2薬
との併用の臨床試験が開始されています。
・PD-1抗体のキイトルーダも第3相試験中
なお、キイトルーダは昨年末に癌腫横断で
MSI-Highのラストライン(標準治療のない
患者)として認可されています。
HER2陽性にもDS-8201との併用の
臨床試験が開始されています。
●PI3K/AKT阻害薬
・ipatasertib、capivasertibも
来年申請予定のようです。
・トリネガだけじゃなく、
ホルモン陽性/HER2陰性で
フェソロデックス(フルベストラント)併用
でよい結果が出ている模様。
割合的にはタチの悪い乳癌が少ない、
予後が良いと言われている
ホルモン陽性、HER2陰性乳癌でも、
再発転移する乳癌はあり、
分子標的薬が開発され、最近認可されて
使われ始めています。
●ホルモン陽性乳癌へのCDK4,6阻害剤
・イブランス(パルボシクリブ)
・ベージニオ(アベマシクリブ)
・リボシクリブ 日本では未承認
というように、
新しいターゲット因子と、
治療が次々に開発されてきており、
共存していけば、その先に寛解もあるかも
しれないし、癌で死なない、
そういう時代が近づいてきている、
と、
さらなる医学、治療、医療の進歩に
期待しています。
私は一乳癌罹患者でしかないので、
他癌腫のことはよく分かりませんが、
同じように、ターゲット治療の開発が
進んできていて、
遺伝子検査の解析によって、
さらに、治療の開発が進み、
治療の恩恵にあずかる癌患者が増えることを
願い、祈っています。
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