Sous le ciel de Paris スール シエル ド パリ 【パリの空の下⠀】② | 美夕の徒然日記。

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フランソワーズに逢いたい…。

その気持ちはジョーの胸の中で次第に大きくなっていった。
それは今まで抑えて来た気持ちだったかも知れない。

「 それで、このモナコGPが終わったらどうするつもりだ?
確か、パリ・オペラ座バレエの公演…ジゼルとか言ったな。明日、初日の筈だ。もちろん、主役はフランソワーズだ。」


そうジェットはジョーに言葉を掛ける。
ジョーはジェットにそう教えられ、気持ちが昂るのを覚え、どうする事も出来なくなっていた。
  
「 明日、パリ・オペラ座バレエの…。フランソワーズが主役か…。」

そっとジョーは呟く様に言った。
フランソワーズの名前を口にした時、彼女に逢いたい…そんな衝動に彼は駆られた。そして何よりも、フランソワーズの相手役のパートナーの存在が心に引っかかった。嫉妬にも似た感情がジョーの心の中で生まれていた。


「 ジョー…。顔色が変わったな…。やはり、フランソワーズのパートナーという男の存在が気に掛かるんだな…?」

 ジェットはジョーの顔色が変わったのを一瞬でも逃さなかった。それだけでなく、ジョーがフランソワーズのパートナーの男性に嫉妬にも似た感情を抱き始めていることも、ジェットは気づいていたのだ。

「 ジェット…それは。」

ジェットに自分の気持ちを見透かされ、ジョーは返す言葉が見つからなかった。
  確かにジェットの言う通りだった。顔も知らないフランソワーズのパートナーである男性に、ジョーは複雑な気持ちを抱き始めていた。
単なる噂なのだと、彼はそう自分に言い聞かせるも、不安な気持ちを否定することが出来なかった。
  噂を確かめたい…。
そうジョーは思った。最早、フランソワーズの前に姿を現す事に躊躇う気持ちを、ジョーはこの時忘れかけていた。

「 どうやら、お前は本気でフランソワーズの事を…。」

ぽつりと呟く様にジェットは言う。
 予感は的中していると、ジェットは確信した。
そう思った瞬間、ジェットは改めて思い知らされるのだった。
…ジョーにはとても敵わないのだと。
そう。ジェットも又、フランソワーズに想いを寄せていた。
けれども、フランソワーズがジョーに惹かれて居る事を知った時点で彼は諦めていた。
ジョーもフランソワーズに惹かれ、互いに口には出さなかったものの、強く固い絆で結ばれて居ることを否応なしに思い知らされたからだ。
 けれども ジェットはフランソワーズが幸せにさえなってくれれば、それで良かった。そう自分に言い聞かせて来た。
 それだけに、ジェットはジョーの取ってきた態度がもどかしく思えた。例え、フランソワーズの幸せの為にとは言え、ジョーはずっとフランソワーズに逢おうとはしなかったのだ。

「 …ったくよ。フランソワーズの噂を知らなかったら、お前の気持ちは変わらなかっただろうよ。
このままずっと、自分の気持ちを抑えて過ごすつもりだったんだろうが、そうはいかなくなったと思っているな?ジョー…。」

 
「 ああ…ジェット…!確かに君の言う通りだ。
今まで僕はフランソワーズのために良かれと思ってパリに逢いに行こうとはしなかった。
それが正しいと思っていたよ。
君の言う通り、フランソワーズとパートナーである男性の噂を君から聞いて、正直言って打ちのめされそうになったよ。ただの噂に過ぎない…ただのパートナーに過ぎない…
そう思いたい一方で、気持ちが揺れ動いているのは事実だ。」

 今まであまり話そうとはしなかったジョーだった。けれどもとうとう彼は本音を吐露してしまったのだ。
  
「 ふ…やっと本音を吐いたか…。
だいたいお前は優柔不断でオマケに優し過ぎる。
その優しさが逆にフランソワーズを傷付ける事になるかも知れないんだぜ。
…手遅れにならない内に、フランソワーズに逢いに行くんだな、ジョー。」

「手遅れって…ジェット?」

ジェットに言われ、ジョーの顔色が一瞬変わった。会ったことも無い、フランソワーズのパートナー…。その男性にフランソワーズを…?
ジョーの心に不安が過ぎった。
 
「 ふふ…。冗談だ。まさかフランソワーズに限ってそんな事はないと思うが…。しかし、万が一と言う事もある…。
さっさと行動を起こさねえと…相手役の男どころか、この俺も…フランソワーズに…」

 ジェットはつい口を滑らせてしまう。
 ジョーはジェット言葉に驚いたが、もしやと思い
彼の顔を見つめた。

「  ジェット…?君はまさか…フランソワーズを…。」


 驚きながら見つめるジョーに、ジェットは思わず苦笑いを浮かべる。
自分のフランソワーズへの想いは誰にも知られたくはなかった。
もちろん、ジョーにもだ。
 それなのにその想いをジョーに知られてしまったのだから、ジェットは口を滑らせてしまった事を酷く後悔した。

「 俺とした事が…うっかりしたな。
フランソワーズへの想いは誰にも知られたくはなかった。増してやお前には特にな。
確かに俺はフランソワーズに惚れている。
だが彼女がお前に惚れている事を知った時にとうに諦めてる。
俺はいいんだよ…。フランソワーズさえ幸せになってくれれば…。」

そう話すと、ジェットは少し寂しげに笑う。
  
「 ジェット…君って人は…。」

初めてジェットのフランソワーズへの気持ちを聞いたジョー。
ジェットはフランソワーズの幸せを願い、彼女への想いを諦めていた事を知り、少し複雑な気持ちになっていた。そして思った。
ジェットの気持ちに報いる為にも、フランソワーズを幸せにしなければと…。

「 俺の言いたい事は、フランソワーズに悲しい想いをさせるな…って言うことだ。
きっと彼女は心密かに、お前を待っているはずだ。だから…このレースが終わったら、なるべく早くパリに行くことだな、ジョー。」

 そう言ってジェットはジョーの肩を強く叩いた。
そして思い出した様に腕時計を覗く…。

「 さてと…そろそろ時間だな。
ジョー…。フランソワーズの事はお前に譲るが、
このレースだけは譲れねえ。」

ふふ…とジェットは皮肉っぽい笑みを残し、
自分のマシンが待っているピットに戻って行った。

「 ジェット…僕も負けはしない。優勝を飾り、
フランソワーズに逢いに行く…。」

 そうジョーはそっと呟くと、彼も又、チームメイトが待っているピットに戻って行った。
フランソワーズの面影を抱きながら…。


続く…