フランソワーズの左手の薬指に指輪を嵌めながら、ジョーはその言葉を伝えた。
その言葉はフランソワーズの心に染み入り、彼女の胸を熱くした。
「 ジョー…あたし…」
薬指に嵌められた指輪を見たあと、フランソワーズは手に抱えていたダーズンローズの薔薇の花束に視線を移す…。
今日と言う日は何と幸せな日だったのだろう、そうフランソワーズは思う。
ダーズンローズとガーネットのエンゲージリング…。その両方をジョーから贈られ、これ以上の幸せはないと、フランソワーズは思う。
そしてそれ以上に嬉しかったのはやはり、今告げられたジョーの言葉だったのだ。
熱いものが込み上げてくるのを、フランソワーズは堪えた。涙は禁物だと、そう思った。
けれどもとうとう堪えきれなくなり、フランソワーズは涙を流した…。
その涙は彼女の頬を伝っていった。
「 フランソワーズ…。」
ジョーはフランソワーズの身体を抱き寄せると涙が伝う彼女の頬にそっと口付けた。
「 どんな事があろうと、君を守って行くから…。」
「 いつも、あなたの傍に居るわ…。そう、ずっと…。」
ジョーの優しい腕の中で夢心地でフランソワーズは呟く様に言った。
そうしながら、フランソワーズは思う。
たとえどんな事があろうと、決してジョーの傍を離れまいと…。
「 あなたが好きよ、ジョー。心から愛しているわ…。」
そう言った後、フランソワーズは静かに目を閉じ、その時 ゛を待った…。
「 心から…愛している…。」
囁く様に言うと、ジョーはフランソワーズの頬から唇を離すと、彼女の唇にそっと口付けた…。
ジョーからの口付けを受けた瞬間、フランソワーズの閉じた目蓋から再び涙が…。
ジョーとフランソワーズは互いを慈しむ様に口付けを交わした。
二人にとってそれは初めての口付け…。
フランソワーズはこの上ない幸福感に包まれるのだった。
そして…。
初めて口付けを交わした二人は、寄り添い、再びセーヌの河岸を歩きだした。
街頭に照らされているセーヌ河はもとより、
遠くに見えているエッフェル塔も、全て美しく、
その光景はフランソワーズの心を大きく捉えた。
いつも見慣れている光景だったが、今夜は特別に綺麗だと、フランソワーズは思った。
それはきっと愛する人と共に過ごしているからなのだと、彼女はあらためて思う。
「 この夜景を見るのも、今夜が最後なのね…。」
そっとフランソワーズは呟く。
感慨深げに、彼女はセーヌ河とそしてエッフェル塔を見つめた。そうしながら、一抹の寂しさを感じずには居られなかった。
「 新婚旅行は君の故郷である、この街に来よう…。」
フランソワーズの気持ちを察したジョーはそう彼女に言った。
「 ジョー…!ありがとう…。」
フランソワーズにはジョーのこの優しさが心から
嬉しいと思った。
「 早く、君の花嫁姿が見てみたいな、フランソワーズ。」
少し照れ臭そうにジョーは言う。
それはジョーの心からの願いだったのだ。
「 ジョーったら…!んふふ!」
頬を赤らめるフランソワーズもまた、ジョーと同じ思いだった。
1日でも早く、ジョーの為にウエディングドレスを着てみたいと、彼女は心から思う。
そして、遠く離れた日本に居るギルモアに、フランソワーズは思いを馳せた。
誰よりも幸せを願ってくれたギルモア…。
その彼にも、花嫁姿を見せたい、そうフランソワーズは思った。
「 きっと幸せになるわ…。あなたが傍に居るから…。」
ジョーの腕に自分の腕を絡め、フランソワーズは彼にそっと寄り添う。
そして心に思い描き、願う…。
平和な日々がずっと続きますようにと…。
Fin…