イギリスはヨークシャーで行われたロード世界選手権。

寒さと雨が降る中、コースを短縮しての開催となった。

 

今年もスピードチャンネルにて、ロード世界選手権の解説をさせて頂きました。

 

スタートから集団は速いペースでライン区間を進む。

アタックがなかなか決まらない中、キンタナ、ブエルタの勝者ログリッチェ、

ジロの優勝者カラパスなど、普段はエースとして走る選手の逃げが決まり、

集団は最大でも4分台で逃げを容認。

そんな速いレースが進む中、前半はパンクが多かった。

エース級の選手達がパンクに見舞われながらも、集団へ戻っていく。

U23で失格になったエークホフの影響もあってか、チームカーの隊列にあまり居続けないで、

素早く車列をパスしていっているようにも見えた。

UCIの審判によってその判断は違うため、今回は気をつけているようだ。

 

レース序盤からもうひとつ気になったのは、

選手がウインドブレーカーを取りに行く回数が多かったこと。

雨が止むとジャージの前を開けて走る選手もいて、服選びが難しそうに感じた。

チームカーに戻しては、雨が降ってくるとまた取りに行く。

寒さとの戦いでもあるレースになっていることは一目瞭然だった。

選手によっては、ウエットスーツ生地のグローブを使っている選手もいれば、

半指グローブをつけている選手もいる。

ロード選手は意外と寒さへの耐性が低く、全く走れなくなってしまう選手もいる。

かくいう僕もその一人。

体がこわばり、僧帽筋が痛くなり、ガタガタいう歯が止まらなくなってきてしまう。

 

そんなレース、残り30kmを残してヴァンデルプールがアタックした。

ここについていけなかった選手は、いけなかったのだろう。

優勝候補の一人であるファンデルプールにとって、ゴールまでの距離は得意な距離。

そして、この雨の状態だと周回コースの下りとコーナーはほぼ同じスピードで集団と逃げグループが走るため、

差を埋めるには上り坂しかなく、上りでエース級が動いたらその動きを見極め、危ない場合は絶対に逃してはいけない。

 

残り1周でヴァンデルプールが失速。

トレンティン、モスコンの2名がいるイタリアが優位に見えるが、

モスコンがすでに体力の限界に達しているので、機関車役としてしか使えない。

キュング、ペデルセンは後ろとのタイム差を見ながらモスコンのスピードで進んでいく。

逃げ切りが決まった時、ダビデ・カッサーニ監督が

「後ろの集団は終わった。このレースはお前達のレースだ!」と叫んだ。

 

トレンティンにとっては最大のライバル・ファンデルプールがいなくなった今、

ペデルセンを抑えればキュングのアタックを警戒するだけで勝つ可能性が高い。

残り距離を残してキュングは表彰台を狙っているかのような走りで、

置き去りにしたモスコンに追いつかれない様にペースをあげていた。

それでも上りでは他の2名を置き去りにするかのようにペースを上げるも、

後輪からトレンティンが離れることはなかった。

ペデルセンは、独走力があるためキュング以上にアタックを警戒しなければならない。

モスコンが遅れたことで、追いついてくるのを待つという大義ができたトレンティンは

他の2名よりも先頭で引く時間が短い。

その分ライバルのアタックを警戒しながら進めることができた。

 

残り500m牽制が始まり、ゆっくりとしたペースで進んでいく。

高速でのスプリントと違い、加速してトップスピードに上げるためには

60mから100mの距離を必要とするスロースプリント。

加速のコツは後半に向けて上げていくこと。

トップスピードを維持してしまうと、後ろにつかれて抜かれる率が上がるので、

最高速あたりでの駆け引きをできる余裕を持てると、

相手の加速に合わせてスピードの上下させれば対応できる。

しかし、世界選手権最後のスプリント駆け出しこそ勢いよく踏んだトレンティンだったが、

もう2回くらい加速していかなければならない所で止まってしまった。

ゴール後ペデルセンのインタビューにあった「足の痛みが消えた」とは正反対に、

足が鉛のように重くなったトレンティンが2位、3位にはキュングが入った。

 

ペデルセンは直前のGPイズベルグに優勝してはいるが、

周回コースはクリテリウムのようなコース。

世界選手権に活躍できるだけの要素が少ないが、この日も雨の中の勝利だった。

北欧の選手は寒さに強い特性があるが、全ての選手に当てはまるわけではない。

しかし、今年の世界選手権の寒さは尋常ではなかった。

コンディションは勿論のこと、コースの特性、天候といった3つの要素を

味方につけられた選手が残ったレースになった。

マッズ・ペデルセン思いきりの良い特徴のある走りが、

このチャンスを機会に更に強さを増すことを期待したい。