昨夜は、八日間にわたり開催されたロード世界選手権・インスブルック大会の最終日を飾った男子ロードレースの解説をさせて頂きました。

距離258km、獲得標高差4,681m、6時間46分41秒にも及んだ死闘のレースでした。

 

スタート後、アタック合戦は思ったよりも続かず、230kmを残して前に逃げたのは以下の通り:

 

Robert Britton (Canada)

Tobias Ludvigsson (Sweden)

Kasper Asgreen (Denmark)

Ryan Mullen (Ireland)

Daniil Fominykh (Kazakhstan)

Vegard Stake Laengen (Norway)

Ryan Mullen (Ireland)

Karel Hnik (Czech Republic)

Jacques Janse Van Rensburg (South Africa)

Ilia Koshevoy (Belarus)

Laurent Didier (Luxembourg)

 

集団はアラフィリップ率いるフランスが牽く中、地元のジャック・ヘイグ率いるオーストリアが前を固め、ログリッチ、モホリッチ率いるスロベニアが続く。

優勝候補は、アラフィリップ、バルデ、バルベルデ、ニーバリ、デュムラン、モレマが有力どころ。

先頭集団は着実にメイン集団との差を広げ、インスブルックの街へと進む。

 

今回、日本からは中根選手が単独で参加。

直前の9月19日に行われたGiro della Toscana では18位と健闘し、今回のレースも山岳の力を発揮できれば良い順位でゴールができるはずだ。

監督の浅田氏も30位を目標にレースをスタートする。

集団内では一人で位置取りをしなければならない事が心配されるが、前半の周回では集団前方を走り、体調の良さを見せてくれていた。

120kmを過ぎて集団後方を走っていた有力選手たちが前に上がる動きの中で、前に上がれず逆に集団後方に位置を落としてしまったのが良くなかった。

イーグルスの上りから下り、街中を通る狭い路地で後ろに下がってしまったことで、コーナーを過ぎた立ち上がりでは最後尾で苦しい展開になり、そのままイーグルスの上りへと入っていく。

1回目のふるい落としで最後尾になってしまった中根選手はなんとか集団後方で粘りの走りをするが、さらに集団から遅れてしまった。

 

レースは大きな動きを見せないまま、残り2周あたりからイタリア、スペイン、オランダが集団のペースをあげようとアタックを繰り返すが、最終周回で飛び出したバルグレン以外は集団に吸収されて最後の上り、地獄の峠で知られるグラマートボーデンに入っていく。

ここで集団前方を固めたイタリア、スペイン、フランス、がペースを上げていく。優勝候補のアラフィリップもバルベルデもこの位置に、誰が頭1つ抜け出すか!という展開の中前に残ったのはバルベルデ・ウッズ・バルデ・モスコンだった。

デュムラン、アラフィリップが遅れる中、モスコンも遅れ、アラフィリップも完全にこの上りでストップ。

デュムランのみ自分のペースを守り、モスコンをかわして唯一戦闘集団に追いついた。

 

こうなると、バルベルデのスプリント勝利はほぼ確実なものと思われるが、ほかの選手がアタックを仕掛けたい4対1の展開はバルベルデにとって良いものとは言えない。

バルベルデにとって追い風があるとすれば、下り切った後はほぼゴールまで距離がないことだった。

ライバルにアタックを仕掛けさせないよう、残り1.3kmからは決して先頭を譲らなかった。

自らが先頭を牽き、後ろを牽制しながら、アタックがあればすぐに反応できるように作戦を変更。

こうなると他の選手は蛇に睨まれたカエル状態だ。

それでもゴールラインを切るまでは油断できない。

後ろから追いついてくる選手もいるかもしれない。

ペースを一気に落とすことはできない中、スプリントできる最低限のペースを保ちながらゴール前を迎える。

 

スプリントを仕掛けた場所は意外にも遠かった。

普通にスプリントをしたら圧勝できるライバル勢に最後は横に並ばれそうになりながらも、最終的にスプリントとしては圧勝でのゴールとなった。

 

ゴール後、これまで数多くの難レースを制してきたバルベルデが泣き崩れた。

まるで初勝利をものにした新人選手のように。

選手にとって喜びとは、若手/ベテランという枠を超えた何にも変えがたい気持ちの高まりこそが、この難しい競技における全てのゴールなのだろう。

 

心からおめでとう!の声を送りたいと共に、2019年の活躍にも期待したいところだ。