朝のナポリの町を見ることもなく、気が付いた時には昼に近い時間だった。
思いのほか疲れがあったのか、長く深い睡眠を取ったようだ。

昨日は色々な事があった。
そして、今日はどんな事があるんだろう・・・・?

そんな気持ちで朝ご飯を・・・って イヤ、もう朝食終ってるし。  
昨日のPIZZAがお腹に残ってるし・・・・。

さて、自転車に乗る用意をしてまずはカフェ~
朝、1杯のコーヒーは目を覚ますのに十分な刺激!エスプレッソコーヒーは 時間をかけて味わいながら楽しむドリップコーヒーとは違い、30mlというコーヒー豆のエキスをグイッと流し込んだ後の口の中に残る香りを楽しむもの。

ナポリのバールでは必ず水も一緒に出してくれる。
口に水を含み、スッキリした所でコーヒーが登場、スプーン山盛り1杯~2杯をコーヒーの淵に乗せる。この砂糖がコーヒーに入り込んで行くのを見届け、ゆっくりとスプーンを下から上へ持ち上げる。好みの甘さの回数持ち上がった所でコーヒーを流し込む。
別に飲み方があるわけではないが、各々自分の好きな飲み方があり、ある種、儀式の様なものだろう。

その後、軽いトレーニングを終え、昼食へ出かけた。

近くのオステリアへ行き、サーラのお兄さんにメニューを頼む。
すると
「うちはメニューが無いんです、何が食べたいか教えて下さい」 と。
「え?」
俺がイタリア語話せなかったらどうするんだろう??
まぁいいや。

「私達はイタリア人のように沢山食べれないけど、色々な物が食べたい。なので、ここのオススメを教えて」
と言うと、
「前菜の盛り合わせ、パスタ共に海の幸がオススメです!」と。
なるほど。まぁ、ランチは前日の残りとかをはけたい場合もあるし、この手のオーダーの取り方はあり得る。

そういえば話が横道にそれるが、大家さんのシモーネが以前ナポリ近くに仕事で来た時、サーラがこう言っていたと・・・

1日目
サーラ  「うちのクオーコは素晴らしい腕で、なんでも美味しい物を食べさせてくれる!、君たちは何が食べたいんだ?なんでも作るよ!」
サーラ  「でもね、オススメはなんといってもポモドリーニのパスタだ!、セコンドはペッシェ!今朝とれたての新鮮な魚さ!」
シモーネ  「OK、それでいこう!」

2日目
サーラ   「やぁ、今夜は素晴らしい夜だ。仕事で疲れただろう?そんな身体でも食べられる美味しいパスタを持ってくるよ!」
と言って出て来たのは ポモドリーニのパスタにペッシェのグリル。

3日目
サーラ  「今夜は何が食べたい?」
シモーネ  「2日同じ物だったから、何か違う物を・・・」
サーラ  「大丈夫!うちのシェフ自慢の料理を持ってくるさ!」
といって、出て来たのは やっぱりポモドリーニのパスタとペッシェのグリル。

そして、シモーネは3日間同じ物を食べて帰って来たとさ。
でも、この2つ今迄に食べた中で一番美味しかったんだってさ!じゃぁ良いじゃん!
と2人で笑って話した。

ん~
思い出してしまう、この話を・・・・(笑)

まぁいいか。はじめてだし1日目だし、他の事をいっても結局出てくる物が一緒かもしれないし(笑)
崇史 「あぁ、すみません、揚げ物はたくさん食べれません。」
サーラ 「OK、OK、NO~プロブレム!」
さて、お客は少ないがなかなか雰囲気の良いお店で、先客に出されたお皿も美味しそうだった。

そして、いよいよ前菜登場!


期待に応えてくれる所がイタリア人!(笑)
でもと~っても美味しい。



サーラ 「君たち、美味しいカニが入荷してるんだけどパスタに入れて良いかい?美味しいよ!」


ここは、値段がないお店。

崇史  「いくらになるの?」
サーラ  「・・・・ん、12ユーロ」

(今、一瞬つまったな~)

妻と相談して12ならと入れてもらうようお願いする。
この辺り、観光客ならどさくさにまぎれてちょっと高めのお支払いを請求されそうだ(笑)と、ちょっと考え過ぎかもしれないけど、そういった事は今迄経験済みなのでちゃんとしなければならない。
せっかく美味しい物をいただいているのに、ちょっとした事で嫌な気持ちになりたくないからね。


いやしかし、このカニ入りのパスタの美味しい事!
付け合わせのパンも美味しい!トスカーナの塩無しパンとは大違い。

もちろんドルチェなんて入る余裕は胃袋に無く、昼食は終了~。
時計を見るとちょうど14時。BARに行く時間だ!
まぁ、でもちょっとゆっくり行くぐらいがいいだろう、ここはナポリだし。

イタリアというか、ヨーロッパは予定の時間前は相手の時間。
5分前行動などすると相手に失礼なので、必ず遅れて行く。

14時5分をまわった辺りで昨日のカフェへ!
すると娘さんが座っている。
崇史  「昨日、コーヒーの入れ方教えてもらえるって聞いて来たんですけど・・・」
娘さん  「ああ、おばさんが言ってた!ちょっと待って電話してみる。・・・後10分で着くって!」
うん、流石イタリア! 色んな事がなんとなく進む。笑

そしていざコーヒーの入れ方を教えて頂く。

先生は昨日の黒人の彼。名前わすれちゃった。。。ゴメン。

一通り勉強して行ったので、聞く事はさほど多くない。しかし、コーヒーマシーンの準備や、メンテナンスまで教えてもらうとは思っていなかった(笑)
まぁ、基本的な粉の量、タンパーの使い方、レバー式コーヒーマシーンの使い方、シングル、ダブル、一通り教えてもらって納得!!



で、やって見るか?と
え?
やるの?俺が?
まさかとは思ったけど、実際入れさせてもらえるとは!
グラインド、粉を詰める、タンプ、お湯口の洗浄、カセットをはめてレバーを下ろす。
はじめて出て来たコーヒーは、、、、、80点いただきました!
悪くないよ!って
嬉しい!!!!
そして、次から次へどんどんコーヒーを入れて行く。
これはフラペチーノの様な機械に入れるから捨てないよ!って。
そして、コーヒーカップで同じ出口から出たコーヒーの味が変わる事も教えてもらった。奥が深い。

ああ、なんという幸せ。
そして、たまたま壊れたグラインダーが戻って来て、業者が設置を始めた。
なかなか見る機会がないものなので、ちょっと拝見させてもらった。
こうして1時間に及ぶコーヒーレッスンは終った。

そしてコーヒーレッスンのあとは 妻と一緒に丘の上のお城へ。
ナポリを一望できるこのお城、素晴らしい景色でした。



そしてお昼過ぎだったせいか、通りかかったレストランのクッチーナは静まり返り、嵐の前の静けさのようでした。

海辺でまったり



ナポリの犬は日本人にもなついてくれて、カワイイし



そしてやっぱり今日もPIZZAを食べにDI NAPOLIへ。

なかなかウンチクが通じる辻君が先日DA MICHELEへ行って食べてきた感想を聞いても、DI NAPOLIの方が好きかも。と言っていたので、まぁいいかな~と。
で、この時食べた2日目のPIZZAの味が全然違う。昨日と全く同じ歯ごたえと香りなのに昨日よりも美味しく感じる。慣れた??

凄いな~。ナポリPIZZAの奥深さ、そしてその地に住む人達が愛し続ける理由がそこにある事が伺える。日本ではテクニックやらレシピやらが注目されがちだ。料理の修行に来る人も色々なレストランで写真を目にする。
そして1年、2年で修行を終え日本に帰って店を開く人が多いようだ。

しかし、私はイタリアという国、これだけ地方地方の色が濃く人々もまったく違う国を伝えるってなかなか難しいと思うし、短い時間で感じる事は難しいだろうとちょっと思ってしまったりする。
否定的な言い方に聞こえたら申し訳ない、しかし、私は8年間この国に住み人々と交流し、最近ようやくイタリアのイタリアらしさが見えて来ている。
それは自転車に乗る時間以外の時間をとても大事にするようになったからかもしれない。
狭い世界で生きる事はその世界の事は色々と見えるし、経験も出来るかもしれない、しかし、歴史、文化、環境、そこで生きる人々の生活感、はもしかしたら短い時間では経験出来ないものも多い気がする。
たかが2枚目のPIZZAで分かったような事を言う気はない。
ただ、、ここで食べる人々、そしてここを紹介してくれたBARのおばさんの一言一言が このPIZZERIAがこの場所で指示されている理由を垣間みれた気がした。

そしてここに住む人々と実際交流してみて、北イタリアに住むイタリア人の持っているナポリのイメージとはちょっと違う物が見れた事も良かった。
こういった経験を北で話す事も自分の楽しみになる。


そして、、、、とうとう! 懐かしいモッツァレッラに出会った。
ミルクのジュース、歯ごたえ、ああ、17年前のあの香りだ。
嬉しいのだけど、万歳するような嬉しさではない。
しみじみ思い出し、右も左も分からないあの頃がただただ懐かしかった。

明日はナポリともお別れだ。
素晴らしい出会い、美味しい料理、人々の暖かさに触れた2日間はこうして幕を閉じた。

あ!
忘れてました。あのスプーン!

そう、コイツですよ。
ナポリではレバーを下げコーヒーが出てくる辺りでレバーを上へ戻す。
蜂蜜のようにトロ~っとしたコーヒーがカップに注がれる、ボタン式のマシーンだと止められるがレバー式は止める事が出来ないので、このコーヒーがでなくなってから提供するのではなく、出続けている最中のもっとも美味しい適量がカップに入った時にサッとコップを外してお客様に提供します。
これは最後は人の目が決める。という事ではないかな?
勝手に自分の中でそう納得しました。

そしてこのカップを取る時、スプーンで出続けているコーヒーを受け止めている間にカップを下からスッととります。
こうする事で、コーヒーカップの淵にコーヒーのよだれがつかなくなる気遣いの為です。
たかが90セントのコーヒーにこうしたナポリターニの心が入っていて、それを感じながらこの地の人との一時がとても幸せな時間を感じさせてくれます。