とても大切な人が亡くなっていたと知る。
私をずっと支えてきてくれた人だ。
本当にお世話になった。

訃報を聞いたとき、あまり驚かなかった。
やっぱりと。
それは少し前に、朝、家のレースのカーテンの裏に大きな茶色い蛾がとまっていたからだ。

こんな冬の時期に?ましてうちは階数も高いので虫はまず入ってこない。

はじめ、窓の外にいると思い、そのまま、みていたら、パタパタと動いて。
うちの中にいた。
まだ窓開けてもいないのに、どうやってうちに入ったのか。
しばらく窓側をとんで、捕まえるより外に出した方がいいなと窓を開けたところ、窓と窓の重なるところに入って飛んでいったようで、そのまま見えなくなってしまった。
誰か亡くなって乗ってきたなと思ったけれど。
あのとき挨拶にきてくれていたのか。

死を知らせるとき、カラスは誰か死んだら、同時に鳴く。
蝶や蛾は、ゆっくりとお葬式のときに現れる。
亡くなった人が女性だと大きな蝶、男性だと茶色い蛾。
鳥と昆虫、現れるときが違うのは、飛ぶ速さの違いかな。

そういえば、秋に行った広島の爆心地の近くの石碑に手を合わせたとき、手のひらほどの大きさの黒と緑の羽をした大きな蝶が私の周りをずっととんでいた。
あの蝶も、死者の魂を載せていた。

魂は生命の泉に帰ってまた生まれかわる。
その人とも、きっとまたお互い違う人として出会うだろう。それまでしばらくさようならだ。