闘う覚悟 | 宮沢たかひと Powered by Ameba

202051日、専門家会議の結論は「緊急事態宣言の延長」。

 

新型コロナウイルス感染症の感染率と死亡率が減少しない現状では、約1ヶ月間緊急事態宣言を延長し、自粛を求めるという判断は医学的に説得力あり、やむを得ないであろうと思います。

 

ただ、経済と社会へ影響についてのコメントを求められたところ、専門家会議のリーダーは「この専門家会議に、経済界を代表するメンバーが入ったほうがいいと申し入れました」、と。今の段階で、そのようなレベルであったのかと驚きました。当然、経済界の代表が当初から専門家会議に入っているものと思っていたからです。

 

この専門家会議は首相の判断を仰ぐ諮問機関のようなものですから、医療関係者以外に当然、経済学者、経済界代表、中小企業界代表、社会学者、哲学者等、社会を動かすために必要なBrain が当初から揃い、それぞれの専門家の立場から情報交換し、意見交換していなくてはいけなかったはずです。

 

私は今後一か月間の緊急事態宣言延長はやむを得ず妥当なものであると思います。将来、第2波、第3波のパンデミックに襲われる可能性は大でしょうが、未来社会では感染症との「共生」を念頭に置いた、従来と全く異なる経済活動および社会生活になることも理解できます。

 

3月からの約3か月間の自粛生活は、医療崩壊に至らないよう医療現場の物的資源と体制を充実させ、ワクチン開発と治療薬開発の始動体制を整えるための期間であると同時に、人類が感染症という脅威を学習し、新しい生き方を考察するための期間でもあると解釈しています。

 

人間は永遠に自粛することはできません。希望がなければ、生き続けることはできません。経済が崩壊し、倒産や失業が増えれば人々は自暴自棄となって人心は荒廃し、自殺が増えます。さらに、国家の税収は激減、生活保護受給者が激増し、従来の社会保障政策は立ち行かなくなり保険医療制度が崩壊します。そうなれば、脳血管障害、がん等、その他の疾患の診療もできなくなり、新型コロナウイルス感染症による医療現場崩壊だけでは済まなくなります。病院や診療所が倒産すれば、医療従事者は仕事を失い、医療崩壊にさらに拍車がかかります。日本の医療は税収入で維持されているのですから、経済崩壊で税収が減ればいずれ医療全体が死に至ります。

 

新型コロナウイルス感染症の感染率も死亡率も、“ゼロ”にはできません。もし、なんとなく“ゼロ”を目指して今後の戦略を考え、6月以降も自粛を強いるとしたら、日本の経済と社会は確実に死にます。5月末までは国民も歯を食いしばって我慢し頑張るでしょうが、6月以降の国家としての緊急事態宣言のさらなる延長には反対です。日本の経済と社会が崩壊し、後戻りできなくなります。

 

政府は、経済と社会の出口戦略をもっと明確かつ具体的に示すべきです。それは、あらゆる可能性を想定した複数の戦略であってもいいと思います。現時点で既に、都道府県知事の中には国家としての出口戦略が見えないことに不安を感じ、経済と社会の崩壊を心配し、独自の出口戦略を模索し始めています。結局、都道府県ごとに感染事情と経済事情は異なりますので、この判断と行動はやむを得ないと思います。

 

今は、近代社会に突入した人類が今後生き残っていけるか否かを問う、長期に渡る近代戦争なのです。数人の有名人が死亡し、自分自身にも死の影が近づいていることを国民はわかりかけています。政治リーダーは現実を語り、戦略を語り、死生観を含めた哲学的考察を語り、誰に生き残ってもらうのか、どのような未来を子孫に残したいのかを語り、国民を説得して感染症と闘うための心の準備と態勢をつくるよう求めるべきです。

 

そのためには、尊敬され、国民についていきたいと思わせる真の政治リーダーが必要です。同時に、遅い政治判断の元凶となっている国会を改革する良い機会になることを願っています。