技術指導医の言動 | 宮沢たかひと Powered by Ameba

久しぶりの医療モノ投稿です。
 

最近、身近の人が覚醒下で体内にカテーテルを留置する処置を受けた際に、中堅指導医は若手の医師に手取り足取り“口頭で”技術を指導していたそうです。患者さんは、練習台になっていることに対して不安を感じたようですが文句を言うわけにもいかず、じっと耐えていたとのこと。指導医から若手医師が実施するという事前の説明もなかったとのこと。

 

このようなシーンは医療技術を若手医師に教えるために、日本中の病院で起こっていることでしょう。

 

しかしながら、医師の務めは、患者さんに不安を与えずに手技を完遂し、最終的に安心感を抱いて帰ってもらうこと。いくら「指導」のためとは言え、医師教育のプロセスで患者さんに不安を与えてはいけません。

 

私も現役脳外科医の時代、覚醒下の患者さんに対して医療技術を若手医師に指導する際は、

  1. まず患者さんに、若手医師と一緒に手技を実施するが、私が責任を持つので心配しないでいいことを事前に告げる。

  2. 手技を実施中は口頭での指導は一切せず、ジェスチャーや筆記で実施する。(例えば、「違うだろー!」「そうじゃない!」「何やってんだ!」等の若手医師に対する言動は絶対禁止。若手医師にも不用意な言動を慎むよう事前に告げておく。)

  3. 若手医師が手技を実施して時間がかかり、患者さんに負担となり危険と認識したら、速やかに指導医が替わり手技を終わらせる。

以上を留意していました。

 

実は、大学病院でも「医療技術指導の仕方」や「指導時の言動のあり方」等についてはきちんと教育していません。私自身も先輩から指導されたことはありませんでした。(きちんとやっている!という大学病院出身の医師がいましたら反論してください)

 

さらに言えば、覚醒下で実施してよい手技か、入院ベッド上で実施してよい手技か、その時間帯に実施してよい手技か、サポートスタッフの体制をどうするか等の判断を間違えたために、患者さんの様態が悪化したり死亡して訴訟になった事例もあります。

 

覚醒下でなく、全身麻酔下の手術では大声で、ときには叱りながら若手医師を指導するのですが、患者さんの負担と危険を避けることは同じです。

 

どんなベテランや達人の医師も若手医師の時期があって成長していくわけですから、若手医師への医療技術教育は重要なのですが、現場では、もっと医師の言葉を聞いている患者さんの身になって指導してもいいのではないでしょうか?