2024年5月27日

 

 今回パラオの国際空港に壁画を描くということで、どのような絵がいいか色々と考えました。これまではどちらかというと壁画を一緒に描く人とその環境にフォーカスを当てて題材を考えていたのですが、今回は特に一緒に絵を描く特定の人がいるわけではありません。パラオの子供達と一緒に描くことは決まっていますが、対象の子供の顔が思い浮かばないし、空港という割とプレーンな印象の壁に描くので、どういった壁画にすべきか悩みました。

 ただ国の玄関口である空港は、その国のファーストインプレッションになるわけなので、パラオの魅力を伝える壁画である必要があると思いました。パラオの魅力といえばやはり「海」です。

 

 

 

 パラオは世界でも有数のダイバーが集まる国で、その海の美しさは世界一とも言われています。そんな美しい海を持つパラオには自然と海の生き物を絵にする文化があったようで、パラオに残る伝統的な建物「バイ」にも海の生き物がたくさん描かれています。そんなパラオ人が誇る海の豊さと美しさを絵にすべきだと思いました。

 

バイの壁画

 

 海をテーマに考えていたときに、パラオの神話について話を聞く機会がありました。パラオにも日本同様、その国の始まりのような神話があるそうです。内容は以下のようなものでした。

 

「遠い昔、海の真ん中に巨大なシャコ貝が住んでいました。そのシャコ貝の中には小さなエビのような生き物が住んでいて、ラトミカイクと呼ばれていました。ラトミカイクは海で多くの生き物を生み出し、その中には陸地にも海にも住むことができた人々が含まれていました。彼女の子供たちは海の砂を積み上げ、海の真ん中に小さな砂の島を作りました。その後、彼女は 3 人の子供を産み、そのうちの 1 人を空に住まわせました。 残りの 2 人の子供たちは小さな島に送られました。そして、その島に住んでいた二人の神の子のうちの一人がウアブでした。ウアブは生まれた時から体がとても大きく、成⻑とともに島の食料を食い尽くさんばかりでした。困り果てた村人達は相談し、彼を殺してしまうことに決めました。母親は泣きましたが、 このままでは村中の人々が死んでしまうことを考え村人達に従いました。 そして、村人達は大きな斧で彼の身体を斬りつけました。その切り離された体はそれぞれ島になり、今のパラオの起源となりました。」 (壁画に関する監修はパラオ政府文化歴史保存局にご協力いただいています)

 

 

 海から始まるこの神話をテーマに絵を描いてみようと思いました。そしてOver the Wallのシンボルである太陽を海の中に描くことでパラオの国旗をイメージさせることができるのではないかとも思いました。パラオを表す絵でありつつ、Over the Wallの世界をつなげるメッセージも込めた絵。いろんなバランスを考えて原画を描き上げました。

 

パラオの国旗

 

パラオ壁画プロジェクトのための太陽(パラオの16州の旗があしらわれている)

 

 

 実際には空港側とパラオ政府に許可をもらう必要があったので、すんなりと通ったわけではありませんが、なんとか現地の理解も得られて大まかにこんな感じの絵になる予定です。ただ僕自身、これまでもそうしてきたように現地で感じたことや起こったハプニングを絵に反映してきたいので、どんな壁画が出来上がるか今からとても楽しみです!