2024年4月25日

 

 Over the Wallで次に行く国、これを決めるのはなかなか簡単ではありません。もともとはエリアで選んでいて、アフリカ、アジア、南米、カリブ海など、行ったことがない場所に行こうと思っていたのですが、今は壁画のテーマで選んでいます。去年はシロアムの園で障がいを持つ子供たちとの共同制作がテーマだったのですが、今回はまた違う角度で行きたいなと思っていました。

 このプロジェクトをやっていたら必ず言われるのが、

 

「貧困地や紛争地を選んでいっているんですか?」

 

という質問です。これまでいった場所を考えるとそういったイメージになるのはしょうがないのですが、特にそれを意識したことはありません。決める基準としては「こんな場所に明るい絵があったら面白いな」という感覚です。なので少しプロジェクトのイメージを変える活動をしてみたいなと思っていました。

 

 

 そんな中2022年に石巻で壁画を描く機会をいただきました。松本産業の充代社長からの依頼で、震災復興の象徴となる壁画を描いて欲しいということでした。石巻の歴史を調べていくうちに「くじら」というキーワードに結びつき、昔描いたことがある「花咲かくじら」を描いてみようと思いました。

 

 

 実はこのくじらにはとても思い入れがありました。それは僕がロンドンから日本に帰国して、そのすべてをかけて開いた個展が全くうまくいかず、進退極まっていたある日のこと。大学の友人が突然僕に絵を依頼してくれました。とにかくなんでもいいからハッピーになれる絵を描いてくれと、当時の僕には大きなお金を用意してくれました。家がなかった僕は後輩の家に居候させてもらいながら、狭いスペースで絵を描きました。当時の心境としては、絵描きとして生きていく自信が大きく揺らいていて、自分自身を励ます絵を描きたいという思いがありました。

 

「花咲かくじら 2006年」

 

 大きなくじらが空を飛び、潮をふくとその潮は花になって地上を埋め尽くす。そのくじらが現れると世の中は幸せになるという。

 

 それは理想の自分の姿でした。


このくじらのように、世界中に絵を描いて世の中を明るく輝かせたい。


絵を完成させて友人に送り届け、その代金として受け取ったお金でなんとか食いつなぐことができ、次の月にNHKの仕事をもらって絵描きとしてのキャリアがスタートしたのでした。花咲かくじらは僕に幸せを運んできてくれた絵でもありました。

 

 充代社長とそんな話をしていると、その絵を注文してくれた大学の友人と充代さんがパラオでつながっていることがわかりました。なんという偶然!充代さんは毎年パラオに旅行に行くことが定例になっていて、大学の友人晶子は現在パラオで旅行会社で働いている。こんな偶然があるのか?!と思い、くじらが繋いでくれたパラオで壁画プロジェクトをするのもいいんじゃないか?と考えるきっかけになりました。

 

その後二人はパラオで会うことになったそうです。

 

 もう一つの決め手はパラオと日本が2024年が外交関係30周年の記念年だったことです。Over the Wallはウクライナの25周年を皮切りに、エクアドル100周年、パキスタン70周年、ケニア60周年と、その国との周年事業として活動することで現地での活動をサポートしてもらっていました。このタイミングも後押しとなったと思います。

 

 毎回次の国を決めるタイミングはその年のプロジェクトの出発前。フラッグリレーの布を準備するタイミングです。布に次の国名を書きながら、本当に来年この国に行けるんだろうか?といつも不安になります(笑)。でもなんとかこれまではうまくいっているので、きっと今回も大丈夫だと思います!

 

いざ、2024年はパラオ共和国へ!