2024年5月25日

 

 最初にパラオに壁画を描きにいく場所として考えたのは「日本・パラオ友好の橋」として2002年にODAで作られた橋です。パラオの象徴的な橋として現地でも知られていて、ここにでっかく壁画をかければ観光の名所にもなるという考えがありました。しかしとんでもないサイズであることと、許可どりが難しいということから断念。どこに壁画を描くべきかはいろんなアイデアをもらいながら進めていきました。

 

出発ロビー

 

 そんな中候補として上がってきたのがパラオ国際空港でした。日本とパラオの外交関係30周年ということもあり、両国の関係が深い場所がいいなと考えていて、この空港の壁面が候補に上がってきたのでした。パラオの玄関口であるパラオ国際空港はパラオ唯一の国際空港であり、旧首都のコロール郊外のバベルダオブ島アイライ州にあります。昭和 19 年(1944 年)に大日本帝国海軍が航空基地として建設したのがはじまりですが、2003年に日本による無償資金協力によって建設され、2022年には空港の改修・拡張が行われ、現在は日本の会社がこの空港を運営しています。

 この空港を運営しているパラオ国際空港株式会社と、パラオ政府公共インフラ産業省に受け入れ先になってもらい、空港内のロビーに壁画を描かせていただけることになりました。一気に政府と繋がれたのは交渉をしてくれた晶子の人脈と、パラオという国サイズ感もあると思いますが、とにかく思いがけず大きなプロジェクトとして現地で活動できることをとても嬉しく思います。

 

 

 ただ壁面の写真を送ってもらい、壁の形状を見るととても子供達を登らせて一緒に描くのは難しいと思い、どういった形で共同制作をするかが問題でした。また壁画の予定地は出発ロビーで、観光客や自国の人々がパラオに帰ってきた時に最初に目にする場所に壁画があったらいいのではないかという意見もありました。そこで到着ロビーにはタペストリーの形で子供達との共同制作作品を設置し、出発ロビーには僕らが自分たちで壁画を描くという2つの作品を作ることにしました。

 

到着ロビー

 

 Over the Wallの現地活動期間は1ヶ月。その間に2つの作品を作るのことはこれまでもありましたが、ダブルメインという形で描いたことはありません。これは僕らにとっては新しい挑戦になります。また空港という場所にどうやって子供達を連れてきて絵を描いてもらうか、この辺りもまだまだこれから交渉が必要になってきます。

 

 ただこういったプロジェクトを現地の政府や企業と一緒に考えながら作っていく作業自体が面白く、思い通りにいかないことも多いですがその中でどう最終的に作品として成立させるかを楽しんでいます。僕にとっては年に一度の大冒険、もちろん責任は感じていますが楽しむことを忘れずに、今回もいい作品を作りたいと思います。