2024年4月16日

 

 先日実家に帰った時に、ふとした場所で封筒を見つけ、開けてみると30年前にベルギーに行った時の写真が入っていました。当時一人で旅行をしていたためほとんどが風景の写真でしたが、数枚お世話になった哲朗ファミリーとの写真なども入っていました。そしてベルギーの街と自分が写っている写真を発見!確か哲朗とよしこ、カロリーヌの4人でブリュッセルの街を歩いた時の写真だと思われます。

 言葉が話せずにとても落ち込んでいた記憶があったのですが、微笑んでいる様子を見るとそこまでではなかったのかもしれません。記憶というものは当てになりませんね(笑)。

 最近は教科書に活動が載ったこともあり、高校生に向けて話をする機会が多くあります。でも次第に自分にとっての高校時代が遠いものになっていき、その時の自分の気持ちを思い出せなくなっていました。でもこの写真を見て、いろんな記憶が一気に蘇ってきました。

 

 

 僕にとってここでの経験は、自分の人生を大きく変えました。まさに自分の人生が始まった瞬間と言っていいかもしれません。

 

 一番大きかったのは、自分自身でここに来ると決めて行動したこと。そしてパリ行きを辞めて時間ができたことからベルギーの街をスケッチして過ごしたこと。勇気を振り絞って言葉が通じない世界でコミュニケーションを取ったこと。ここから得たことはその後の僕の人生を決める大きな教訓ばかりでした。

 何よりもまず自分自身の責任で行動することで、人生を主体的に考えられるようになりました。そしてどんな環境にあっても、自分にできることを考え実践すること、これが大切だと知りました。その時の僕はスケッチを描くことだったけど、受け身にならずに振り切って実践することで見えてくるものがあると思いました。また知らない世界でも怖がらずにコミュニケーションをとることで、自分で世界を変えることができるんだと気づきました。

 

 

 それまで自分に自信がなかった僕は、この経験を糧に、失敗してもチャレンジし続ける精神力を持つことができました。一度の失敗にめげずに、やり続けていくと人の見る目は変わる。大切なのはやろうと思う気持ちとやり続ける精神力。これにはやはり成功体験が必要だったのです。

 

 現在の僕は、新しい環境に飛び込むことも、知らない人とコミュニケーションをとることも怖くはありません。世界中に壁画を残す活動を続けてきて、最初は信用されなくても最終的にはきっとみんなで喜び合えるという成功体験を積み重ねてきたからです。そんな自分になるきっかけは、まさにこの夜、哲朗の家族との晩餐会であったと思います。

 

 

 30年以上が経った今でも、あの夜の高揚感は忘れられません。言葉が通じなくても人と人は分かり合える。あの時感じた感動を求めて今も活動を続けているのかもしれません。人はいつか大人になり、自分が歩んできた道を理路整然と語るようになるけど、その道を選ぶきっかけなんてただの偶然で、行動全てに意図なんてない。ただ自分を変えたいという強い思いがあったからこそ、この素敵な偶然が起きてくれたんだと思っています。