2024年4月12日

 

 軽井沢のこととは別に僕にはずっと抱えている問題がありました。それは絵を制作するアトリエがないという問題です。今は一軒家の自宅の2階をアトリエにしていますが、いずれ子供たちの子供部屋に半分はとられてしまいます。アトリエをどうするかは僕のアーティストとしての死活問題でもありました。

 

 

 高校時代から絵を描き始め大学院を卒業する24歳までは常に学校が制作場所でした。特に大きな作品を作ることが多い僕にとって広いスペースはかなり重要で、そのスペースがあるからこそできた作品はたくさんありました。しかし25歳の時にロンドンに渡ってからは決まったアトリエを持つことは難しく、時にはバイトをしていたホテルの4畳半の管理人室で制作をしていた時期もありました。

 

 

 日本に帰国してからは取手にあったシェアアトリエを借りることにしました。ここはかなり広く、大きな作品を作る時は通いで制作するということにしていました。しかし当時都内に住んでいてこの取手への往復はかなりストレスで、次第にアトリエに行かなくなってしまいました。その頃はテレビのセットの制作がメインだったので、大きな絵は現場で描き、家では机の上だけで制作できる小さなイラスト的な絵のみを描く、というのが次第に習慣になっていきました。

 

 

 その状況を打破しようと思い、郊外のひばりヶ丘の一軒家へ引っ越すも状況は好転せず、次はガレージ付きの日暮里の一軒家に移ります。そこでもやはり大きな作品は作るのが難しく、一念発起して流山の一軒家を購入して、毎年3mほどの大作を描くルーティーンをなんとか確立することができました。しかし作品が溜まってくるとストックする場所も必要で、どこか広い場所で思いっきり絵を描けたらいいのに、という思いはずっと心にありました。

 

 

 そうこうしているうちに子供たちが大きくなり、いよいよ2階のアトリエを半分にしなければならないタイミングが迫ってきました。そこで1年ほど前に家から10分ほどの場所でシェアアトリエを借りてみたのでした。そこは4、5人のアーティストでシェアしている大きな倉庫で、広さは相当なものでした。意気揚々と家に溜まっていた作品を移動して、これでようやく好きに絵が描けると思ったら、、、全然そういうわけにはいきませんでした。

 

 

 気がつけば僕のアートスタイルは、壁画などのように現地に行って制作するものになっていました。いくら広い場所があっても描く時間がなければ制作は進みません。結局アトリエを借りていた2022年から2023年の1年は佐賀のサンライズタワー、目黒の壁画、ケニアの壁画、TNCの壁画と息もつけないほど忙しく、一枚もアトリエで絵を描くことなくアトリエを解約することになりました。。。

 

 

 そこで今の自分にはアトリエでじっくり制作する時間はないんだということを認識し、割り切って作品や資料を収納できるレンタル倉庫を借り、制作は家でできることをすると決めました。きっと子供たちがいるこれからの10年間はおそらくこの生活が続きます。ただ子供たちが家から出るタイミングでスペース的にも時間的にも開放されるので、そこから自分が好きな作品制作を広いアトリエ空間を作ろうと思い至りました。

 

 

 タイミング的にもコロナの影響で妻がフルリモートになり、自分にとって理想の制作場所はどこだろう?と考え始めていました。考えた結果、広いアトリエとリラックスできる空間がある非日常のスペースと、最低限で生活する日常のスペース、この2つを持つことだと思いました。

 普通であれば非日常のアトリエは、本当に必要になる10年後に手に入れるんだろうけど、今手に入れることができれば、アトリエとしてはそれほど使わなくても子供たちの楽しみ、旅行、リフレッシュの空間として使うことができる。どうせかかる費用なら今払って10年間分豊かな時間を手に入れたほうが効率的だ!っと思い至り、大好きな軽井沢にアトリエ兼セカンドハウスを手に入れようと思ったのでした。

 

 そんなわけで一般的なタイミングとしては時期尚早ですが、物件を軽井沢で探すことになったわけです。折しも世間はリモートワークの普及で二拠点生活が流行しだし、軽井沢の地価も高騰を始めていました。僕のように考える人が多くいたということだと思います。