”ケミカルコーピングとはなんぞや” | がん治療の虚実

”ケミカルコーピングとはなんぞや”

相変わらず診療状況が筒抜け状態という厳しい環境ですが(笑)、治療解説のために情報提供してくれていると考えてちょっとコメントしてみます。


ケミカルコーピングというのは、医療用麻薬をがん性疼痛や不快感に使用する以外に、「痛みが出たら不安だから」とか「よく眠れるように」といった本来の使用目的以外に使う事を意味します。

終末期の患者さんなら、それで本人の不安や不快感が改善されるのであれば、何の問題もないのではないかという意見もあります。

しかしまだまだ生存期間延長が期待できる患者さんやがんが治癒した患者さんの場合は、今後問題となるでしょう。

 

この患者さんの場合はアバスチン+オキサリプラチン+5FU(FOLFOX6+BV)で大腸がん骨盤内再発巣が縮小してがん性疼痛が急激に改善したため、オキシコンチン120mg/日という比較的高用量(通常10mg/日で開始する)を、20mg/日まで急に減じたため生じた身体的依存からくる離脱症状の可能性を考えました。

そこで、調子悪いときはオキノーム(4時間の効果)で補うことを提案したわけです。

 

(しかしこの患者さんは術後補助化学療法として使ったオキサリプラチンでひどい目に遭って、抗がん剤拒否となったのに、今回同じ薬剤のおかげでがん性疼痛が減って医療用麻薬を減量できたのですから、抗がん剤の使い方というのは本当に難しいものです)

 

元の量より増量するのでなければケミカルコーピングになる可能性は低いと思うので、変に我慢しないほうが良いでしょう。

 

これは当方が常々言っていますように、直接的鎮痛薬が医療用麻薬だとすれば、がんを縮小させて物理的圧迫軽減から痛みを減らす抗がん剤は「間接的な痛み止め」としての効果を発揮したものと考えられます。

こういう例は稀ではないのですが、ちらほらあるので、注意が必要です。

 

また「早期からの緩和ケア」はがん性疼痛がある状態では早期とは言えません。

本人が必要性を感じないときに、緩和ケア併診してもらうのが「早期緩和ケア導入」となります。

詳しくは以下の動画を視聴して参考にしてください。