中村祐輔先生の主張への疑問
以前クローズアップ現代プラスの番組を紹介したが、高名な中村祐輔先生が反論されている。
シカゴ便り最終回:NHK報道「免疫療法はエセか、患者の希望か!」
http://yusukenakamura.hatenablog.com/entry/2018/06/13/004801
一般の方々にはなかなか理解しにくいところがあると思われるので、一つ一つ解説しながら反論してみる。
ーーーーここから一部引用ーーーー
NHKニュースが、米国臨床腫瘍学会では免疫療法が中心的話題だと新しい流れを大々的に報道する一方で、クローズアップ現代では、免疫療法の大半をエビデンスがないと否定するような報道をした。クローズアップ現代冒頭で「詐欺師まがいの遺伝子治療」の例を紹介したが、免疫療法とは全く無関係の話なのだ。しかし、後段の部分とつなげると、明らかな「免疫療法の大半は悪だ」という印象を与えるような番組の構成だ。画面の背景として樹状細胞ワクチンが大きな文字で示されてされていたが、これは強烈な印象操作である。
ーーーーここまで一部引用ーーーー
⇒樹状細胞ワクチン療法が、結果を出せていないのは事実で、それゆえ保険適応となっていない。ちまたのインチキ免疫細胞療法クリニックがやっているのは、保険適応を目指した臨床試験でも無いし、効果のある証拠もない。ただいちるの希望を叶えるためのだけに、患者さんに莫大な経済的毒性を強いているのは事実だ。
ーーーーここから一部引用ーーーー
多くの人たちは、「エビデンスのない治療法」という言葉を使って、新しいことをすべて否定する傾向にある。特に、国の中心にいる人たちにこの傾向が強い。国内外の製薬企業の下請けをすることが世界と競っていることだと誤解しているから、日本のがん医療が遅れてきた現実を直視して欲しいものだ。
歴史を振り帰ってみよう。国立がん研究センターは「遺伝子治療」を試みたことがあるのか?自分たちで免疫療法のドアを開けようとしたことがあるのか?国立がん研究センター東病院で熱心に免疫療法に取り組んでいる医師をどう評価するのか?「抗がん剤は毒だ」との批判コメントに何の対応もしなかった。この影響で、抗がん剤治療を回避して、救えたかもしれない命を失ったことに対して、どのように責任を感じているのか?そして、若尾医師のコメントが、国立がん研究センターの正式なコメントなのか、はっきりして欲しいものだ。
ーーーーここまで一部引用ーーーー
⇒近藤誠氏らの、反抗がん剤理論に対して、ちゃんとした対応をしてこなかったのは事実である。これは学会内での議論だけで良いと従来の路線を変えなかったためだが、その間に一般人向けの分かりやすい解説を怠ってきた。
しかし、近年ネット上の「がん情報サービス」が充実されてきている(前述の若尾先生が責任者だ)。まあ国立がん研究センターの正式コメントと言っても良いだろう。
国立がんセンター東病院でやっている免疫療法は免疫チェックポイント薬や光免疫療法のことだろうが、保険適応薬以外は患者負担ではないので、あこぎなことはしていない。
ーーーーここから一部引用ーーーー
「エビデンス」は検証することによって始めて生み出される。しかし、人での「エビデンス」を検証する前には、基礎研究で、そして、動物実験で「エビデンス」が積み重ねられる。これも、また、「エビデンス」なのだ。効果がないと結果を受けての「エビデンスなし」なのか、評価が出来ていないという意味での「エビデンスなし」なのかを区別することもできていない。基礎知識のないメディアも「エビデンス」を振りかざし、日本の医療の進歩を遅れさせてきたという意味では同罪だ。心臓移植も、骨髄移植も、生体肝移植も、人で検証する前には、人で有効だというエビデンスはなかったのだ。新しいことに対して、国やそれにつながる機関が率先して取り組んでこなかったから、日本は遅れているのだ。
ーーーーここまで一部引用ーーーー
⇒話がずれている。基礎研究からのエビデンスを積み上げるのは当然だが、最終段階の第三相試験をクリアしていないから認められていないだけの話。
中村先生ご自身が大株主の会社が行ったペプチドワクチン療法が、第三相試験で不成功に終わった事実を認識しておく必要がある。
「NHK がんワクチン~"夢の治療薬"への格闘~」をどう見るか?
https://ameblo.jp/miyazakigkkb/entry-11408237842.html
ーーーーここから一部引用ーーーー
私はペテン師のような医師を「白衣を着た詐欺師」と批難してきた。まじめに取り組みながらも、治療成績をはっきりさせてこなかった医療施設にも責任はある。NHKの番組では、すぐに米国の例を出して、米国と対比させるが、人的資源が日米では全く異なるのだ。臨床試験の実施数も桁外れに少ない。日本では相談しても、標準療法の先の治療法がないのだ。日本の批判をして、米国を礼賛し、日本の実情を顧みない提案をする。本質的な問題を全く理解していない。根源的な問題を掘り下げて、対案を示さない限り、標準療法後の「がん難民」には何の助けにもならない。
ーーーーここまで一部引用ーーーー
⇒少し考え方が古いのではないか?
最近の抗悪性腫瘍薬の開発では、最初から日本も国際共同試験に参加しているケースも少なくない。
標準治療というのは、優先順位を決められたがん治療のことであり、せっかくかせいだ有効な生存期間を、根拠不明瞭な治療で食い潰すことを防ぐという意味もある。
標準治療にプラスアルファがほしいと言う気持ちはわかるが、マイナスアルファになる危険性に考えが及ばないのだろうか?
ちなみに6月10日、都内で開催された公開セカンドオピニオン講演会参加者30人に、「それを選ぶと、後でもっと不幸になるとわかっていても、つかの間の希望がほしいですか?」と質問したら、全員がNoということだった(もちろん土壇場になったらわからないものだが)。
免疫細胞療法を自費診療でやっている瀬田クリニックとの関係が深い事情を考えると、今回のクローズアップ現代の番組は、急所を突かれて逆上しているのかもしれない。
つまり「白衣を着た詐欺師」と関連するのがご自身と指摘されたにも等しいからだ。
ーーーーここから一部引用ーーーー
日本で活動している免疫治療施設も、効いたと謳うなら、正々堂々と効果があった症例とその患者のデータを公開すればいいと思う。心ある人たちが集まって、治験を行い、データを集積して「エビデンス」を示していけばいいのではないのか?一部メディアの味噌と糞を一緒にした免疫療法バッシングで、日本の免疫療法は危機を迎えている。
ーーーーここまで一部引用ーーーー
⇒この発言の真意を通訳しよう。
免疫療法でくくっているが、下図のようにあまりに大雑把すぎる表現であり、意味をなさない。
サルノコシカケ(きのこ)も免疫療法の一種だが、それも擁護するつもりだろうか?
注目されている免疫療法とは、ズバリ、免疫チェックポイント薬とCAR-T療法のみを指している。
そして中村先生が感じている免疫療法バッシングとは、免疫チェックポイント薬フィーバーに乗じて、免疫療法が注目されたと、どさくさに紛れて古い免疫療法(免疫細胞療法)の宣伝していたことを批判されたことに反応しているわけだ。
中村先生が目の敵にしている免疫療法反対医師というのは、免疫チェックポイント薬は賛成しているが、保険適応がなく、保険認可を目指した臨床試験をやっているわけでもない免疫細胞療法は倫理的に問題だと主張しているだけのことだ。
参考:【アナリストインタビュー】がん免疫薬、おさえておきたい開発トレンドと市場展望|DRG海外レポート
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/14271/
ーーーーーここから一部引用ーーーーー
免疫チェックポイント阻害薬は、がん免疫療法の中でも特に開発が活発に行われている分野です。現在承認されている6つの免疫チェックポイント阻害薬のうち、PD-1/PD-L1をターゲットとした5つの薬剤の開発状況を見てみると、現在、世界中で1600以上の臨床試験が行われています(2018年4月5日時点)。このうち180以上が臨床第3相(P3)試験です。
ーーーーここまで一部引用ーーーー
以上、中村祐輔先生は、基礎研究者としては有名なのかもしれないが、臨床研究者としての評価が高いとは言えないかもしれない理由でした。
ーーーーお知らせーーーー
関西方面の方々は
★2018年7月22日の 神戸・がん治療・公開セカンドオピニオン講演会
「事前に知っておきたいがん常識と、がん診断後の落とし穴」
にぜひご参加ください。
時間制限はありますが、どんな質問でもその場で回答します。
今回は特別に希望の会(スキルス胃がんの会)の轟浩美・理事長も参加していただき、コラボ回答を試みます。
60人限定ですが、すでに残席35人となっています。
◎ 神戸・がん治療・公開セカンドオピニオン講演会
(2018年NPO法人宮崎がん共同勉強会神戸支部会)
今回は特別に後援・協賛会社があり参加費無料となっています。
がん患者さんやその家族、あるいはがんについて興味ある人は誰でもご参加いただけます。
ご自身あるいは当該がん患者さんの診療情報をお持ちください。
セカンドオピニオン以上に、応用の利く助言ができると思います(ただし個別相談ではなく、出席者全員の前での助言となります)。
日時:2018年7月22日(日曜日) 12:45 ~ 16:40
場所:三宮コンベンションセンター
〒651-0084
兵庫県神戸市中央区磯辺通2-2-10 ワンノットトレーズビル5F
プログラム
12:00 開場(会場準備設定含む)
12:45 基調講演(保険会社より)
13:00~14:00 講演会
「事前に知っておきたいがん常識と、がん診断後の落とし穴」
14:00~14:10 休憩
14:10 ~16:00 がん治療Q&Aコーナー(Facebook、YouTubeライブ動画配信あり、ただし出席者の顔は写りません)
16:00〜16:40 おしゃべり会
質問は1人1個で事前申し込みが必要です。
質問内容はどんなもので結構です。
治療に関する質問では、がん種、組織型ステージ、使っている抗がん剤や薬剤名などの詳細な情報があるほど、具体的な回答ができます。
ただし、質問者は1人1分以内に説明してください。オーバーすると、時間配分上、説明回答時間が短くなります。
質問総数は10〜15個ぐらいに限定されます(時間次第)。
当日、早い者勝ちです。
※ 今回参加人数は60人限定となり、事前登録が必要です。
先着順で60人に達すると自動的に終了となります。
当日予約無しで来られた場合、お断りすることがあります。
申し込みはここから(注意: こちらは残席カウンタあり)
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ーーーーー本日の動画ーーー
臨床試験には外れがないと知っていましたか?Q&A#64
抗がん剤の開発は、1万種類の候補物質から動物実験を経て、人間に初めて投与するまでに十数種類に絞り込まれて、第I,II,III相試験に進みます。第三相試験は今までの標準治療と、期待の新薬との決勝戦と言える無作為ランダム化比較試験となります。
この試験に参加する患者さんにとっては、外れの治療群に割り当てられる危険があるのでしょうか?
しかし、実は外れはないとされています。その理由は何でしょうか?
ーーーーーーーーーお知らせーーーーーーーー
がん治療の虚実のYouTube動画チャンネル
2018年は新規動画登録が加速度的に増大します。
がん治療に絶対役立つ動画を見逃したくない人は
チャンネル登録のメリットは…
(1)新着動画をいち早く見ることができます。
(2)公開セカンドオピニオンYouTubeライブが始まったら、メールで「お知らせ」がきます。Facebookをやっていなくても、良いと言うメリットもあります。
(3)すでに見た動画が区別されますから、無駄に同じ動画を見なくてもすみます。
チャンネル登録して、是非ともこのブログを応援してください。
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次回案内
◎ (第31回NPO法人宮崎がん共同勉強会東京支部会)
がん患者さんやその家族、あるいはがんについて興味ある人は誰でもご参加いただけます。
ご自身あるいは当該がん患者さんの診療情報をお持ちください。
セカンドオピニオン以上に、応用の利く助言ができると思います(ただし個別相談ではなく、出席者全員の前での助言となります)。
日時:2018年7月14日(土曜日) 11:00 ~ 17:00
場所: NATULUCK茅場町新館 2階大会議室
東京都中央区日本橋兜町12-7 兜町第3ビル 3F
東京メトロ東西線 茅場町駅から茅場町駅 12番出口 徒歩30秒
プログラム
11:00 開場(会場準備設定含むので、自由歓談)
11:30~12:00 ミニレクチャー
「テーマ未定」
12:10~12:50 自己紹介、近況報告
13:00 ~15:00 質疑応答(Facebook、YouTubeライブ動画配信あり、ただし出席者の顔は写りません)
15:00〜17:00 懇親会あり(参加される場合+500円)
※ 今回50人限定となり、事前登録が必要です。
先着順で50人に達すると自動的に終了となります。
当日予約無しで来られた場合、お断りすることがあります。
募集開始は6月15日(金)から開始予定
今後の東京支部会の予定日
平成30年 7月14日 (土) 11:00~17:00 東京都 茅場町
(2時間の会場での懇親会あり)
◎ 第69回宮崎善仁会病院院内がんサロンは2018年7月7日土曜日13:30~ 15:30です。
場所: 宮崎市新別府町江口950番地1 宮崎善仁会病院2F多目的ホール
予約不要です。
◎ 第99回宮崎がん共同勉強会
日時: 2018年6月23日土曜日
場所: 宮崎市新別府町船戸738-1
宮崎市郡医師会病院研修棟研修室。駐車場は病院
今回のテーマ:
「がん治療の成功と患者さんの幸福度は、必ずしも一致しないと知ってましたか?」
11:30~13:00 患者さんだけの気軽なおしゃべり会
13:00~15:00 がん専門医によるレクチャーと質疑応答
15:00~16:00 FacebookとLINEなどを使ったスマホ勉強会をします。みん
なで教え合いましょう。
初めての方も気軽にご参加ください。
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