新聞記者もだまされる
2017/12/30の産経新聞の記事、あるいはweb記事からの紹介です。
「先生、オプジーボを」「それは無理」免疫治療の新薬万能にあらず 日本の問題「玉石混交の療法」
http://www.sankei.com/life/news/171230/lif1712300009-n1.html
ーーーーーーーーここから引用ーーーーーーーー
自由診療による免疫療法は、科学的な根拠が証明された「標準治療」を柱とする治療ガイドラインの外の医療行為に当たるが、多くの場合、法的な規制にかからない。このため「高額の自由診療で、効果も定かではない免疫治療の施設や医師は事実上、野放しになっている」と、東京薬科大・平野俊彦教授(臨床薬理学)は懸念する。
〜〜中略〜〜
がん患者に対する免疫療法の確立に向け、治験を重ねてきた米シカゴ大の中村祐輔教授(遺伝医学)は「世界のがん医療は免疫療法を中心に大きく動いており、それを止めてはいけない。日本で問題とすべきは玉石混交の療法が存在することだ」と指摘する。
免疫治療の一つ、「免疫細胞治療」という療法を自由診療で提供している医療機関の一つに「瀬田クリニック」(東京都千代田区)がある。同クリニックでは、オプジーボが保険適用薬として承認される前の平成11年から治療や治験を重ねてきた。同クリニック臨床研究・治験センター長の神垣隆医師は「『免疫』という、うたい文句に飛びつかず、安全性や効果のデータを公表している医療機関を慎重に選ぶ必要がある」と強調する。
ーーーーーーーーここまで引用ーーーーーーーー
この記事の前半は患者さんの苦悩が分かりやすく記述しており、なかなか良い記事で、一般の方々には一見まともそうな記事に見える。
しかし、後半の専門家からの引用を見ると、当方には「瀬田クリニック」の宣伝記事としか見えない。
記事中に「『免疫』という、うたい文句に飛びつかず、安全性や効果のデータを公表している医療機関を慎重に選ぶ必要がある」と強調する。」とあるが、瀬田クリニックの臨床データはエビデンスレベルが低く、がん治療で2万人の治療実績があると言っている。
しかしこれほど多くの患者さんで試して、まともな第三相試験試験結果もなく、保険収載できないのであるから、「効果がないことが証明された」と間接的に白状しているようなもの。
まるで、詐欺師が、他の競合業者を詐欺だと責めているような記事だ。
たとえ効果のあった人が稀にいても、それは抗がん剤でも同様。
奏功率5%ぐらいでは、まず保険認可されない。
ところが、ザーコリやアレセンサのような肺がん全体では5%以下の奏功率(これは推測)しかない抗がん剤(分子標的薬)であっても、肺がんの4%ぐらいを占めるALK遺伝子異常肺がんのみに投与したら、8〜9割の奏功率と桁違いに跳ね上がる。
要は、どの患者さんに投与したら効くか、しぼりこもうというのが最近のがん治療のトレンドだ。
抗がん剤を例に挙げると、良いか悪いかではなく、どのがん種のどのステージ、どの遺伝子異常に、どの抗がん剤が、どの投与療法で有効かという厳密さがあって、ようやく保険認可される。
そもそも「免疫療法」というジャンルで区切ろうとするから、誤解を招くし、一般人もだまされやすい。
免疫療法も第5世代の免疫チェックポイント薬と瀬田クリニックの第3世代では、全く意味が違う。前者は確かに言っての効果ある患者さんいるが、後者は効果を証明できないまま、世界的には終わった技術。
それを免疫療法というひとくくりで、効果あると錯覚させる偽装新聞記事と言っても良いくらいだ。
結論としては、手術、放射線、抗がん剤、免疫療法、これら治療ジャンルがどれであろうと、個別のがん種ごとに有益、無益を見極めないと意味がない。
ある読者からの質問
一般の私にも、「瀬田クリニック」と聞くとなんだか「怪しそう」に思えてしまいます。それはきっと「良心的」と思われる医師の先生方の日頃のネット上の発信を読んでいるからです。
しかし、
http://www.j-immunother.com/.../evi.../clinicalresearch.html
↑こういうふうに書いてあったりすると、どこをどう見てどう判断すればいいのか一般の私にはもうさっぱりわかりません。
(また、シカゴ大学の中村祐輔教授のご意見はどういうふうにお考えになりますか。それとこれとは違うことなのでしょうか。https://youtu.be/VYGBboz4VE0)
—当方のコメント—
特別講演: 「がんの治癒を目指して」 中村祐輔先生(シカゴ大学医学部 教授)
の動画もざっと拝見しましたが、これからは免疫療法が期待できるはずと言うことを総論で言っているに過ぎません。
・動物実験や培養試験管内での個別の免疫療法の抗癌作用を強調しても、そのこと自体は1万分の1の確率で10年後ぐらいにがん患者さんに届けられるかもしれないと言うこと
・免疫チェックポイント薬の画期的成績を提示した後、同じ免疫療法の枠内だからとネオアンチゲンワクチン、ペプチドワクチンの事例を挙げていますが、直接には関係の無い話。
・瀬田クリニックと大学の臨床試験概要も見ましたが、通常の治療に+αの免疫細胞療法をやってどれだけメリットがあるか確認するための第二相試験?と言ったところでしょう。
しかし、今までの治療成績の悪さから、その上乗せ効果があるかどうか疑問です。
つまり自費免疫療法クリニックが、自分たちの商売を正当化するために、研究の妥当性は怪しいけど、とりあえずの臨床試験という形での隠れ蓑をつかっている感じです。
難しいのは、臨床試験の形を取っていれば、何でも許されるはずだと思い込んでいる医療者が少なくないことだ。
たくさんの臨床試験を見ていると、現在だけでなく、将来の患者さんのためにもならないものがたくさんある。
その理由としていくつか挙げると…
・大学の寄付講座という、その業者からの援助を受けるため
・研究者の医学的興味あるいは、博士号取得目的の研究の一環としての臨床試験
・当面の研究者が食べていくための材料
・その施設の職員を養っていかないといけないため
など、色々だ。
もちろんそれらが一概に悪いとは決めつけるつもりはない。
公的事業や福祉事業でもない限り、採算ベースを考慮するのは当然のことだ。
しかし、それが患者さんを(最終的に)不幸にするとなれば、このまま推し進めるのは、倫理的問題なのは自明のことだ。
さて、これらのインチキがん治療については、非専門家でもなかなか見抜けない。
となると、一般人や患者さんが見抜くことはかなり困難だろう。
当方が、なるべく患者会とつながっていたほうが良いとする理由は、ここにある。
サバイバーや長期治療経験者は、臨床試験としてやっているというどんな自費治療が、怪しいのか、わかっている人がけっこう多いからだ。
ーーーーおしらせーーーーー
本来は本日2017/12/30まででしたが、あと一日延長します。
現役がん治療医のwebセミナー動画参加案内(無料!)
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「今まで語られなかった、がん治療における食事療法の落とし穴」part I
〜〜〜〜〜概要〜〜〜〜〜
・がん予防のための食事と、がん治療に必要な食事を混同すると非常に危険
・たとえ がんが治っても、将来寝たきりが近づくがん食事療法本が多すぎる
・どんな食事療法本が危険かつ詐欺か?
・詐欺食事療法本の共通項
・なぜ理論だけではダメなのか?
・減塩は良くない(ことが多い)
・抗がん剤治療が失敗する患者さん側の理由
・がんになる原因の寄与割合まで考えたことありますか?
・がん悪液質に言及していない食事療法本はむしろ害となる
・がん悪液質とがん進行の関係
・下手な食事療法で、がん悪液質が最終段階まで進む危険性
・最近がん治療で話題のサルコペニア、フレイルという言葉を知っていますか?
・がん治療中に陥りやすいフレイルサイクルの怖さ
・がん患者さんと握手をすると、その人がどれぐらいいきられるか予測できる?
・たとえ期待のがん新薬が登場しても、フレイルサイクルを止めないと使えない
・がん食事療法ではオーラルフレイル(のどの衰え)を避けて通れない
・オーラルフレイルを食い止める方法とは?
本当はもっとたくさんの解説したいことがあったのですが、現在がん治療中の患者さんにとっては、寿命を左右する、緊急の重要事項を優先して取り上げました。
現役のがん治療医であり、NPO患者会も主催する私、押川勝太郎は医者と患者さんのの意見のギャップがどこにあるかを20年以上研究しています。
先日2017年12月16日東京にてセミナーを行いました、本来4000円でDVD動画セミナーを、今回特別に期間限定で、無料動画公開します。
抗がん剤治療と食事療法をからめた患者さん向け講演はめったにありません。もちろんがん関連学会でも聞けるものではありません。
そういった問題を指摘する声はあれど、じゃあ具体的にどうすれば良いのかという助言を詳説しているサイトは非常に少ないです。
そういった難問について、絶妙の対処方法を伝授します。
(視聴期間12月20日~12月30日まででしたが、あと1日延長します。
2017/12/31 23時まで〆切を延長しました。
最後の無料視聴チャンスです!
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これ以降は4000円での有料配信及びDVD販売となりますのでご了承ください。
(なおメルマガ読者には、全員に送りますので、登録する必要はありません)
◎ がん治療・公開セカンドオピニオン講演会
(第25回NPO法人宮崎がん共同勉強会東京支部会)
がん患者さんやその家族、あるいはがんについて興味ある人は誰でもご参加いただけます。
ご自身あるいは当該がん患者さんの診療情報をお持ちください。
セカンドオピニオン以上に、応用の利く助言ができると
思います(ただし個別相談ではなく、出席者全員の前での助言となります)。
なお、人数把握のため、事前にブログ上の開催概要をご確認のうえ、申し込んでください。
日時:2018年1月13日(土曜日) 11:00 ~ 15:00
場所: 場所: NATULUCK茅場町新館 2階大会議室
東京都中央区日本橋兜町12-7 兜町第3ビル 2F
東京メトロ東西線 茅場町駅から茅場町駅 12番出口 徒歩30秒
プログラム
11:00 開場(会場準備設定含むので、自由歓談)
11:30~12:00 ミニレクチャー
「今まで語られなかった、がん治療における食事療法の落とし穴」
Part II
12:10~12:50 自己紹介、近況報告
13:00 ~14:50 質疑応答(Facebookライブ動画配信あり)
14:55 終了
なお、今回50人限定となり、事前登録が必要です。
先着順で50人に達すると自動的に終了となります。
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