全てのがん治療医が読んでほしい記事 | がん治療の虚実

全てのがん治療医が読んでほしい記事

今回はいつもと毛並みが違って、がん治療医にも読んでほしい記事を紹介する。

 

【第1回】~乳がん専門医が乳がんになって~ 東京女子医科大学放射線腫瘍科教授 唐澤久美子さん

「自覚症状は患者本人にしかわからない。 患者さんはもっと伝えて、医療者はもっと訴えに敏感に」

https://oncolo.jp/feature/20170817k

 

【第2回】~乳がん専門医が乳がんになって~ 東京女子医科大学放射線腫瘍科教授 唐澤久美子さん「がんの治療選択で最も大事なのは 患者さん自身の「人生の質」を守ること」

https://oncolo.jp/feature/20170824k

 

ーーーーーーーーここから引用ーーーーーーーー

「私はかつてパクリタキセルやドセタキセルの臨床試験を手がけたことがあり、これらの薬の効果や副作用はある程度はわかっているつもりでした。

ところが、自分自身が使ってみると、これまで担当した患者さんでは経験したことがないようなひどい副作用が起こりました。

特にここまでひどい下痢は経験したことがありませんでした」と唐澤さんは話します。

こうした経験から、標準治療とされている薬物療法は副作用の出方に大きな差があり、誰でも同じように受けられる治療ではないということをあらためて実感しました。

そして、効果的で安全な薬物療法を実施するためには、「一部の患者さんについては標準を踏まえた上で、患者さんの特性や状態に合わせてがんの薬物療法専門医(腫瘍内科医)が薬剤を調整するなど、きめ細かい配慮が必要になりますね」と語ります。

 

〜〜中略〜〜

また、一部の看護師の話し方が耳障りでした。ある看護師に「何かお仕事をされているんですかぁ」「あ、医者ですか、その歳でまだお仕事されているんですか」などと言われて驚いたともいいます。

 

「病院では“患者”という立場で括られてしまいますが、それぞれに社会的背景を持っています。

病棟では入院時に書類を書かせてその患者さんの職業などの情報を入手しているのですから、もっと個々の患者さんの背景を踏まえた上で応対してほしいと思いました」。

唐澤さんがこの術前化学療法の治療や副作用での経験から学んだのは、痛みや違和感、具合の悪さは自分にしかわからない、だから、患者さんは自覚症状を必ず早めに詳しく医療者に伝えるべきだということ、また、医療者は患者さんの言葉にもっと耳を傾け、対応を真剣に考えるべきだということです。

 

「そうでないと患者さんの具合がさらに悪くなったり、医療者不信になったりしていきます。医療者はもっと患者さんに学ばなければいけないですね」。

 

​​​​​​​〜〜中略〜〜

患者にとって、治療を選択する際、何を基準にすればいいのかとても迷うことがあります。

そのときに、Quality of Life(QOL)が大事だとよくいわれます。日本語では「生活の質」と訳されることが多いようですが、唐澤さんはがんを経験し、「私はこれを“人生の質”と訳すべきだと感じます」と語ります。

 

「術前化学療法で副作用が強く出て、動けなくなったり入院したりしている間、“治療で生存率が数%上がったとしても、自分が大事にしている診療や学務、研究や人間関係が維持できなければ生きている価値がない”と思いました。私にとって余命を延ばすこと自体は治療選択の基準にはなり得ないのです。

 

​​​​​​​〜〜中略〜〜

診療ガイドラインで推奨する治療法がうまくいかない、あるいはその治療は自分に合わないと考える患者さんは実際には少なくなく、「そういう患者さんに合わせた治療ができること、また患者さんの自覚症状に合わせて治療を変えられることこそが専門医の腕のほんとうの見せ所だと思います」と唐澤さんは言い切ります。

 

一方で、患者さんの「人生の価値」を医療者が聞き出し、それによって治療方針を決めるのが難しいことも認めています。「ふだんの診療時間は短く、医療者も忙しくてじっくり話し合う時間が取れないし、がんという進行する病気の診療においては治療方針の決定を長くは延ばせません。

そこで、患者さんの“人生の質”を効率的に評価する指標を作りたいと考え始め、今、医療の質や患者満足度の評価を研究する先生方に声をかけたところです」。

 

​​​​​​​〜〜中略〜〜

がんの経験をきっかけに「診療しているときに、患者さんの希望や大事にしているものは何かについて以前よりも考えるようになりました」とも語ります。

 

がんが再発したある患者さんに、分子標的治療の副作用がひどく、その薬を使い続けると家で寝たきりになってしまう、それでも今までに効いた薬はこれだけなので続けましょうと主治医に言われて悩んでいる、と相談されたとき、「あなたの辛さはあなたにしかわからないし、あなたが生きがいだと思っていることもあなたにしかわからない、あなたがご自分で自信を持って判断されれば良いと思う」と話したといいます。

 

半面、がん患者さんに対して容赦しなくなったと思うこともあるそうです。「今までは、がんでない自分はがん患者さんに対して遠慮していたと思います。

しかし今では、例えば、がんが乳管内にとどまっている非浸潤がんで薬物療法も不要な患者さんが診察時間に長々と転移の不安を話されたとき、あなたのがんは転移する確率がほぼない、きちんと勉強して正しい認識を持つべきだとはっきり言います。

乳がんで亡くなった有名人がいたので自分もそうなるにちがいないなどという的外れな不安には長々と付き合えなくなりました。

 

患者さんの中にはがん告知を受けたら頭が真っ白になる方がいるのはわかります。それでも医師の話をよく聞き、信頼できる資料から情報を集め、病気を正しく理解して受け止め、前向きに対処するべきなのです」と唐澤さんはアドバイスします。

 

そして、「治療やがんそのものによる症状は患者さん自身にしかわからない、だから医療者にきちんと話すべき」と重ねて強調します。さらに「患者さん本人も医療者も患者さんの人生の質を考えながら、治療を選び、状況によって柔軟に変えていくことが患者さんにも医療者にも納得できるがん医療のベースだと考えています」とも話します。

----------引用終わり----------

 

 

最近のはやりは、医療者ががんになって、がん治療の本当のきつさに気がついたという告白だろう。

古くは20年以上前に出版された、「医者が癌にかかったとき」が有名だ。

 

 

 

その当時抗がん剤の効果は今よりもっと限定的で、有効な制吐剤もないため、吐き気でものすごく苦しむのは避けられないとされていた。

 

患者さんの苦痛の第一位は「吐き気」だったのが、今は「家族の問題」に変わってきているのは、それだけ有効な制吐剤(5系統以上ある)が使えるようになったおかげだ。しかし、必ず次の問題は生じる。

 

診療ガイドラインと標準治療の登場は、がん治療の進歩として大いに意味があるが、一部の患者さんにはあまり評判がよくない。

 

実はこれも同じ構図で、治療が進歩しても、次なる不満が、必ず出てくるものだ。

 

標準治療がなかったときは、どれが、がん治療として有効なのか、インチキなのか、気休めなのか区別がつかなかった。

 

標準治療のことを、治療医は、これ以外は信用できないと思いがちだし、患者さんはそれに無理矢理自分を合わせないといけないのかと不満を持つ。

 

両者とも、お互いの背景を知ろうとする前に、まずとにかく自分たちのことを先に理解してほしいと願い続ける限り、両者の隔たりは永久に解消しないだろう。

 

ところが、最近は医療者が、がんになる事が珍しくなくなってきた。

本当は全部の文章を引用したくなるような秀逸な記事だが(是非リンク先の全文を読んでほしい)、両者の立場にまたがった状態になった医療者は、これほど説得力のある提言ができるものか、と感じ入った。

 

多くのがん闘病記は、病院側が、外来診察では想像できない事情や悩みを知ることができるが、感情が入りすぎていることが多い。しかしがん専門医が闘病記を書くと、医学的視点をもっているため、患者さん側の隠れた本当の窮状が、医療側に伝わる。

 

そして、当ブログでは常に言っていることだが、「患者さん側」こそが、遠慮せず、主治医に

 

1 自分の自覚症状としての副作用のきつさ

2 自分の価値観と今後の予定

3 今の治療の意味と見通し

 

を質問してほしい。

 

医者の説明を待つのではなく、患者さん側からも積極的なコミュニケーション法を研究して、働きかけるのが当たり前となった時代が来たのだ。

 

聞くのが怖い人ももちろんいるだろう。

それについては、無理強いするつもりはないし、個人の考え方次第でいいだろう。

 

ここで提案しているのは、ちょっと苦しい質問であっても、それはいやなことだからと先送りしないことは、将来への貯金、先行投資となると言う意味だ。

使いたいお金を将来に振り向けるには痛みを伴うが、がん治療においても、同じ原理が働く。

面倒で、いやなことでも、敢えて実行する人には、ちゃんと後で見返りがある。

 

….と書いてきたが、実は正直言って、この樺澤さんのような「スーパーがん患者」は、がん専門医であるからこそ成り立つという原理もある。

 

誰もがここまでできるとは、とても思えない事も事実。

 

当方ががん患者会に入れ込む理由はここにある。

 

理屈、理解度を超えて、がん患者さんを包み込んでくれるのは、やはりがん患者さん同士なのだ。

 

難しい理論がわからなくても、そういったサバイバー達と一緒にいれば、変な方向に行くことは少ないだろう。

 

まともな医療者がそれをバックアップすることの意味は非常に大きいと考えている。

 

その公開セカンドオピニオンを兼ねた当勉強会は、毎月東京でも開催されています。

だれでも参加、質問可能です。

次回は9月30日日曜日に開催されます。

↓↓↓↓すぐ下の項目でお申し込みください↓↓↓↓

 

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◎ 第21回東京支部会(NPO法人宮崎がん共同勉強会)
がん患者さんやその家族、あるいはがんについて興味ある人は誰でもご参加いただけます。
ご自身あるいは当該がん患者さんの診療情報をお持ちください。
セカンドオピニオンほどではなくても、応用の利く助言ができると思います(ただし個別相談ではなく、出席者全員の前での助言となります)。
なお、人数把握のため、事前にブログ上の開催概要をご確認のうえ、申し込んでください。
日時:2017年9月30日(土曜日) 13:00 ~ 17:00
場所: 東京都JR 飯田橋駅近く
13:00 開場
13:30~14:00 ミニレクチャー
「医者の正論が、がん患者さんを傷つける理由とは。対処法は?」
14:10~14:50 自己紹介、近況報告
15:00 ~16:50 質疑応答(Facebookライブ動画配信あり)
この後、懇親会あり

なお、今回40人限定となり、事前登録が必要です。先着順で40人に達すると自動的に終了となります。
当日予約無しで来られた場合、お断りすることがあります。

 

以下のリンクから申し込んでください

https://sites.google.com/site/miyazakigkkb/

 

なお、会場には行けない方のために、動画参加を用意しています。

webセミナー

「医者の正論が、がん患者さんを傷つける理由とは。対処法は?」

 

事前登録していただけた方には、2017年10月3日に動画視聴リンクを送ります。

是非登録してみてください。

登録は2017年9月30日AM11:00までです。ご注意ください。

登録はこちらからどうぞ

動画参加申し込み



今後の東京支部会の予定日
平成29年10月29日(日) 9:30~13:00 東京JR五反田駅近く
平成29年 11月26日(日) 11:00~15:00 東京メトロ東西線 茅場町駅
平成29年12月16日(土) 11:00~15:00 東京 JR神田駅近く

 

ーーー連絡事項ーーー

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残念ながら近日中に絶版となるようです。

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