光免疫療法の記事紹介(なお拙著出版1周年記念無料PDFプレゼントあり)
https://magazine.dmkt-sp.jp/magazine/0044/0150/00011107
(dマガジンでも読めます)
光免疫療法(NIR-PIT:Near infrared photo-immunotherapy)とは?
最近患者会でも聞かれることが多くなり、今週発売の週刊文春に記事があり、ちょうどいい機会なので紹介する。
簡単に説明すると以下のようなことだ。
・それぞれのがん細胞にくっつきやすい抗体(IR700という色素を付着させている)を開発して体内に注入する。
・抗体ががん細胞表面にくっついた翌日以降に近赤外線照射すると、その抗体に付着しているIR700が熱を発してがん細胞の壁を破壊して、その後壊死させる。
・がん細胞が壊死したあと、がん抗原という目印が全身にばらまかれて、それを認識した免疫細胞が、遠隔転移しているがん細胞に対しても攻撃を始める。
・がん細胞は免疫の目から逃れるための、制御性Tリンパ球(Tリンパ球は攻撃系と防御系がある)を周囲に集めているが、このTリンパ球にも同様な処置をして、破壊し、がん細胞を免疫系に対して丸裸にしてしまうことで、がん細胞が免疫系の攻撃を受ける。
・近赤外線は2ー3cmしか体内を透過しないが、細い光ファイバーを体内、臓器内に挿入することで、深い体内位置にあるがんにも有効。
現在頭頚部がんでは、奏功率をみる第二相試験がもうすぐ終わり、従来の標準治療との決勝戦である第三相試験が2018年に開始予定。
うまくいけば2020年に実用化されるとのこと。
また日本でも臨床試験が始まろうとしているらしい。
今までの結果報告では頭頚部がんの患者7名が臨床実験を受けた結果、4名は、一ヶ月後には腫瘍が消失、三ヶ月後には皮膚も回復、再発もせずに一年以上生存している。
1名は現在治療中で生存。
1名は、光免疫療法による治療が効きすぎ、頸動脈に浸潤していた癌が消失し、血管が破れて出血死。
1名は、骨髄の中までがんが進行していたために治療無効となっているとのこと。
血管にがんが浸潤している場合、治療が効きすぎると、がんが消失すると同時に血管の壁も薄くなって破裂するということはあり得る。
ちなみに、自分受持の胃悪性リンパ腫の患者さんでも、抗がん剤治療が効きすぎて、胃の血管が破裂し、1時間で約2000ml出血して死亡された方がいた。
緊急内視鏡と輸血処置でも止めきれず、非常にショックだった。
(といっても、報告では稀なケースであり、不運だったといえる)
過半数の進行がんに有効で、しかも副作用はほとんどないこんな良い治療法が、なぜ実用化にまだ3〜4年かかるのか疑問に思う人も多いだろう。
その理屈を推測する。
・第二相試験は奏功率8割という驚異的な数字だが、好条件の患者さんだけ集めてできるという背景がある。
最終的には現在の標準治療(化学放射線治療か?)との第三相試験(無作為比較試験)という決勝戦で勝つ必要がある(当然登録から予後判定まで時間がかかる)。
つまり、全く同じ患者背景での従来治療との比較試験がないことには本当にすぐれているかわからないからだ。
さらに、これは各がん種ごとに比較試験をする必要がある。
一例を挙げると、今では多数のがん種で使われている血管新生阻害薬であるアバスチンは、最初膵がんでの第二相試験で、高い奏功率を出し、注目された。
しかし、その後の第三相試験では、ゲムシタビン単独とアバスチンを加えた患者群で全く差がないと判明して、無効と判断された。
・ほとんど副作用がないという触れ込みの新治療は、今までもたくさんあった。イレッサやオプチーボもその類いに入るだろう。
ところが、その後イレッサは急性肺障害で死亡例が出て、裁判にまでなった(しかし従来の抗がん剤よりは実は軽い)。
オプチーボも予想外の全身性自己免疫疾患群(甲状腺機能低下症や重症筋無力症、I 型糖尿病など)の副作用が続出している(しかしそれでも、従来型治療よりメリットが大きいので使われている)。
光免疫療法も、多数の患者さんで使われたら、どんな副作用が出るかわからない。
本当の副作用は何千人と投与しないと判明しないものだからだ。
そういった意味で、新治療法というのは、実は結構不気味な印象が、医療側にある。
安易な治療開発で、事故を起こし、治療法自体が潰されないようにするため、開発側はどうしても慎重にならざるを得ないのだ。
・他にも血中の薬物動態、食事摂取内容とか服薬している薬剤との相互作用など、調べるべきことは山ほどある。
・最後にそのデータを規制当局がチェックする時間もかかる。
また患者さんへ安全・均等に提供するための薬剤供給、副作用報告の体制づくりなど、気が遠くなるほどの手間がかかる。
ということで、まだまだ道は長い。
わかりやすい治療原理の動画については以下のリンクより見てください。
https://www.cancerit.jp/54970.html
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