第2回東京支部会開催報告④-1低用量の抗がん剤はありか? | がん治療の虚実

第2回東京支部会開催報告④-1低用量の抗がん剤はありか?

第2回東京支部会での質疑応答続き
○低用量の抗がん剤治療はありか?

いわゆる「がん休眠療法」「tumor dormancy」というものがある。
しかし抗がん剤治療においては、古くから「縮小なくして延命なし」ということわざがあるように、がんを縮小させる治療でないと延命にはつながらないというのが常識であった。

腫瘍縮小というのは画像的にも証明しやすく、インパクトがあるからだ。
しかしそれが本当に患者さん自身の為になっているかと言う点では疑問も生じる。
そこでQOL改善を証明することが重要となる。そのための「硬い」指標として臨床試験では腫瘍縮小率より生存期間延長のほうが重視されている。

もちろんQOL改善をいくつかの方法で指標を定め、評価する臨床試験もたくさんあるが、「生存期間」ほど分かりやすく、意義のあるものはないからだ。

一般の方には意外と思えるかもしれないが、QOLが悪いと長生きできないのががんの常識だ。

「苦しい思いをしてまで抗がん剤治療はしたくない」と言う人も少なくないが、本当のがん治療の目的からすると、意味を取り違えている可能性がある。
がん症状で苦しんで死に至ることを防ぐ(あるいは先送りする)ために、抗がん剤をする意味があるからだ。

ではがん症状が全くない患者さんについてはどうか?と問われると、少し話が複雑となる。

症状が無いのにがんが見つかったのは、診察、画像や血液検査の結果となるが、その診断は患者さんのがんが進行して命を脅かすだろうという将来を予言するに等しい。
つまり、未来の多大な不幸よりも、今の抗がん剤治療の負担のほうがまだましだという医学的結論が前提となる。
しかしそのことを理解できていないと、患者さんは非常に不幸になるし、治療拒否の大きな原因となる。
こういったことを前提に、「低用量の抗がん剤はありか?」という質問に答える。

がんを根治させる抗がん剤治療は副作用がきつく、耐えられない。そこで、がんの増殖を抑える程度の少量の抗がん剤治療で長く抑え、副作用はきつくないようにしたい、と言う意味の治療法だろう。

東京支部会での、この質問に対しては「結果してはありかもしれない」と回答した。エピデンスはないが、きつくて減量して、結果的に、低用量となることはありえるからだ。
しかし、実際には以下の3つのケースを分けて想定する必要がある。

①再発予防目的の術後補助化学療法
②白血病や悪性リンパ腫、卵巣がん、精巣がんのように本質的に治癒可能性のあるがん種に対する化学療法
③肺がんや消化器がんのような固形がんstage IVに対する緩和療法的化学療法

つづく

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NPO法人宮崎がん患者共同勉強会 第3回東京支部会開催告示
ご自身あるいは当該がん患者さんの診療情報をお持ちください。

セカンドオピニオンほどではなくても、応用の利く助言ができると思います(ただし個別相談ではなく、出席者全員の前での助言となります)。

事前に人数確認が必要なので、参加希望者はメッセージ機能で当方に1週間前ぐらいまでに事前連絡を御願いします。

時間:2016年3月5日(土) 14時から3時間ほど
場所: 東京JR新橋駅近くの会議室

参加費用: お飲み物代含めて1000円

開催概要は以下のリンクをご参照ください。

https://sites.google.com/site/miyazakigkkb/

今後は基本的に毎月開催する予定です。第4回は4月9日土曜日午後予定です。

--------講演会の広報--------
第12回 東広島医療センターフォーラム
市民公開講座 がん診療の最前線(入場無料)
https://www.hiro-hosp.jp/medical/cancer_forum.html
講演チラシ
https://www.hiro-hosp.jp/medical/medical_staff/documents/center_forum_12.pdf
日時
平成28年3月27日 日曜日 12時~16時
場所
広島大学サタケメモリアルホール 東広島市鏡山1丁目2番2号

以下の演題で講演させていただく予定です。
「がんに振り回されないための患者力
― 実は患者さん達にできる工夫はたくさんある ―」
現代の「がん」治療は確実に進歩しています。その一方であふれる情報に患者さん達は何を基準に治療を選択すべきか混乱しています。そのため病院に任せるしかないと思い込んでいる方も多いでしょう。
しかし、「がん」ほど患者さん自身の努力と工夫の余地がある病気はありません。「がん」と診断されて、狭まるばかりだった人生の幅を積極的に広げ、医療者と協力して患者さんの自信を回復させるための秘訣をお話しさせていただきます。