分子標的薬の皮膚障害④先手を打つ | がん治療の虚実

分子標的薬の皮膚障害④先手を打つ

分子標的薬皮膚障害対策マニュアル2011
http://derma.medic.mie-u.ac.jp/doc/rashmanual1.pdf


ようやく最近になって分子標的薬の皮膚障害の副作用対策がまとまってきたので記事にしている。
命に関わるほどの副作用ではないが、本人の不快感とQOL低下で治療継続に大きな影響を及ぼす。
この点では従来の抗がん剤の最も問題となった副作用である嘔気、嘔吐と非常に似ている。
そして事前に対策を取ることが極めて重要という点でもそっくりだ。(ちなみに嘔気対策はまだ後手後手に回っている医療機関が少なくないので注意が必要。自覚症状で本人が訴えないとわからないためであるが)
分子標的薬投与開始2週間目から皮膚障害は起こりやすくなるが、先手必勝パターンを実行してほしい。

・皮膚障害が発生する前から皮膚科に診てもらうべし。

・皮膚障害が発生する前から予防的スキンケアをすべし。

・診察時は始めから上着や靴下を脱いでおくべし。

アービタックス、ベクティビックスの治療継続可能な期間は皮膚障害のコントロールにかかっている。
一部では「大腸がんの予後は皮膚科医にゆだねられた」とまでいわれるほどだ。

以下はSTEPP試験という海外臨床試験の報告だが、皮膚障害が出て対策を練るのと、最初から予防策を練っておいた二つの患者群で比較したものだ。(一次化学療法後に病勢の悪化した治癒不能な転移性結腸・直腸がん例95例)
皮膚障害が出る前から予防策を講じておいた方が明らかに副作用の発現頻度が低くなり、出現までの期間が延長されている。(注: ドキシサイクリンはミノマイシンと同系統の抗生物質)

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