第21回宮崎がん患者共同勉強会開催②質問と回答 | がん治療の虚実

第21回宮崎がん患者共同勉強会開催②質問と回答

12月17日に行われた共同勉強会では新規に4人の参加者があった。
いつもどおり前半は講義、後半は質疑応答と自己紹介、近況報告と言う形だった。
半分以上はコアメンバー、ベテランメンバーだが、新規参加者のためにがんに対する基本的知識、解説が主体となる。
ただ質疑応答は毎回新しい疑問が出され、なかなか白熱するためどうしても時間オーバーとなってしまう。
今回はその補足の記事です。
-----------
勉強会でお聞きしたかった事を書きます。
12/14の朝日新聞に F製薬会社の広告が一面をとって肺がんについての対談が載っていました。
今調度、Sho先生の虚実で書いてらっしゃる「分子標的薬」のことなのです。
「肺がんで近年使用が増えている『分子標的薬』は特定の遺伝子を狙い撃ちにする。今後この分子標的薬の種類が増えれば肺がんを克服できる時代が来ると期待している」と和泉市立がんセンター長が言っています。…が、Sho先生が指摘しています皮膚障害のことは一言も言っていません。これはどうしてなんでしょうか?

身近な方(F・Mさん)が肺がんに罹り、イレッサを飲み始めた頃「皮膚が荒れてきてかゆくてしょうがない」と言っていた事を思い出します。やはりイレッサも分子標的薬なのでしょうか?

別件でもう一点、最近セミナーで聞いた事ですが、全国でがんの医師が20万人いるなかで、Sho先生みたいな内科腫瘍医師が数人しかいないと聞きました。間違いでしょうか?
-------------


イレッサは分子標的薬の一種です。件の対談は読んでないのですが、肺がんと言っても色々タイプがあります。これは扁平上皮癌、腺癌など病理組織的なおおざっぱな分類だけでなく、個々の癌はそれぞれ癌化のメカニズムが少しずつ違っているため、同じ治療薬が効いたり効かなかったりするのだと思います。
細胞増殖、アポトーシス(プログラムされた細胞死)、腫瘍免疫などのメカニズムは非常に複雑です。
厳格に管理された生命の細胞管理をかいくぐって増大した腫瘍は色々な抜け穴をたどってますから,それをふさぐべき場所は相当多いと考えられます。
つまりうまくその穴を見つけてふさぐ道具(この場合分子標的薬)が見つかれば効果有るのでしょうが、その穴がたくさんありすぎるとそのがん種全体に効果のある薬を見つけ出すのは困難でしょう。
グリベックなど非常に効果のある分子標的薬は、使用される慢性骨髄性白血病自体、比較的単純な「穴」ががん化の原因となっているためと考えられます。

対談内容については抗がん剤(分子標的薬を含む)は非常に多数の副作用(100種類以上)がありますのでイレッサに関しても皮膚障害などの個別の副作用については言及しきれないと思います。むしろ裁判で問題となった致死的な間質性肺炎の話題の方が優先されるでしょう。

もともと癌は造血器腫瘍以外は切除しないと治らないと考えられており、外科医が治療の主体でした。
肺がんは割と早い段階から手術ではどうにもならないとわかってきて呼吸器内科医が抗がん剤治療を積極的に取り組み始めましたが、消化器がん治療は内科医にとってはなじみが薄く、今でも外科医が主体です。
ただ、今は大学の腫瘍内科教室も増えてきております。
まだ不足しているのは事実ですが、がん薬物療法専門医はすでに全国で500人以上おり、徐々に増えていくでしょう。