先週末は札幌でレーザー関連の講演でした。開業医が行う美容医療機器治療について広く全般的なお話しをさせて頂きました。
札幌は素晴らしい秋空が広がっていました。
以前北海道で勤務していたこともあって、20年ほど前からのお付き合いがあるドクターも出席してくださったりと、講演以外でも楽しく過ごしました。
前日夜は、まずは円山にある牡蠣料理のお店へ。ワインを数杯飲んだ後、一緒に講演をする東京女子医大の根岸圭先生と寿司の名店「すし善」へ。さらには狸小路にある秘密の居酒屋へ。北海道の海の幸を満喫しました。
さて本題。
先日小泉今日子さんが雑誌のインタビューでアンチエイジングって言葉が大嫌いと発言したとして話題を呼んでいます。
私はもちろんアンチエイジング推奨派です。アンチエイジングするべきです。
しかし小泉今日子さんの仰ったことに同意です。本質的を理解した上であれば、という前提です。どうしても雑誌などメディアでは過激な表現、キャッチーな言葉が一人歩きしがちです。
昨今はアンチエイジングという言葉が、単に年齢よりも若く「見せる」こと、老化を受け入れないという意味合いで言われることが多いようです。
それによって実年齢を鑑みない、異常な若さがもてはやされ、美魔女ブームなども起こりました。
誤解を恐れず言うなら、私は「美魔女って言葉が大嫌い」です。
自然に年を取ることは受け入れるべきです。若く見えないと人生失敗、悪であるかのような価値観が擦り込まれ、あまりにバランスの取れない若い見た目を獲得することに熱を上げることは避けた方が良いと思います。
綺麗に年を取っていくための努力はするべきであると思いますし、小泉今日子さんもそうなさっていると思います。
夏木マリさんは、年齢は単なる記号でしかないと仰っています。年齢に囚われ、「何歳と言われたいか」ではなく、若々しくいるからこそ、実年齢より若く言われて嬉しいということが重要ではないかと思います。
本来のアンチエイジングとは、外見だけではなく内面、それは細胞レベルであったり、マクロでは血管、骨、筋肉、体力、その他諸々つまり健康で、実年齢よりも元気、ごきげんな状態になることによって、美しく年を重ねていくことです。外見の若々しさというのは,その中の一つの側面に過ぎません。ただ、見た目が若いと長生きをしますし、健康でもあります。そういう医学論文もあります。内面が若々しく、それに合わせて外見も若く見えるのが理想であり、内面はボロボロでも外見は張りぼてのような若さを作り上げること、これはアンチエイジングではないのです。健康あってこその見た目の若々しさです。
そのバランスを無視して、若く見えることだけに執念をもつことはアンチエイジングではありません。
今回の記事ではアンチエイジング全体を否定しているような印象を与えますが、あくまで「若く見られる」ことだけを否定しているのだと思います。
年を取ることに恐怖を感じるのは良くないことです。自然に年を重ねていき、積み上げた人生経験などから自信などを深めていくことが重要であり、それを容姿という物差しだけで否定して、若く見えなければいけないかのような風潮が生まれていることには、私自身も違和感を感じます。
「若い容姿こそが全て。」ではないのです。40代、50代には、その時にしかない輝きがあります。しかし、輝きのない加齢、なすがままに年を取ることが良いこととは思いません。小泉今日子さんの発言を聞いて、何の努力もしないで輝きを失ってしまうことが肯定されていると考えるのであれば、それは良くないことでは?と思います。
私自身は、美しく年を取っていくためのサポートをすることこそが本来の美容医療だと思っています。
ただ、個人によって求めるレベルは様々です。予防、それだけでは「がっかりな美容医療」にもなり得ます。やはり見た目が若く見えることで元気になり、自信もつきます、やる気も出ます。見た目のアンチエイジングとして、若々しい外見を作り上げることも重要なのです。それをどこまでおこなうかは本人次第です。しかし基本は張りぼてのように若い顔を作り上げるのではなく、上述の美しく年を取っていくサポートのような予防的治療をしながら、その上で外見を「作り上げていく」のが理想なのです。
サポートとしては高周波テノールのような穏やかな深部加熱機器、そしてスキンケア系のメソアクティス、光治療機器など様々なものが挙げられます。
もちろんそれは「顔」だけではありません。体型も加齢とともに変化します。最近のブロクで何度か書いているように,加齢によって体型は変化し、同じ体重・体脂肪量でも若い頃のようにはなりません。これを部分痩身レーザーのスカルプシュアのような機器で対処することも可能です。
実年齢よりも異常に若く見えること、それが自然な雰囲気であれば何も否定されるものではありません。でも,皆がそうならなければいけないものではありません。若く見えないと悪であるかのような「美魔女」は否定されるべきですが。
若く見えるのが駄目なわけではない、でも若く見えることが全てではない、何だか謎掛けのようです。しかし美容医療の仕事はその本質を理解して、患者に適切な治療をお勧めする、治療計画を立てることであると思います。これも医師の力量の一つ、そう思っています。
そして患者さんが輝いてくれれば、それが若々しい外見なのか、年相応なのか、どちらも美容医療の成功です。
さて、昨日、雑誌の取材で北里大学形成外科名誉教授の塩谷信幸先生が当院にいらっしゃいました。アンチエイジング業界の雲の上の存在です。
機器治療の話しからアンチエイジングまで,様々な対談をさせて頂きました。お役に立てたかちょっと心配ではありますが。