ビューティーワールドジャパン2015 | 美容外科開業医の独り言

美容外科開業医の独り言

美容医療とは人間愛!という信念で仕事をしている美容外科医のブログです。
レーザーなど最新の美容情報や普段の診療で感じたことなど、ぼやきを交えながら書いていきます。
外見だけではなく心も綺麗になり、自信が湧いて幸せになれる、そんな美容医療を目指しています。

昨日は昼休みの時間+αを利用して、お台場で開催されているビューティーワールドジャパン2015に行ってきました。

看板

毎年この時期に開催されるエステティック関連の展示会です。基本的には商業見本市であり、現在のエステ市場における流行などを把握できるため、いつも見に行くようにしています。

相変わらず大盛況。医療関連・学会とは規模が違います。

盛況

今年は酵素やスーパーフード、腸内細菌関連のfood系出展が多いような印象がありますが、化粧品や機器系の出展ブースも沢山ありました。海外、特に中国韓国の出展も多数ありました。

機器に関しては脱毛機器やLEDなどはいつものように沢山ありましたが、価格的にかなり安価なものが増えているようです。そして脱毛は「早く」処理できる機器が増えていましたが、安全な機器のパワーというものには限度があり、本当に早くできるのであれば効果の方は落ちるかもしれません。
冷却痩身の機器や超音波リフトアップ系も多数展示されていました。冷却痩身はともかく、超音波系はHIFUが目立ちました。

HIFU機器は高密度焦点式超音波というもので、光を集める凸レンズのように超音波を一点に集束させ、その高いエネルギーで皮膚や皮下を破壊します。我々の分野ではウルセラやダブロという機器が世界的に流通しています。
エステ用とは言え全く同じ原理で、構造も同じ。。。。
HIFUを用いて脂肪を破壊、痩身効果を出したり、顔面のリフトアップを図るのですが、数ヶ月前に未承認医療機器扱いでHIFUを扱う機器業者は逮捕されています。要注意です。

HIFUで効果を出すためには皮膚や脂肪組織の破壊が必須です。体の構造物を破壊する行為は医療行為であり、無資格で施術すると傷害罪に該当するものです。そのため日本で承認されていない機器であっても「見なし医療機器」として厚生労働省の見解では医療行為に伴う機器になります。

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この件は痩身用の機器ですが、エステの場合、やはり通常の集束しない超音波との区別がつかない経営者・エステティシャンの方も多く、「超音波だから安全」と考えてしまうのかもしれません。医療側からこれらの啓蒙活動をしないといけないのかなと感じました。
エステが医療機器による効果に近づこう、結果を出して集客しようとするあまり、危ない橋を渡ってしまうと、医師法、薬事法に触れ、結局は信頼を失ってしまうような気がします。
お隣韓国を始め、殆どの諸外国ではエステでのこのような機器の使用は一切認められていません。確実に捕まります。
これらの問題の最大の原因は「国」の施策にあります。我々医療側ではこれらの機器は医療機器だと認識しているのに、世界的に医療分野で使われている機器を使おうとしても、美容は医療の中の特別な位置づけで、厚生労働省が機器を認可してくれません。医師が個人輸入しているのが現状です。一方、エステのこれらの機器には厳しい制約がなく、ともすれば曖昧な判断基準になり、エステの方々も業者も医療機器だという明確な判断が出来ません。大丈夫と思って輸入したり、製造したりして、あとで捕まったりしたのではたまったものではありません。
エステもビジネスですから集客しないといけませんし、そのためには結果を出さなくてはいけません。経営者なら、近くのエステでHIFUを使っていて結果を出していたら、負けまいと、より効果の出る機器を導入することを考えます。その際に明確な法に触れるかどうかの基準がない、つまり美容関連の医療機器自体が認可されていなかったら、何が危ないのか分かるわけがありません。

例えば癌の治療機器で厚生労働省に認可されていないものを個人輸入して無資格者が使う、これは誰でも医師法違反だと分かります。しかし痩身で同じ事が言えるでしょうか?脂肪吸引など外科的なことを医師以外が実施したら違法と分かっても、機器なら?
キャビテーションやラジオ波、通常の超音波は医療機器?
我々プロでさえも明確な区別が出来ません。

少し前に光脱毛機は医療行為かどうかで逮捕者が出て争われた裁判がありました。それでもいまだにエステで脱毛行為をしています。どこまでが医師法に触れる脱毛か明確ではなく、玉虫色の見解が残っているからです。毛根やその周囲組織の破壊??という見解がありますが、かなり曖昧で、これで裁判は争われました。そもそも「レーザー脱毛機器」は我が国では医療機器としては何一つ認可されていません。
「えっ?」と思うかもしれませんが、事実です。医師の個人輸入、若しくは別目的での認可を得た機器を使っています。

医療とエステはライバルではなく共存していくものであり、上手く融合してはじめて日本の美容業界は正しく発展していくのではないでしょうか。お互いに理解し合い、自分の分野を守れば、美容行為自体がもっと世間に認知され、市場は大きくなると思うのです。
例えば、インディバやサーモシェイプのような機器は医療分野でも同じ機器、同じ理論の機器が使用されることも多いのですが、きちんと棲み分けされていて、両分野に渡って広く理解が得られています。販売会社の正しい戦略・努力とユーザーの知識、理解によるものだと思います。

いつも、そう感じながらビューティーワールドに行っています。
ただ、私に出来ることはブログで個人的意見を述べるのみです。。。。