美容医療の疑問点:レーザーは似たようなもの? | 美容外科開業医の独り言

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美容医療とは人間愛!という信念で仕事をしている美容外科医のブログです。
レーザーなど最新の美容情報や普段の診療で感じたことなど、ぼやきを交えながら書いていきます。
外見だけではなく心も綺麗になり、自信が湧いて幸せになれる、そんな美容医療を目指しています。

先週後半は松本市で開催された日本形成外科学会基礎学術集会に参加してきました。
基礎学会
信州大学形成外科 松尾清教授が会長です。
会場
会場は松本市のキッセイ文化ホール。駅から少し遠かったです。。。。

今回の出張、私が開発に関与したレーザー「イージスYAG」についての基礎(組織学的)検討の発表があり、そのサポートをするためです。
大学の研究室でデータ取りをしてもらっているのですが、オリジナリティが高く、非常に面白い結果が得られたため、今後も発表していく計画ですし、また別の大学での臨床試験も進んできて、若手の先生による海外での発表も決まりました(そのため12月に香港に行かなければならず、師走ですが2日程度休診します、申し訳ありません)。韓国でのライセンス生産についても順調に話が進んできていますし、韓国の某大学教授が非常に興味を示してくださっています。
機器開発に関しては今までも幾つかお手伝いをさせて頂いています。提案した機能をつけて頂いたり、その検証をしたりという仕事は楽しく、海外の技術者とのやり取りも勉強になりました。そして、いつかは基本設計から関与したいと思っていましたが、今回の機器はまさに念願叶って、です。
「皮膚の深部に熱を入れる機器」であり、現在ではシワ治療に用いていますが、少し前から顔全体のたるみ治療にも有効であることが分かり、検討中です(もう少ししたらモニター募集も考えています)。

さて、レーザーというのは一括りにはできませんし、同じように見えても様々な違いがあります。
まず、種類と機器の名称がありますが、これを混同しがちです。名称が異なっても同じ種類だと、効果や標的となる物質は近似します。
例えば、ジェネシス、ジェントルヤグ、イージスヤグ。これらは機器名ですが、レーザーの種類としてはロングパルスNd:YAGレーザーという同一のものです。一般にヤグレーザーと称します。ターゲットは血管であったり、やや暗く濁った水分、メラニンなどにそれぞれ緩やかに反応する波長です。種類が同じなら反応するターゲットは同じです。
じゃあロングパルスヤグレーザーなら違いはなく、何もかも同じかというとそうではありません。
全く同じ光の波長・照射時間であっても、イージスヤグは照射方法が同心円状にレーザー光線が移動しつつ中央深部に集束します。他は単純に表面から一方向に真っすぐ皮膚内へ照射されます。物理的な仕組みが異なるのです。
その他にも同じ種類のレーザーでも異なる部分は沢山。だからこそ、炭酸ガスレーザー、QスイッチNd:YAGレーザー等々、様々なメーカーから自分に合うものを選択したり、複数台の導入をしたりしています。

もう少しマニアックな話を続けましょう。
同じ種類のレーザーでも、レーザー発振時間中の波形も各社異なります。車で喩えると、加速の良いポルシェと大衆セダンの違いと同じで、スタートから時速100キロに達する時間は異なります。瞬間的な立ち上がりの高いパワーというのはレーザーにおいて組織破壊が強くなります。それ以後の時間は同じパワーであっても瞬時の力は重要です。
レーザーの照射面の出力分布(横モード)も機器で異なります。トップハットといって、シルクハットの形のように歪みなく均一な照射面を持つレーザーもあれば、ガウシアンといって、正規分布曲線のような中央ほど高エネルギーの照射面もあります。均一であれば安全でリスクが少ないので最近流行りのレーザートーニング(肝斑治療)に用いられ、中央に高いエネルギーがあれば切れ味鋭くなるので、反応の弱い対象に効果を発揮しやすいですし、工業製品では物を鋭利にカットする際に好まれます。
さらにはレーザー照射時間が同じように見えても、1発照射と思ったら実は3発の短い時間のレーザー照射の組み合わせだったりすることもあります。

これらはレーザーのカタログや性能表では示されていないのですが、このような事を理解して使い分けることでレーザーの持つ特性を引き出すことこそプロの仕事です。

と、今回はまたちょとマニアックな話でした。

そう言えば、学会のついでに善光寺参りをしてきました。暗闇の中、錠前に触れて帰ってくるという戒壇巡り、これで極楽浄土に行けるそうです。

善光寺