新しいKTPレーザー | 美容外科開業医の独り言

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美容医療とは人間愛!という信念で仕事をしている美容外科医のブログです。
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外見だけではなく心も綺麗になり、自信が湧いて幸せになれる、そんな美容医療を目指しています。

週末は久々にゆっくり。夫婦でドライブなど楽しみました。仕事以外のことをしたのは久しぶりのような気がします。

ちょっと先週は慌ただしく、また自分自身ちょっと落ちこむことなどもあって、ブログの更新が滞っていました。

先週金曜はキュテラ本社の研究開発部門の責任者Davenport氏が当院を訪問、新しいレーザーexcel Vについて説明をしてくれました。キャッチフレーズはeverything vascularということで、血管関係何でも、ということらしいです。この機械、血管腫の治療に有効とされる波長532 nmのレーザー(KTP)で、このロングパルスタイプはかつてはいくつか存在したのですが、現在本邦では殆ど流通していません。VPCやGeminiといった機種で、それでも十分有効でした。しかし今回の新機種、最大の売りはそのパワーです。血管腫の治療というのはパワー勝負ですが、既存の機種より圧倒的にハイパワーだそうです。さらに波長は違いますが、他社の世界標準となるダイレーザーと比較し、純粋に一つのパルスで照射します。これは目に見えるような血管の太さにも有利に働きます。本当にスペック通りのパワーが出せるなら、いい製品かも。
ただ、日本では大きな問題があります。血管腫瘍のレーザーは保険適応の壁があり、Vビームという標準機器は保険がつかえますが、このexcel Vは保険適応外であり、小児などが主となる血管腫治療では金銭負担の問題は非常に大きくなるでしょう。さらには白人は血管拡張系の肌が多いので需要は高いですが、日本人は成人・老化による血管拡張はあまり大きなウェイトを占めません。人種差による発生率の少なさが問題となるのではないかとも思います。
ただ、血管以外、シミなどの色素、シワなどの治療にも有効の可能性が高く、お隣韓国では結構売れそうという話しです。血管以外の方向で活路を見いだせるかどうかになりそうです。

そしてKTPというのはNd:YAGという波長を非線形結晶によって半分にするSHGレーザーなので(ちょっとマニアックですいません)、従来のロングパルスNd:YAGレーザーとしても使用が可能です。有名なキュテラ社のジェネシスという機器になります。これは大変良い機器であり、それもついていると考えれば、導入するのも面白いかもしれません。もちろんこのロングパルスNd:YAGも血管治療に有効ですから2波長で血管を叩くという、まさにeverything vascularです。

今回のプレゼンで、メカニックなことも幾つか教えて貰いました。中でもレーザーの発振部分、切り替えには非常に面白い工夫がされていました。やや構造的に熱に弱い(出力が不安定な)KTPが本体に内蔵されていることに関してビームの安定性にも問題ないそうで、かなり複雑な発振経路を持つこの機械、非常に強い出力を出すための工夫が沢山。
ただビーム本体のファイバー系を安定性のために50ミクロンほど太くしたことで、最終的な集光がやや大きくなってしまっているようです。さほど大きな問題ではありませんが、折角のハイパワーですから、ピンポイントでの高出力も面白かったのでは?と思います。
こういうことに興味を持つことができるほど、スタンダードに見えて高スペック、機能よりも性能を優先した本格的レーザーです。最近の「何でも来い」の美容的スペックと違って、各種機能を絞り込んで光学的性能を最大限にしています。ハンドピースの作りも秀逸です。久々にマニアック心が揺さぶられた製品です。

いずれにせよ見る人が見れば凄いというこのKTPレーザー、日本人でどれだけの結果が出せるのか、血管腫治療をすることが殆どない当院ですが、純粋に形成外科医として興味津々です。そしてシワやシミに有効かどうかも楽しみにしています。