紫外線はやけどを起こさない?? | 美容外科開業医の独り言

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季節がら、紫外線ネタが多くなります。6月も3連続で書きました....

表題、詐欺のような題名ですあせる

紫外線で日焼けが起こるのは厳密なヤケドでしょうか。
この質問、すごく難しいです。賛否両論は承知の上で、書きます。

俗称「日焼け」は赤くなる日光皮膚炎と、黒くなるサンタンがあります。
このいわゆる「焼けた状態」Sun Burn、日光皮膚炎というのは厳密には皆さんがイメージするヤケドではありません(症状や処置はやけどと全く同じです)。
ヤケドはあくまで熱が発生してから皮膚が損傷を受けるものです。
日焼けすると、赤くなってヒリヒリする、体が熱くなるからヤケドのように感じるかもしれません。しかし日光に当たっている最中にジリジリ熱く感じるのは紫外線ではなく赤外線等の熱です(光子一つあたりのエネルギーが紫外線とは雲泥の差ゆえ赤外線では日焼けしませんが、水への吸収が良く体を加熱します)。
紫外線による日焼けとは、紫外線がメラニンの保護する皮膚に対して強いダメージを与え炎症を起こす現象です。
このダメージというのが熱によるものではなく、化学的な反応によるものです。DNA損傷がメインです。誤解を承知で言えば放射線障害のようなものです(紫外線は短い波長の光ですが、より短い波長がX線です)。
熱でダメージを受ける場合、最初は熱い、痛いから始まり、徐々に炎症が生じてダメージが現れます。紫外線による傷害の場合、最初は何ともないのに数時間後から痛くなり赤くなり、炎症が起こった時点で始めて気がつくのです。日焼け止めが万全と思っていても、後で気がつく、時既に遅しです。

太陽光の赤外線ではDNA損傷は殆ど生じません。紫外線はDNAなど蛋白への吸収が強く起こるので、損傷を生じやすいのです。これはレーザーなどでよく言われる光熱作用(光による熱損傷)ではなく光化学作用の一種です。化学的反応です。このDNAを守るためにメラニンが紫外線波長によく吸収されるというのは以前書きました。
DNA損傷とはつまり細胞存続の危機です。発がん作用でもあります。
幸い欧米人と比較して日本人は紫外線を起因とする皮膚癌の発生頻度が低く、大きな問題にはなっていませんが、オゾンホールの少なくなったオーストラリアなどでは統計学的にも紫外線による発がんの頻度がかなり上がっています。
日焼けというより紫外線による皮膚ダメージには気をつける必要があるのです。
DNA損傷ということはつまりはコラーゲンの産生を司る細胞にダメージを与え、シワの原因にもなります。
紫外線は殺菌灯にも使われる恐ろしいものです。ビタミンDが作られるから積極的に日焼けしましょう、というのは前時代的です。ほんの僅かの暴露だけで良いのです。

まだまだ紫外線は強い時期です。気をつけましょう。