2833.楽(11)天下道有れば、則ち禮楽征伐天子より出ず | 論語ブログ

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楽(11)天下道有れば、則ち禮楽征伐天子より出ず

 

孔子曰わく、天下道有れば、則ち禮楽征伐天子より出ず。

天下道無ければ、則ち禮楽征伐諸侯より出ず。

諸侯より出ずれば、蓋し十世にして失わざること希なり。

大夫より出ずれば、五世にして失わざること希なり。

陪臣國命を執れば、三世にして失わざること希なり。

天下道有れば、則ち政大夫に在らず。

天下道有れば、則ち庶人議せず。

   季氏第十六   仮名論語2511行目です。

   伊與田覺先生の解釈です。

先師が言われた。「天下に道が行われてよく治まっておれば、文武の政令がすべて天子より出る。

天下に道が行われなければ、天下をないがしろにして、文武の政令は、諸侯より出るようになる。

諸侯より出るようになれば、十代まで続くものは、まれであろう。

大夫より出るようになれば、五代まで続くものは、まれであろう。

更に諸侯の家臣が、国の政治をとるようになれば、三代まで続くものは、まれであろう。

天下に道が行われておれば、政治の大権を大夫が執り行うことはない。

天下に道が行われて、よく治まっておれば、一般の民衆が、やかましく政治を批判することはない」

 

この章での「禮楽」は最初の部分で出てきます。

この章を理解するためには、儒家が理想とした社会体制を知っておくと便利です。

周王朝の初期には、宗法(そうほう)によって全国を統治しました。

「天下」のは周王(天子)。全国を大きく「国」に分け、血縁関係の者をその統治者として派遣しました。これが「諸侯」で、斉の国なら「斉公」、魯の国なら「魯公」などと称します。

諸侯(公)は、領地の「国」をさらに幾つかの「家」に分け、同じく血縁関係の者をその土地の統治者として派遣します。これが「卿(けい)・大夫」です。春秋時代には、大小合わせて百以上の「国」がありました。また、ここまでの領地関係によって「天下・国・家」と呼ぶようになったのです。

卿大夫は、「国」の最高の官である卿と、その次の位の大夫との総称です。いわば総理大臣と大臣クラスになります。領地の「家」をさらに細分化して、部下の「士」に預けます。これが「田」です。

は、貴族である卿大夫に仕え、家族や「皁(そう・家来、奴隷)」とともに「田」を耕して生活します。士大夫と並称されれば、役人、上流階級の人・知識人などの意味になります。

士庶人と並称されると、役人と農工商などの庶民をいいます。これは、高級官僚である「大夫」に対する言葉で、一般民衆のことになります。

孔子の生きた春秋時代は、天子である周王朝は衰微し、諸侯は富国強兵策に走った下克上の時代でした。魯の国もその例にもれず、昭公は斉に亡命し、家老の三桓氏の専横が目立ち、また当時の実力者の季氏でも、その家来の公山弗擾(こうざんふつじょう)が叛いたり、陽虎が反逆を起こすなど、世の中は非常に乱れていました。

この章は、天下に正しい道が行われておれば、庶民が政治批判をする必要はないのだが、今の乱世では安定した政治が続くはずがないと、時代を慨嘆・憤慨したものです。

「天下道有れば、則ち禮楽征伐天子より出ず」・・・天下に正しい筋道が行われると、礼楽や征伐の命令が天子から直接出る。

「天下道無ければ、則ち禮楽征伐諸侯より出ず」・・・天下に正しい道が行われないと、礼楽や征伐の命令が諸侯から出される。

「諸侯より出ずれば、蓋し十世にして失わざること希なり」・・・天子から出るべき命令が、諸侯から出るようになっては、おそらく十代も政権を失わぬ事は稀であろう。

「大夫より出ずれば、五世にして失わざること希なり」・・・それがさらに下がって大夫から出るようになっては、五代も続く事は稀であろう。

「陪臣國命を執れば、三世にして失わざること希なり」・・・それがさらに下がって、又家来が国の政権を採りしきるようになると、三代続く事は稀であろう。

「天下道有れば、則ち政大夫に在らず」・・・天下に正しい道が行われれば、一国の政権は大夫の手などにはないはずである。

「天下道有れば、則ち庶人議せず」・・・また、天下に道が行われれば、政治・命令、すべてそのよろしきを得るから、一般庶民が口やかましく政治を批判議論する必要はなくなる。と孔子は言っているのです。

 

* 天子:世界全体の文化と政治の責任者として、世界全体に君臨する。ただし直接に統治するのは、王城と呼ばれる首都周辺の畿内の土地と人民だけである。その身分は世襲であり、革命によらない限り、交替しない。周の時代では、周の王。 

*  諸侯:各地方の君主として、領地と人民をもちつつ、最高の君主である王すなわち天子に服従する。たとえば孔子の生国である魯の国では魯侯。その身分は世襲です。

*  大夫:重臣。王もそれを持つが、多くの場合、諸侯のそれを意味します。その諸侯に対する関係は、諸侯の王に対する関係に似ていますが、諸侯の身分が必ず世襲であるのに対し、大夫は必ずしも世襲ではない。また諸侯が必ず領土と人民を持つのに対し、大夫は必ずしも持たない。現実には、魯の季孫氏、叔孫氏、仲孫氏のように世襲であり、領土と人民を持つものが多かったが、孔子自身のごとく、世襲によらずして大夫の地位にいる場合もありました。

*  士:王の政府もしくは諸侯の政府のおける大夫以外の官僚。官職を持つだけで、領土を持たない。またその身分は世襲でないのを理想としました。

*  庶人:あるいは庶。一般人。上述の王、諸侯、大夫、士の四者は、治者であり、政治と文化への責任を、その身分に応じて分有するのに対し、庶はもっぱら被治者であって、政治と文化に対する責任を、直接には持ちません。

 

つづく

                                                                                            宮 武 清 寛

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