2828.楽(6)先進の礼楽に於けるや、野人なり | 論語ブログ

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楽(6)先進の礼楽に於けるや、野人なり

 

子曰わく、先進の禮楽(れいがく)に於けるや、野人なり。

後進の禮楽に(れいがく)於けるや、君子なり。

如(も)しこれを用うれば、則ち吾は先進に従わん。

   先進第十一仮名論語 1411行目です。

   伊與田先生の解釈です。

先師が言われた。「周の初の先人達の礼楽に於いては、心は籠っているが形は粗野で野人のようであった。今の人の礼楽に於いては、形の上ではよく整って君子のようである。もし私がどちらかを選ぶとすると先人の礼楽に従おうと思う」。

 

「子曰わく、先進の禮楽に於けるや、野人なり」・・・孔子は言っています。周王朝の初めの頃の人達の礼楽のありかたは、素朴でした。「後進の禮楽に於けるや、君子なり」・・・後世の人達の礼楽は、華やかで整っている。「如しこれを用うれば、則ち吾は先進に従わん」・・・もし礼楽を用いるとするならば、私は素朴なあり方に従って行こう。と。

この章は、古い弟子達と新しい弟子達を比べて、感想を語ったものです。

先進・後進は先輩・後輩を意味し、周王朝の初めの頃と現在のことです。野人は未完成のさま。君子は完成したさまを表しています。

後になるほどスマートになってきたのでしょう。何事も、当初は活力に満ちている代わりに、整っておらず、ぶつかりながら発展していく。そして、次第に洗練され整備されてきます。でも、反面それにつれて活力は次第に失われていくのです。

昔の人は礼楽については、まるで野人だった。今の人の礼学は、まことに整っていて、いかにも紳士だ。どちらかといえば、私は昔の人のやり方に従いたい。

これは、おそらく今日の礼楽が表面の形式だけを整備していることに反省をうながしたもので、昔の人々の質朴粗野ではあっても、そこに心のこもっていたことを評価したのでしょう。

ただ、孔子はけっして表現される形を、おろそかにしてよいと言っているわけではないのです。そもそも形を無視した礼などはありません。

礼は、心の中の思いが適切に形となって表現されるものだからです。

質・野人が文・君子・はなやかになってゆくのは時の流れとして普通のことであり、孔子は整美・整った美しさを否定しているのではなく、初心の質朴さを忘れるなということを表しているのです。

仮名論語74頁をお開きください。 1行目です。

子曰わく、質、文に勝てば則ち野。文質に勝てば則ち史。

文質彬彬(ひんぴん)として、然る後に君子なり。

頭注をご覧ください。

先師が言われた。「質が文に勝てば野人肌である。文が質に勝てば記録係のようだ。文と質とがうまく均整がとれてこそ君子と言える」

「子曰わく、質、文に勝てば則ち野」・・・孔子が言いました。中身・内容・本音が外見・形式・建前を超えると、むき出しで野蛮になります。「文質に勝てば則ち史」・・・外見・形式・建前が中身・内容・本音以上であると、定型的で無味乾燥です。「文質彬彬として、然る後に君子なり」・・・内容と形式がほどよくともに備わって初めて教養人・君子なのです。

「質」は実質、本質、素質のような内実のことです。生まれついたままの素朴な性質と言っていいでしょう。

「文」は文様、文飾、天文(星など)のように外観のことです。美しい飾りのことで、学問をするに従って後から身につく教養のことと言っていいのではないでしょうか。

「野」とは粗野で田舎びたことで、「史」とは、記録や文章を司る役人のことで、ここでは知識はあるが誠実さに欠ける人を言います。

素朴な実質が強く表に出て外面の修飾がたりないと野人である。生まれつきの生地のままで教養がない人は素朴ではあるが野暮ったく、その逆、外面の修飾ばかりが強くて内の実質がたりないと文書係である。教養はあるがきざで鼻持ちならない。

修飾と実質とがうまく溶け合ってこそ、初めて君子である。人の素朴さと教養とが美しく調和してこそ本当の教養人であるということです。

内容は立派なのに、十分に表現しきれなければ、荒っぽい印象を与えます。逆に、表現が立派過ぎて内容はそれほどでもなければ、空々しい感じをあたえます。人間の内容、人格や知識と表現、外見や言葉とが、ほどよく調和していてこそ君子なのです。

内容と表現の関係については、二つの考えがあります。ひとつは、内容さえ充実していれば、それは自然に外ににじみ出てくるものであって、特に表現に気を使う必要は無いという考え方です。

もう一つは、表現は重要であり、表現しだいで内容がよくもなれば悪くもなるという考え方です。

孔子は、このいずれも、一方的になるのを退け、内容と表現の調和がとれているのがよいとしたのです。素朴さに価値を認めていたのです。

 

つづく

                                                                                           宮 武 清 寛

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