2817.礼(37)能く禮譲を以て國を為めんか | 論語ブログ

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礼(37)能く禮譲を以て國を為めんか

 

子曰わく、能く禮譲を以て國を為めんか、何か有らん。

    能く禮譲を以て國を為めずんば、禮を如何にせん。

 里仁第四 仮名論語423行目です。

 伊與田覺先生の解釈です。

先師が言われた。「礼の根本である譲る心を以て国を治めれば、何のむずかしいことがあろうか。その譲る心を以て国を治めなければ、礼制が如何に整っていても、どうしようもないであろう」

 

このシリーズで六項に分類した項目では一応⑤の人格確立のための「礼」に分類してみました。「禮譲を以て國を為める」上に立つ人は譲る心を持っていないといけないと言うことです。

礼譲の禮の字は、謙遜という意味になります。謙譲は礼の重要な要素ですから、「礼譲」という言葉が生まれたと思われます。二字は密接にくっついた複合語であって、実は、「禮」とただ一字でいう場合と、意味に大差はありません。「左伝」という書物の襄公十三年に、「譲」は礼の主也、謙譲は礼の中心。という言葉があります。

この章の意味は、「能く禮譲を以て國を為めんか、何か有らん」・・・もし、礼によって国家を為める気になり得るならば、国家を治めるぐらい、何の難しいことがあろう。それは至ってたやすい事であるであろう。「能く禮譲を以て國を為めずんば、禮を如何にせん」・・・反対にもし、礼でもって政治をする気になり得ないとするならば、せっかく人間の文化の結晶として存在する礼を、どうしようというのか、礼が泣くではないか。政治を行うのに、規範・謙譲をもって政治を行うことができなかったなら、礼があっても、それを活かすことができず、何の役にも立たない。と言うことです。

孔子は、大司寇・総理大臣と法務大臣を兼ねたような職務を務めた人ですから、制度や法務が常に後手ごてに廻ることを、身を以て痛感していたのでしょう。礼節や謙譲の精神は一人一人の心掛け次第であって、法律で取り締まるわけにはいけません。

法律に規定されていなければ何をやってもいいとなると、世の中は利己心の吹き溜まりとなって、欲と欲の相克・相争そう修羅場と化してしまいます。これに「待った!」をかけるのが道徳なのです。

道徳とは、自分で自分を律する規範ですから、道徳観念のしっかりしている社会ほど、コストはかかりません。

法律を犯せば刑罰が待っていますから、ある程度セーブがかかりますが、道徳を犯しても何の刑罰もありませんから、煩悩剥き出しの社会を招来しかねません。

道徳を犯した時、法を犯した時の刑罰に相当するものが、実は恥を知る心「廉恥心」なんですね。

廉恥心とは喩えてみれば、「内なる裁判官」と言っていいでしょう。恥という字も面白いですね、分解すると、「耳+心」ですから、「自分の心に耳を当てて、内なる良心の声を聴け!」とも解釈できます。やはり「内なる裁判官」ですね。

恥を知る心は、子供の頃から植え付けられていないと、中々育たないものです。人間から「恥」というものを取り去ったら、裸の猿ですね。

何が美徳で何が悪徳か!美徳は誇り、悪徳は恥!恥は心の裁判官!

これはしっかりと子供に教えておかなければいけませんね。

子供に悪知恵がついて来るのは、小学校高学年から中学校にかけてでしょうか。これは仕様のないことで止めようがありません。必要悪みたいなものですからね。ただ、悪知恵を野放しにしていますと、自己増殖して良い知恵を駆逐してしまいますから、どこかで歯止めをかけなければならないのです。その歯止めの役割をするのが「恥を知る心」なんですね。

恥を知る心とは、自己を律する「内なる裁判官」のようなものですから、ここがしっかり植え付けられていると、そうそう破廉恥なことは出来なくなるものなんです。

欧米キリスト教国で言う「罪の意識」が、日本人に於ける「廉恥心」と考えてよいかと思いますが、こういう心は、誰かが教え植え付けてやらないと、育つものではありません。放ったらかしにしておいて、自得出来るものではないのです。

廉恥心を植え付けてやるのが血縁の役目、その中でも一番身近な教師か親なんですね。廉恥心を植え付けるには、美徳と悪徳の別をはっきりと教えることです。

美徳とは「美しく貴いこと」、悪徳とは「醜く賤しいこと」だと。

 

 つづく

今年も一年間ありがとうございました。

新年は4日から配信します。

よろしくお願いします。

                                宮 武 清 寛

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