宮島の桜 2024 -⑧ / 桜霖の候
宮島の桜 7 雨の風景 -③ です。
昨日の広島は、一昨日の夜から吹き荒んだ北からの暴風が、大気の飽和率を低下させて強い雨をもたらせました。
雨は朝方には止み、午後3時前には暴風も吹き止みましたが、この雨と風は″桜流し″となりました。
桜が散ってしまうのは寂しさが伴いますが、また来年への楽しみとこれから訪れる皐月の季節、そして夏。
暑さも段々と厳しくなりますが、開放的で躍動的なシーズンの訪れですから、生きている今を満喫しましょう。
ところでこの風雨は全国的に猛威を振るったようで、各SNSでは「桜散ってしまう」「一面ピンクの絨毯」「これで見納め」といった投稿が数多くみられました。
そして「花散らしの雨」「雨のせい」などトレンド入りしたようですが、特に目についたのは「桜散らし」というキーワード。
桜を散らす雨は″桜流し″と言うのが正しい日本語で、″桜散らし″とは男女が性行為を目的とした花見••••••••すなわち″花見の合コン″のこと。
世の中、自分の国のことばを知らない、教養が無い人が多いなぁとため息が出るばかりな、花の嵐でした。
しかもこの″桜散らし″ということばの誤用を、テレビ局がやってしまうほどの為体は、メディアリテラシーどころではないレベルのお話しです。
と言うことで「桜散らしの雨」とは、花見の後で男女がしっぽりと濡れている最中を、詩的に表現している••••••••ということになります。
ちなみに桜を散らす雨のことは″桜流し″だと言いましたが、他にも″桜と雨″を現すことばとして桜雨(さくらあめ・おうう)= 桜の花が咲く頃の雨、花時雨(はなしぐれ)= 桜の花が咲く頃の冷たい雨というのがあります。
またタイトルで使った桜霖(おうりん)は、春の霖雨を指す″春霖″の内、桜が咲いている期間だけに使われる俳句の季語になります。
ちなみに霖雨ですが、ことばそのものの純粋な意味は、季節の変わり目の長雨を指しますが、単に霖雨と表記されている時は、梅雨に対して秋の長雨を指します。
″花″とは植物が成長して咲く種子植物の生殖器官で、植物の種類だけ花も種類がありますが、春に単に″花″と言うと、桜を指すのと同じことばの運用です。
知能が少し低い方や社会の底辺の人が使う日本語は、一般の人とは違うことばを使っていますが、反対にこれらの日本語をどれだけ知っていて、普段の会話で自然に出てくるかが、教養だったり育ちの良さだったりとなります。
それはボキャブラリーが多い少ないの問題ではありませんが、やはり表現をするためのことばをどれだけ使いこなせるかも品位なので、こういったところから身につけてみるのも良いかも知れません。
必ずワンランク上の自分に変身できますよ。
と言うとで、他にも桜の季節のことばを少し並べてみました。
花冷え = 桜が咲く頃に冷え込むこと、花曇り = 桜の咲く頃の空が薄曇りであること。
桜吹雪 = 桜の花びらが乱れ散るさま、零れ桜 = 散る桜、花嵐 = 桜の花が風のように散ること。
花の雫 = 花から滴り落ちるしずく、花いかだ = 散った花びらが水面に浮かんで漂う様子、花むしろ = 絨毯のように花びらの散り敷いたさま。
花あかり = 群れ咲く桜の花のために、夜でも灯りをともしたように明るく見えるころ。
これらはソメイヨシノに限らず桜全般に使えますが、桜以外に使うと反対に教養が無いとか、知ったかぶりなどと捉えられてしまうので、注意が必要です。
が、どうしても使いたい時には、″花の雫″ではなく″花に雫″と言い換えてみたり、″花いかだみたい″といったように、比喩表現や置換表現へ転換してみるのも上品ですよ。