芸備線と持続不能の日本・その20 | 安芸もみじ / Photos, Historys, Trains - Hiroshima JAPAN

芸備線と持続不能の日本・その20

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そのスタートは鉄道事業者の嘘から始まりました。

路線の特性上、国土交通省が示す「地域公共交通計画」の策定または見直しが急務であるとして、JR西日本は″地域の現状、公共交通の概況、利用状況、移動特性、ニーズ等の把握″と″芸備線の利用促進″という2点の内容について、沿線自治体へ協議・検討することを申し入れました。

JR北海道の″単独維持困難路線の見直し″に倣ったJR西日本は、「自社の経営努力単独では路線の維持が困難に陥ったため、沿線自治体と住民・利用者の知恵と力を貸して下さい」との発表です。

この時点では″廃線″は前提でも対象でも無かったため、広島市を始めとする沿線自治体は、JR西日本からの協議要請を受けることに準備を始めます。



当初は報道を通しての内容しか伝わらなかったものの、JR西日本の社長や広島支社及び岡山支社の、テレビニュースによる″生のことば″でも路線維持のための協力要請でした。

広島地元新聞社の中国新聞記者のインタビューで「協議の延長戦上に廃止はないのか?」の問いにも、JR西日本は「現状、それは全くない」と明確に答えています。

しかし実際にJR西日本から届いた協議要請は、廃線を含めるまたは存続ありきではない「前提無き協議」で、各沿線自治体は「廃線の協議ではないと聞いている」と抗議し、JR西日本との協議を凍結しました。

協議が前進しない中で、収益率が上がるのであればJR西日本としても列車の運行に商品価値を見出だせるとの立場を表しつつも、不採算のローカル線に関して「待ったなしの状態だ」との見解を明らかにし、バス転換などを含む輸送手段の見直しに、突然 JR西日本の社長が廃線に対して意欲を示します。



そしてJR西日本は、対象の17路線30線区の単独維持困難路線・区間の収支を公表しました。

「赤字ローカル線存続のために知恵と力を貸して欲しい」と言っておきながら、協議の中で廃線へ追い込む目論見だった汚いやり口に、沿線自治体が態度を硬化したのは当然で、最初から嘘を前提にしていたにもかかわらず、「沿線自治体が協力的でない」と国に訴えたJR西日本。

庄原ライナー2023 で記述したのですが「前回までは三次~備後庄原間で貼られていた、庄原ライナーのトレインマークが今夏は貼られなかったばかりか発車標の表示も、JR西日本のヤル気の無さを感じ受けます」との文言。

鉄道贔屓の方から「言い過ぎ」とのお言葉も頂いてしまい、私自身もそう思いながらの記述でしたが、あくまでも公正・中立を謳ってのこのシリーズでもあります。



世間の一般的なサービス業では、接客業務としての部門を大切にし、お客さまのために日々努めていますが、JR西日本はそこら辺が疎かであることは明らかで、批判されて当然な部分でもあります。

デパートや大手スーパーそしてコンビニでは、人出不足が深刻でありながら、商品はパッケージやガイダンスと言ったインフォメーションには手を抜きません。

それがお客さまに対しての誠意であり、企業としての責任であるため、サービス残業や不正残業を犯さない中で、それを怠らないように提供し続けています。

鉄道会社にとって列車は商品であり、列車名はパッケージであり、発車標はガイダンスであるものの、そう言ったインフォメーションを蔑ろにすることは、JRと言うブランドを自社で大切にしていない企業体質です。



そうなってくると、JR西日本のコンプライアンスはどこにあるのか自身が見失ってしまい、その結果が沿線自治体との協議が嘘から始まっていることが、今のJR西日本と言う不誠実な企業体質へと集積したと言えます。

この企業体質は、これまでの不祥事を全て説明できるマスターキーであり、協議会の代わりに開催されたヒアリングでも、沿線自治体が現状把握のために要請したデータを一部隠匿したことも説明できます。

また代表的なところで、尼崎脱線事故における事故直後の対応や、それで明らかになった日勤教育など、人権侵害に対して犯罪自覚が無かった件。

新幹線の台車に亀裂が入ったまま運行を続けた重大インシデントにおける人命軽視も、人権侵害の最もたる事件でした。



列車の安全運行も、本来の意味を失って自社が責任を負いたく無いだけの対応で、利用者の生活や利便性を蔑ろにして、運休してしまうなどもさまざまなシチュエーションで発生し続けています。

山陰本線や美祢線の災害区間においても、できるとこならこのまま廃線にしてしまおうと言う、ほくそ笑みも隠すことなく表明してしまうことも、鉄道事業者としてのコンプライアンスがどこへ行ったのか疑問に感じるところです。

そこの部分は災害で廃線としてしまったJR九州とは、根本的に中味が違う部分であり、それが通るところにJR西日本の株主の異常者性も垣間見えます。

そんな鉄道会社が国の制度を利用して、再構築協議会に臨むのですから、どれだけ社会的責任の無い企業体質であるかは、呆れてものが言えません。



今から考えると「全対象路線のうち山陰本線・山口線・芸備線など10路線の21区間が中国地方にあり、路線の実情を沿線住民や自治体と共有し、鉄道の在り方について具体的な議論を進めたい」などと、JR西日本はどの口が言うのか!と言い返したいものです。

広島県では2003年12月に可部線の可部駅〜三段峡駅間が、2018年3月に三江線全線(三次駅〜江津駅)が廃止され、さらに木次線(宍道駅〜備後落合駅)も廃止論がくすぶっています。

広島県は人口約279万人と中国地方最大の県であり、2番目の岡山県(約188万人)、3番目の山口県(約134万人)を大きく引き離し、経済力も強い。

にもかかわらず、広島県内ではローカル線の廃止が続いているのは、沿線自治体や県が鉄道に対して無関心だったことも原因です。



これまでに広島県内で廃止されたり、廃止が取り沙汰されたりしているのは、すべて広島市と山陰地方の都市を結ぶ「陰陽連絡鉄道」。

可部線は中山間地の三段峡駅止まりのままでしたが、1980年までは日本海沿いの浜田駅(島根県浜田市)までの延伸工事が進められていました。

陰陽連絡鉄道は広島県以外にも姫新線(姫路駅〜新見駅)、因美線(鳥取駅〜東津山駅)、津山線(岡山駅〜津山駅)、伯備線(伯耆大山駅〜倉敷駅)、山口線(新山口駅〜益田駅)が存在します。

この他に旧岩日線(岩国駅〜日原駅)の計画もありましが、可部線同様に工事が中断し、開通していた岩国駅〜錦町駅が第三セクターの錦川清流線として存続しています。



山口県内では山口線が日本海沿いをぐるりと廻る山陰本線のバイパスとして、山陰と九州を結ぶ速達機能を果たし、岡山県内では大阪や京都、神戸といった関西の大都市と山陰の都市を結ぶ需要があるため、それぞれ特急列車が運行されており、広島県内の陰陽連絡鉄道よりも乗客は確保できている。

広島市には関西圏ほどの人口や経済力がなく、山陰地方との結びつきも弱い。そのため広島県と山陰を結ぶ路線で、鉄道が得意とする中・長距離運行の急行やが1990年代までに廃止となり、利用客離れが進んだのも現実です。

一方、岡山駅は瀬戸大橋線経由で四国の主要都市を結ぶ特急列車のターミナル駅で、山陰・山陽・四国を結ぶ都市間輸送のハブとなっていることも、陰陽連絡路線が生き残る理由になっている。

広島県内では山陽〜山陰間の直通運転もなくなり、陰陽連絡鉄道は事実上分断された。短距離運行で運転本数も少ないローカル輸送となっては、自動車との競争で勝ち目はないのも事実。



ただ、中国地方の陰陽連絡線で第三セクターへ移行できたのは、未成線に終わった旧岩日線の開通部分だけで、広島県内の陰陽連絡線は一度も地元の合意が得られたことがなく、JRが手を引くと同時に廃止となってきました。

今回の記事では、来る3月26日から芸備線 再構築協議会の第1回が催されることが決まり、私の記事の″その1″から″その19″までをあらためて総括しました。

またすぐに話しを前に進めるため、記事を記す予定です。




ーご了承事項と免責事項ー
〇 芸備線と持続不能の日本は、第1回からの連載となっており、旧 芸備線と維持困難路線より引き継いでいます。

以前の記事を前提として記して行くので、特にスポットを当てた回でない限り、同じ解説を本文内では致しません。

ローカル線が使い辛いのと鉄道の優位性が発揮できないのは鉄道会社の責任で、沿線都市へ人が訪れない原因は、受け入れ態勢が脆弱な各自治体の責任です。

人口減少と山間都市の過疎化は国政の責任で、諸問題を先送りにして国鉄分割民営化を強行させたのは国民の責任です。

公共交通の提供は日本国憲法と交通政策基本法に定める基本的人権の1つであり、安易に国民の権利を奪うことは許されません。

街の活性化は住民と訪問者の両輪が必須で、そのためにはインフラ・ビジネス・エンターテイメントの3要素に、恒久性が欠けては成立しません。

上記を基本概念として、中立的に私一個人の思いを綴っていますことを、ご理解とご了承のお願いを致します。

№19までは″機動車″のテーマで投稿してきましたが、№20以降は日本史のテーマへ変更しました。


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