ひと月ぶりの“どこ唄”です。
ひとつ前のお話 → どこにでもある唄。28
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紫蘭駅から直結するショッピングモール。
電車で来たのは初めてだ。
映画館、デパート、スーパーマーケット…。
レストラン街、旅行代理店、ATMコーナーや衣料品、雑貨店…。
ココにくれば大抵のことは用が足りる。
週末ごとにお父さんと車で買い出しにくるのがこちらに越してきてからの習慣となっている。
約束までそんなに時間がない。
転校してからずっと隣にいてくれた。
誕生日じゃないとしても、何か彼にプレゼントして感謝の気持ちを伝えたい。
何が良いかな…。
出会ってからの彼を思いだしてみる。
いつも真面目で正しく堂々としている。
優しくて物静かで思いやりに溢れている。
朝、電車で挨拶する前はたいてい本を読んでいて、伏せたまつげが印象的で、私を見つけるとニッコリ笑って…。
なんだか彼氏を思い浮かべる女の子みたいな気持ちになってしまう。
あ、そうだ!おしゃれな雑貨店でいいものを思いついた。
でも…もう少しオトナっぽいものはないかな。そうだ、アッチの高級文具店なら…。
イメージにピッタリなものを見つけた。
これ、私が欲しいかも…。
さあ、時間だ。
約束の書店、かなり大きな店舗だ。
潤くん、いったいどの辺りにいるのか…。店舗入口の検索端末の前で考えてみる。
そう、きっと……。ん、7番通路!
平日の午前中だからか、思いのほか空いている。文庫本を手にした姿はシルエットだけで美しい。
「やっぱりココだった。」
思わずこぼれた声に気づき、ゆっくりとふり向いた。変わらない優しい笑顔。
「お待たせ。
久しぶり、潤くん♡」
「…ニノ…。」
一瞬、見つめ合ってしまった。
いや、変だよね?
「わざわざありがと。」
「いや、暇だったし…。
ちょうど良かったよ。」
「あ、それ買う?」
「いや、またにするよ。
それより先になんか食べよっか。
今ならまだフードコートも空いていると思うよ。」
「そうだね、何にしようか?」
書店を出て、フードコートへ向かう。
さりげなくエスコートしてれる。
やっぱり彼はスマートだ。
普段、自分の為には作らないデミソースのオムライスにした。潤くんはローストビーフ丼、ふたりともなかなかガッツリだ。そこは男子高校生、ペロリと平らげる。
テーブルを片付けて、ソフトドリンクを買った。
「ハイ、これ。
一応コピーしておいた。」
「ありがと、コピー代…」
「いいよ、ウチでとったし。」
科目ごとにキッチリとまとめてある。
こんな所も潤くんらしい。
「ね、違ってたらごめんだけど、今日って誕生日じゃない?」
「え?うん。そう。なんで?」
「ハイ、これプレゼント。
16才おめでとう。」
「わ、あ、ありがとう。
え、めっちゃ嬉しい。」
やっぱりそうだった。
期待以上の喜び方にこちらまで嬉しくなった。