2016.8.30 Tues.
«m»
うそだろ?
ニノから連絡が来るなんて!
おはようございます。
久しぶり、元気?
ちょっと時間もらえますか?
あ、予定がなければだけど。
過去問もらってるけど
良かったら送ろうか?
やっぱり、今日もらえる?
久しぶりに会いたくなっちゃった♡
じゃあ紫蘭のショッピングモールで
昼ご飯でも食べようか。
突然出かけることになって母親に驚かれた。
「お昼、一緒にランチしようと思ってたのに…。それから夕食に潤の好物を…」
「この間の外食で十分だよ。
お母さん、ゆっくりしてなよ。」
「どうして今日なの…。
夕方には帰るでしょ?
お父さんもなるべく早く帰るって…」
「帰りの時間は判らないよ。
ランチの後、勉強するんだから。」
「そんな、せっかくケーキも…」
「日曜にわざわざ外食したんだよ?
今日は特別なことしなくて良いから。」
「夕食は家で食べなさいよ。」
「はいはい、わかった。
また、連絡いれるよ。」
「そう?あ、これお昼代ね。」
ものすごく残念そうな顔で、それでも五千円札を握らせてくれた。
母親ってありがたいけど…面倒くさい。
こんなこと、ニノには言えないけど。
約束の時間まで、まだ30分以上ある。
16才の誕生日、ニノに会える!
嬉しさに浮かれて早く着いてしまった。
学校ではずっと一緒に過ごしていたのに終業式から全然会ってない。たったの6週間なのに、1学期の出来事が遠い思い出のようだ。
ふたりで出かけるのは選抜戦の応援以来、完全にプライベートなのは初めてだ。
これって初デートじゃないか!
変に意識してしまい緊張が高まる。
文庫本を選ぶフリをしながら待受画面の時計から目が離せない。
早逝した天才棋士の話を読もうかなと手に取る。たしか映画が今秋公開されるはずだ。ドラマや映画は原作を読むとまた視点が変わって面白い。
「やっぱりココだった。」
通路の端っこからの優しい声にふり向いた。
「お待たせ。
久しぶり、潤くん♡」
「…ニノ…。」
周りの喧騒は遠ざかり、まるでピンスポットがあたっているみたい…。気持ちを再確認するには充分だ。
今にも透き通りそうなニノが微笑んでいた。