● 国民からよせられた請願署名、ただの一つも採択されず

 

 短い国会でしたが、国民から、国会には様々な請願署名がよせられました。国会が請願を採択すれば、政府は請願項目への対応が求められます。

 

 請願の採択の可否は、その請願内容が関係する各委員会の理事会で審査をおこない、全会一致の場合、委員会で採択し、本会議で確認します。

 

 各委員会での審査のあり方は、様々ですが、私の属している厚生労働委員会では、理事会にさきだち、各会派の代表が集まる請願担当者会議で、議論をおこなうことが通例となっています。

 

 私は、いつも、基本的に、全部採択すべきという立場で請願担当者会議にのぞんでいます。一方、全会一致ですから、採択には壁があります。ひとつは、与党の壁、多くの場合、与党は、政府方針とことなるもの、厚生労働委員会でいえば厚生労働省がうんというものでなければ採択に同意しません。稀に、例外はあります。もうひとつの壁は、維新です。人の「身を切る改革」という立場から、人員増が必要なものには同意せず、与党が賛成しても、維新の会だけが反対して採択されないということもおきます。

 

 今国会、厚生労働委員会には9種類の請願が付託されました。保育園や学童指導員の処遇改善・配置基準改善や家賃補助制度の創設、障害者福祉の改善、旧優生保護法一時金支給の引き上げ、医療費の窓口負担の軽減、などです。

 

 結論から言うと、自民、公明、維新の会の3党がすべての請願について、採択に同意しませんでした。2種の請願は自民党議員のみが請願の紹介議員となっているものもありましたが、議員個人としては紹介はするが、会派としては、請願採択には賛成しないというケースもよくあります。

 

 また家賃補助の創設は、与党、公明党の公約にもなっていますが、与党は自民公明で協議して請願担当者会議にのぞみますので、公明党も請願の採択は主張しないということになりました。

 

 臨時国会では、請願がひとつも採択されないという結果になりましたが、今年の通常国会では、私が紹介議員となった請願(こどもの歯科矯正への保険適用の拡大)が、与党、野党で知恵を出し合い、採択されるということもありました。

 

 多くの署名とともによせられる請願が一つでも採択されるよう、努力を続けたいと思います。

 

 

 ●なぜ、立憲民主党、国民民主党の双方の予算組み替え動議に日本共産党が賛成したか

 

 政府の補正予算案に対して、立憲民主党から組み替え動議を考えているというお話をいただき、事前に提案内容を教えていただきました。補正予算案の最大の問題であった膨大な軍事費を削減し、辺野古の新基地建設予算は不要とし、マイなポイント事業も削り、代わりに、国民、事業者への支援などを拡充する内容でした。大きな方向は一致するので賛成をしました。

 

 また、採決の日の朝の理事懇談会に、国民民主党からも組み替え動議が提出されました。国民民主党の事務方からも説明を受けました。財政法にもとづく補正予算の趣旨にふさわしくないということで、軍事費、公共事業費の大半、半導体工場誘致予算などを削除し、一方で、消費税減税を含めた暮らしへの支援をおこなう内容でした。政府案を是正する大きな方向性は一致するので、国民民主党案にも賛成しました。

 二つの動議に賛成するという態度をとることに、自民党側からは、「ずいぶん柔軟ですね」という声がかかり、国民民主党の関係者からは「ありがとう」という声もありました。

 

 国会での賛否については、何党だから、という考えではなく、法案等の内容が国民の利益に合致するか、いなかで判断をするという基本スタンスをこれからもとっていきたいと思います。

 

 (なお、立憲は国民案に反対、国民民主は立憲案に反対、維新の会は組み替え動議をださず、政府案にも、立憲案にも、国民民主案にも反対でした)

 

 

●10万円給付のこと

 

(11月26日の予算委員会理事懇から)

 

 18歳までのこどもへの給付について、半分の5万円をクーポンにすることで、1000億円近い事務費が増えることが判明したのは、閣議決定された予備費の説明を受け、質疑応答がおこなわれた、11月26日の衆議院予算委員会理事懇のことでした。

 

 理事懇再開に先立ち、予算委員会の立憲民主の理事会メンバーと、どういう質問をおこなうか、打ち合わせをしました。その際、立憲民主党の後藤議員から、事務費について事前に通告してあるという説明を受け、この問題を追及することを確認しました。

 

 理事懇の場では、後藤議員の質問にクーポンの事務費は約1000億円かかり、全体で事務費は約1200億円を想定していること、また、一括10万円給付なら300億円程度だと財務省から説明がありました。立憲民主党の大西議員は、その場で配布された政府の閣議決定(11月19日)の抜粋にクーポンにかかわり「地方自治体の実情に応じて、現金給付も可能とする」とあった点についてきくと、財務省からは「クーポン実施が困難な場合」との説明がありました。私は、そもそも対象者が狭すぎることを指摘した上で、2回目の5万円が地方自治体の実情で現金が可能なら、一括で10万円現金給付することは、地方自治体の判断でできるのか質問したところ、財務省からは、地方自治体の判断で可能という旨の説明がありました。

 

 私は、クーポンで莫大な事務費をかけるのは馬鹿げており、与党のみなさんもただした方がいいのではないかと問いかけましたが、与党からは質問はでませんでした。維新の会、国民民主党の出席者からも、クーポンによる事務費増や現金一括給付に関する質問はでませんでした。

 

 立憲民主党は予算委理事懇の内容をブリーフし、クーボンで余分に事務費が1000億円もかかることが大きくメディアで報道され、世論に火をつけました。私は事務費の問題と合わせ、10万円一括給付も自治体の判断で可能という説明を財務省がしたことをSNS

で発信しました。ネットの発信をみた、自治体関係者からも、「コロナ禍で多忙で疲弊する職員の負担を考えると10万円一括現金給付ができるようにしてほしい」、という声が次々、よせられました。すでに自治体から国に対して10万円一括給付できるように求めていたが、「国がだめといっている」という声もきこえてきました。

 

 私は内閣官房の担当者に、このまま臨時国会がはじまれば、野党から徹底追及することになることを官邸にも伝えること、自治体の議会もはじまるので国会が始まる前に早急に10万円一括給付ができる旨を公表すること、また、自治体ができるよう財政措置も含めてとることを求めました。

 

 その後、大阪市など大きな自治体の首長からも10万円一括給付を求める声がメディアで報道される一方、誰が決裁したのか、政府から自治体宛てに、現金給付は、6月までにクーポンが発行できない自治体にかぎるなど、後出しの条件がだされ、世論のいっそう批判が広がりました。12月6日、臨時国会がはじまると、代表質問で立憲民主、日本共産党はじめ野党からの追及がおこなわれ、12月12日のNHK日曜討論で西村氏が10万円一括給付を認める発言をおこない、12月13日にようやく、岸田総理が10万円一括給付を自治体の判断で認める旨の発言をおこないました。11月26日の予算委理事懇から、半月以上がたっていました。結局10万円一括給付が間に合わない自治体が多数でてしまいました。官邸の判断変更は、あまりにも遅かったことが、傷口を広げました。

 

(子育てクーポンの愚策はただされたが、コロナ禍の支援のあり方については議論が深まらず)

 

 本来、臨時国会は、コロナ対策の補正予算案の審議でしたから、長期失業者が長期に収入減が続いている方への支援について、政府の策では不十分ではないか、拡充が必要ではないかというのが、もっとも議論しなければならない点でした。わが党からは、繰り返し指摘をしましたが、岸田官邸のみなさんが、現金10万円一括給付を無条件で認める方針変更が遅れたために、その是正にかなりの野党の追及時間がとられ、国会全体では給付対象の拡充でのつめた議論がおこなわれなかったのは、きわめて残念です。国会の議論が給付対象の拡大の議論にいかないように 官邸が、 わざと、現金10万円一括給付の判断をのろのろ時間をかけたのではないかという、疑念もあります。

 

 シフトが減り年収100万、200万の非正規労働者、この2年間ボーナスがずっと0円でローンの支払いにも苦労している方、高学費に苦労している大学生とその家族などへの支援が必要です。

 

 

● メディが検証しない、突然の井上議員の科学技術特別委員会委員長辞任について

 

 臨時国会閉会日に井上議員(維新)が科学技術特別委員会委員長の辞任を表明しました。

 

 特別委員会というのは、厚生労働委員会など、常設の常任委員会とは違い、国会ごとに議決をしてきめます。

 

 総選挙前までは、特別委員会の設置については、地方創生特別委員会をのぞいては、維新の会も含めて全会一致で設置されてきました。(日本共産党は、特定の内閣の看板政策をかかげた特別委員会はおかしいという立場で、地方創生特別委員会には反対)。

 

 総選挙後、維新の会が、方針変更して、特別委員会の設置に反対、また、れいわが少数会派の枠がないという理由で設置に反対しました。

 

 維新の会は、設置には反対したものの、設置が本会議で確認されると、井上議員が科学技術特別委員会委員長を引き受けました。委員長になった際に、特別委員会の開会のために努力すると、井上議員から発言がありました。

 

 ところが、閉会日の前夜に、井上議員が、開会できなかった責任をとって辞職するといっていると科学技術特別委員会の事務方から説明がありました。大変驚きました。

 

 翌日の閉会日の科学技術特別委員会の理事会の場で、委員長の職務の代理を指定された西村議員から、委員長から辞職願いがだされたという報告がありました。この理事会には、井上議員はきませんでした。

 

 私は、「閉会中審査や閉会中の視察も含めて委員会を開催する努力をおこなう責任が委員長にはあるのに、途中で投げ出すのはきわめて無責任である」ということを指摘し、「委員会の開催や視察について、いかなる努力をおこなってきたのか」、説明を求めました。

 

 与党筆頭の西村議員、野党筆頭の中島議員から、閉会中の視察も含めて、検討しようと与野党筆頭間で議論しており、井上委員長にも伝えていたので、突然の辞任表明に驚いたという説明がありました。双方が努力している最中に、投げ出すというのは、なおさら無責任です。

 

 委員会にも井上委員長は出席せず、西村委員長代理から、井上委員長の辞任の承認がはかられました。私は、無責任だと自席から意思表示をしましたが、委員長辞任は承認されました。

 

 聞くところでは、どうも、井上議員も突然の辞任表明は、維新の会派の意向で、井上議員自身からは、与野党筆頭間で話し合ってきた経過の中で、申し訳ないという思いを示していたようです。

 

 経過を検証をするメディア報道がないのでことの経過を書き記しておきました。