なぜ、こんなに感染が広がったのか。

 

 世論調査では「緊急事態宣言」が遅かったという世論が示されています。

 

 今回の感染拡大は、1、気温が低くなったこと、2、分科会が求めた営業時間短縮強化などの対策を政府と都知事が実行に移すのが大きく遅れたこと、3、そのもとで忘年会はじめ年末年始の一連の会食でクラスターが多発したこと、が大きな要因だと考えています。このウイルスは、3密の環境ではエアロゾル感染(分科会流ではマイクロ飛沫感染)をしますので、長時間、マスクなしで、会食をする機会が大きく増えたことがこの急激な感染につながった一因であることは間違いないでしょう。そういう点で、もっと早い段階で営業時間短縮にふみきらなかった菅政権と小池都知事の責任はきわめて大きいと言わなければなりません。

 

 もちろん、押谷先生がいうように異常な増え方なので、検査前確率の高い人が検査を受けるようになったという仮説もあります。あるいは、ウイルスが感染性をましているのではないかという懸念を述べる人もいます。この点は判明にはまだ時間がかかりそうです。

 同時に、ここまでの感染拡大にいたる過程として、一連のGoTo事業が、自粛の局面ではなく経済をまわす局面というメッセージとなってしまったこともあるでしょうし、秋以降の全国へのウイルスの拡散はGoToトラベルと無縁といえないことは、西浦教授の資料などからも明らかです。

 

 ふりかえると、11月20日の分科会の提言の時点で、あるいは遅くとも、12月11日に分科会が「勝負の3週間」で感染が拡大し続けているところはさらに強い営業時間短縮が必要だと指摘した時点で、政府も都知事も対策を講じるべきだったということになります。

 

 12月16日の厚生労働省のアドバイザリーボードも東京についてさらなる営業時間短縮が必要だと指摘しました。翌日、12月17日、大臣室で、 田村厚生労働大臣と別件(議連)で面会した際、おのずとコロナ対策の話になり、私は専門家の皆さんのいうとおり、さらなる営業時間短縮にふみきる必要があることを主張しました。そして、私は、営業時間短縮の協力をえるためには、協力金の額を営業時間短縮にインセンティブがうまれるような額に引き上げるべきだという提案もしました。 今回、協力金は、日額6万円、31日で186万円に引き上げられましたが、アドバイザリーボードの指摘の時点から見ても、国と都の時短の強化の合意は半月遅れ、実践は3週間遅れとなりました。

 

 今回の感染拡大を、季節だけをの責任にしてはならないと思います。また、首相は専門家が緊急事態宣言が12月の時点では必要といっていなかったと言い訳しますが、具体的な対策は提言していたわけでその言い訳もなりたちません。

 

 

 感染拡大防止に何が必要か

 

 感染症対策では、感染源対策、感染経路の遮断、ワクチンの3つが大事だといわれます。3つ目のワクチンは日本では早くで2月末接種開始ですので、一つ目と二つ目がそれまでにとりうる対策です。感染源対策では、検査、積極的疫学調査(感染経路・濃厚接触者の調査)、隔離が基本です。日本の保健所は結核対策の経験で、単なる濃厚接触者の特定ではなく、さかのぼり調査でどこで感染したのかまで調べます。クラスターをみつけだし、クラスターを連鎖させず収束させることが大事です。陽性の方は隔離、濃厚接触者の方には2週間の待機、検査能力があがってからは濃厚接触者の方の検査もおこなってきました。しかし、すでに東京や神奈川では保健所の調査能力をこえる感染拡大が広がっています。特定された濃厚接触者以外の感染者がはるかに多い状況、市中にまん延する状況です。保健所は積極的疫学調査の対象を高齢者施設等に重点化することになりました。 

 

 そもそも今回の新型コロナは発症前の無症候者からも感染する特徴があります。元気に動き回る無症候者がどこにいるかわからないもとで、当初から、新型コロナの感染拡大をおさえる基本として、感染経路を遮断することが重視されてきました。この感染経路をたつことは、市中まん延の状況でいよいよ大事になります。

 

 新型コロナウイルスはクラスターを通じて感染が拡大し、クラスターがおきるのは「3密」の場であることが早くからわかっています。その後の疫学調査のなかで、専門家のみなさんによって、感染がおきやすいのは5つの場面に集約されています。私は「3密+3(時間、大声、マスクなし)」とまとめています。リスクのある環境での接触、「3密+3」の条件での接触を徹底的に減らすということが、新型コロナウイルスの感染拡大をおさえるうえで重要になります。アメリカのCDCも主要な感染経路がエアロゾル感染とするようになりました。呼気から発生すエアロゾル(マイクロ飛沫)は、密閉の環境では浮遊し続け、空気の流れで移動します。そして、一定時間感染力をもちます。タバコの煙を想像するとよいといわれますが、近い方が感染リスクは高いですが、換気の悪い環境では、空気の流れにのって、かなりの距離が離れたところでも感染が成立しています。

 

 現状は、感染経路不明が多数という状況になっていますが、これまでのクラスター分析で、感染拡大の起点の多くは、飲食の場とされています。例えば、飲食→家族等→医療機関・高齢者施設という形で感染が広がっていると推定されています。ネイチャーの論文等でも同様の指摘があります。(医療機関や高齢者施設でのクラスターや教育機関でのクラスターはさらにその外への拡大は飲食ほどではないとされています)

 

 今回の飲食店の営業時間短縮の要請は、感染拡大の起点となる長時間の飲食を減らそうというのが狙いです。ここへの協力をうるためには、徹底した補償がカギとなることはいうまでもありません。同時に、感染拡大防止には、あわせて、徹底したテレワークの推進など、会食につながる流れを減らす対策をさらに強める必要があります。

 

 もちろん、夜であれ、昼であれ、新型コロナウイルスには関係ありません。昼飲みならば安心ということではありません。今回の飲食店の営業時間短縮を中心とした対策を成功させるためには、環境条件の変更だけでなく、日中の食事も含めて、マスクなしでの会話をさけるなどの、ひとりひとりの努力があってこそ、大きな効果を発揮することになります。すでに医療は守れる命が守れない状況がうまれています。ここで感染を抑えることができなければ、欧米のように、飲食の営業も含め、さらに強い対策をとることが選択肢になるのではないかと想像されます。

 

 感染拡大の防止方法をめぐっては、徹底した情報の開示と共有で、国民の自覚的な行動変容で対処するのか、国家による罰則と監視で感染をおさえこむのか、世界で議論されてきました。いま、日本で必要なことは、科学的根拠をもった為政者のコミュニケーションと、徹底した補償です。飲食店は事業規模に応じて、そして、飲食店の従業員、納入業者、そして、営業時間短縮のはたらきかけや収容人数制限の要請をおこなう劇団、映画館、イベント関係者のみなさん、しっかりとした補償を求めていきます。

 

医療機関・高齢者施設でのクラスターを防ぐための社会的検査について

 

 私が、国会でもかねてから主張してきたのが、感染すれば重症化リスクが高い方が多くいる、医療機関・高齢者施設で、クラスターを発生させないための手立てです。崩壊しかかっている医療体制への負荷を考えても、医療機関・高齢者施設でクラスターを発生させないことは、高齢者・入院患者のみなさんの命を守ると同時に、国民全体の命を守ることにもつながります。

 

 医療機関や介護施設は、入院患者や高齢者がマスクなしで長時間過ごしている場であり、それに密接を加え、クラスター発生のリスクが高い場です。そうしたもとで、換気や手指衛生をはじめとした、感染拡大防止策にどこでも懸命に努力されています。職員をはじめとした健康管理にもものすごい努力をされています。(介護施設の換気について国が基準を示しておらず、国会でも改善を求めました)

 

 それでもこうした施設でクラスターが発生するのは、この新型コロナが発症前の無症状の人から感染するからです。

 

 新型コロナウイルスは感染直後はどの検査でも陽性になりません。一方、感染後平均5.6日で発症し、発症2日前から他人に感染させる可能性があることがわかっています。こうした特徴を踏まえると、医療機関・高齢者施設で感染が広がる前に、感染者を把握するためには、3日に1度程度の頻度で、職員のみなさんに検査が必要という計算になります。実際、ニューヨーク州では感染状況に応じ、昨年の感染拡大時は週に2回、高齢者施設の職員の検査をおこない、ものすごい数の陽性の人を確認しています。民間の力はもちろん、プール方式も導入して、こうした検査体制をつくることが求められます。海外の研究でも精度より、頻度が大事だとわかっています。昨年、夏に、私も国会で主張してきた、感染拡大している地域での医療機関・高齢者施設でのいっせい定期的検査が国の方針となりました。しかし、現状の社会的検査の能力は限られています。例えば、沖縄で1ヶ月に1度の検査です。プール方式の大胆な導入が必要です。